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それは現在時間(2011年)よりおよそ二年前
年の暮れに起こった蒼黒神社襲撃事件まで遡る
首謀者は魔界リヒトの元宰相ヒヅチ
従えるは三名の魔人
その結果はヒヅチ以下二名の死亡で幕を閉じた
残った一名は魔剣に肉体を乗っ取られていた事もあってか、情状酌量という形で生かされる事になった
そして彼は今でも己を打ち負かした剣士の元を訪れる

 

「ガリョウ」

 

名前を呼ばれて後ろを振り返る
其処には見知った相手・・・魔界リヒトの姫君である影裏が居た

 

ガリョウ「お主か。して、何用だ?」

 

影裏「イヤナニ、コノ様ナ夜更ケニ神社ニ何ノ用カト思ッテノ」

 

ガリョウ「今し方迄あの娘と仕合っていた」

 

影裏「ホオ。カナリ熱心ナ事ダナ」

 

ガリョウ「・・・我はお主に何かしただろうか?」

 

影裏「ホオ?アマリニモ自覚ガ無イト見エル・・・」

 

影裏が笑う
ただし目が笑っていない

 

ガリョウ「我が全面的に悪いのだろうな。すまん」

 

影裏「謝ルノナラソレ相応ノ手土産ガ必要ダト思ウガナ」

 

ガリョウ「ぐ・・・・・・はぁ、分かった。応流宝で良いか?」

 

影裏「何だ、ちゃんと覚えてるんじゃないか」

 

ガリョウ「誰が庭園からくすねてたと思っている」

 

影裏「うん、本当にありがとう。私が入るとすぐバレるからさ」

 

昔を思い出して苦笑

 

ガリョウ「当然だ、普通お姫様が庭園に泥棒に入るか?」

 

影裏「だって凄く甘くて美味しいんだもん」

 

ガリョウ「可愛く言っても駄目だ。後で説教食らうのは全部こっちだったんだぞ?」

 

影裏「うぅ、それも含めてありがとうございます」

 

ガリョウ「全く・・・お前と話していると何時の間にか素に戻ってしまうな」

 

影裏「良い事じゃないか、普段の侍言葉より素の方が私は好きだぞ」

 

ガリョウ「っ・・・誤解する様な事を軽々しく言うな」

 

影裏「何を言っておる、私は本気だ」

 

ガリョウ「一層性質が悪いな!?」

 

影裏「それにしても・・・まさか再びお前と逢えるとはな」

 

ガリョウ「そうだな」

 

影裏「もう六千年は経つんだものな・・・。侍界の暮らしは如何だ?」

 

ガリョウ「魔界とあまり変わりは無いな。食生活は質素過ぎるが」

 

影裏「・・・私が料理を作りに行ってやろうか?」

 

ガリョウは突然の申し出に吃驚してむせた
すると影裏は目に見えて不機嫌に

 

影裏「何じゃ、不満か?」

 

ガリョウ「な、んでいきなりそんな話になるんだ」

 

影裏「恋人の体を心配しない女は居らんぞ?」

 

ガリョウ「将来結婚しようというアレか?子供の頃の話だろう」

 

影裏「はぁ・・・これだからお前は鈍感なんじゃ。よいか?妾はあの頃からお前しか見ておらんのじゃぞ?」

 

顔を真っ赤にさせつつ影裏が暴露
ガリョウは一瞬固まり、徐々にその意味を頭に浸透させていく
そして次の瞬間、影裏よりも真っ赤になった

 

影裏「妾・・・私はお前のお嫁さんになろうと思っていたのに、お前はお前で侍界に行ってしまうし・・・」

 

ガリョウ「む、そ、それは済まないとは思っているが」

 

影裏「でもこんなに格好良くなっているとは思わなかったぞ。惚れ直しそうだ」

 

ガリョウ「渋みが出たと言え、渋みが出たと」

 

影裏「・・・で?お、お前は如何なんだ?私の事・・・・・・好き?」

 

不安そうに見詰める影裏
その表情に先程まで真っ赤になってワタワタしていたガリョウは

 

ガリョウ「俺で・・・いいのか?」

 

影裏「質問を質問で返すでない!好きか嫌いかで・・・!!」

 

重なる唇と唇
数秒そのままでいて、やがてどちらとも無く離れる

 

ガリョウ「すまん、反応が面白くていじめてたんだ。大丈夫、昔から好きなままだよ」

 

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
そんな事があったと影裏は皆の前で話した

 

蒼麻「・・・で、式は何時やるんだ?」

 

影裏「ウム、当分ハ恋人気分デ居タイノデ籍ダケ入レルツモリジャ」

 

赤「まあオレの時みたいなケースもあるしな」

 

藍「うー、影裏にまで先を越されるなんてー」

 

蒼麻「そもそもお前には相手が居るのかと問いたいぞ・・・」

 

弥生「そういえば蒼麻さん、私達も式やってませんね」

 

蒼麻「そういえばそうだな。影裏がやる時に一緒にやるか?」

 

赤「Wでやるのはデートだけにしておけ。幸せが吸い取られるぞ」

 

蒼麻「経験者がバレ易い嘘を吐くな!」

 

影裏は笑う。変わらぬ住人達を見ながら
自分の周りはとても暖かで、何をしていなくても助けられ癒されるそんな場所だ
此処に来て良かったな、と本当に今更ながらに思った
お後は歴史の裏側で

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