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時は新芽が芽吹く頃
新しい出逢いを祝福する季節
春の花咲く4月の事だった

 

「ウチの子が、ウチの子がまだ中に居るんです!」

 

「くそっ、助けに行こうにも火の勢いが強過ぎる!」

 

火事が起こっていた
火元は縁側で、木造住宅だった為かすぐに家は火に包まれた
その家には三人の家族が住んでいた
父親は会社、母親は買い物に出掛けており、家には小学生の男の子が一人で留守番をしていた
ガスの元栓は締めたし、春なのでコタツもストーブも仕舞っている
なのに火の手が上がったという事は放火なのだろう

 

消防士「(くそっ、完全に手詰まりだ)」

 

消防士の一人が奥歯を噛み締めて己の不甲斐無さを呪った

そこに、一人の少女が現れた
少女は消防士の制止も聞かずに誘われる様に家の中へと走って行く
十数秒後、2階の窓を突き破って小柄な物体が落ちて来た
それは胸の中に少年を抱いた先程の少女だった

 

消防士「君は一体・・・」

 

消防士が最後まで聞く前に家屋の火が消えた
何処からとも無く雨が降って来て鎮火したのだ

 

消防士「この雨、まさか周防か?」

 

周防「非番の日に限ってこういう事が起きるんだよな」

 

その声に振り向くと、消防士の同僚が右腕に小さな龍を絡めながら苦笑していた
周防元則、二年前に起きた衛星墜落事件の際に現場に居合わせた消防士
彼の言葉通り、その日も彼は非番だったらしい

 

消防士「っと、そんな事より君、名前は・・・あれ?」

 

何時の間にか少女は居なくなっていた
消防士は狐にでも化かされたのかと思ったが、少年は無事なので夢ではないのだろう

 

「・・・・・・ヤバい、惚れた」

 

沢山の野次馬の中で一緒になって眺めていた一人の学生が呟いた
そして人と人外の恋物語が始まった

 

続く

 


場所と時は変わって蒼黒神社
所々焼け焦げて穴が開いた服装で帰って来た藍
それをいち早く見付けたのは影裏であった

 

影裏「ド、如何シタンジャ、ソノボロボロノ格好ハ?!」

 

藍「あ、あはは・・・」

 

藍は今し方あった事を話した
静かに聴いていた影裏は溜め息を吐いてこれに答えた

 

影裏「汝トイウ奴ハ・・・・・・ソレデ、ソノ童ハ無事ジャッタノカ?」

 

藍「うん、煙をちょっと吸っただけかな。お母さんに凄く感謝されちゃった」

 

えへへ、と苦笑気味に答える
それにしてもである
人外だったから良かったものを、火に包まれた家屋に飛び込む等と人間だったら丸焼きだっただろう
それも命知らずの大馬鹿者という称号を貰う所だ

 

藍「年も取らずに親と離れ離れになっちゃうのは誰だって嫌だもん。助けられる人が助けないと・・・」

 

昔の自分と重ね合わせているのだろうか
そう言う彼女の横顔は何処か淋しげだった

 

同時刻
天神町・凍賀屋敷
その屋敷の主である凍賀獅子斎は忍者である
それもかなりの実力者で、忍者界では知らぬ者は居ないとされている程
そんな彼にも孫が居た
今年で高校三年生になる男の子であった
名は蛟介、まさに今時の現代っ子である

 

蛟介「おいジジイ、これは何の真似だ?」

 

獅子斎「お前ももう18じゃからな、そろそろ忍者のいろはでも教えてやろうかと・・・」

 

蛟介「要るかっつんだよ!忍者なんて時代遅れにも程があんだよ」

 

忍者として名を馳せる獅子斎もこれには困り物だった
一人娘の婿となった男もまた忍者であり、目の前の孫にもその素質が受け継がれているというのに
ましてや潜在能力だけなら祖父に負けず劣らぬレベル・・・
だというのに忍者を嫌うその性格、はてさて一体誰に似たのやら

 

獅子斎「(このままでは宝の持ち腐れ、ここは一つ荒療治でもしてみるかの・・・?)」

 

蛟介の知らない所で何かが起ころうとしていた

 

続け

 


蒼麻「・・・で、その荒療治で何でウチが出て来るんだ?」

 

獅子斎「いや何、神社には儂より人生経験が豊富な者が居ると思うてな。如何か一つ頼まれて貰いたいんじゃよ」

 

蒼麻「そう言われてもな・・・神社一良心的な赤が留守なんだよなぁ」

 

なんでも頼子と新婚旅行に行ったとか
何もこんな時期に行かんでもいいじゃないかと言った訳だが、当然一蹴された
弟より勝る兄は居ねえ

 

白帝「そのお孫さん、お幾つなんですか?」

 

隣で一緒に話を聞いていた白帝が問う
因みに現在俺達は二人掛かりで二番弟子である我最強也の特訓中である

 

獅子斎「今年で18になるかの。まだまだ芯がしっかりしておらんで、見ていて危なっかしくてな」

 

肩をすくめて苦笑する
その言葉に白帝は特に考えもせず助言

 

白帝「それなら藍さんなんて如何でしょうか?」

 

蒼麻「藍を?アイツ戦闘要員か非戦闘要員かで言うと後者寄りだぞ?」

 

白帝「いえ、でも年も近いですし相性は良さそうです。それに・・・」

 

蒼麻「それに?」

 

白帝「若い男女が屋根の下二人っきりという状況は、とても想像を掻き立てられます故に」

 

蒼麻「最近なりを潜めてると思ったら・・・」

 

ジュルリと音が聞こえそうな表情で白帝が言う
まともな事を言ったと思ったらコレだよ
流石は頼子の弟子(そっち方面の)
獅子斎はそんな二人を視界の外に考え込んでいた
そして決まったのか二人の方を向いて笑顔で言い放った

 

獅子斎「あの子なら儂も安心じゃし頼み申した」

 

蒼麻「マジか・・・」

 

白帝「師匠、この機会にBL物の小説とか如何ですか。私ご教授しますよ?」

 

蒼麻「いや、今の流れで如何してそうなる。ってかお前腐りかけじゃねえか」

 

二人の師弟らしからぬ会話を背後に獅子斎は石段を下っていく
これで一安心じゃな、凍賀の翁はほっほっほっと普段しない様な声で笑った

 

続くんよ

 


あの火事から数日が経った
何処からともなく現れた支援者によって、焼け落ちた家もたった一日で建て直され
家族はまたつつがなく暮らしている
と、そんな関係の無い話は置いといて・・・

 

蛟介「おいジジイ、また性懲りも無く忍術が如何のって・・・・・・っ!?」

 

屋敷にある道場の扉を開けながら悪態を吐いていた蛟介は、目の前に居た人物に度肝を抜かれた
その人はあの時人混みの中から見ていた女の子
金髪の髪を右側だけ後ろに流し、桃色の縦縞セーターを着た活発そうな風貌の
見事なまでに眼を奪われた女の子がそこに立っていた

 

藍「あ、君が蛟介君?はじめまして、今日から君の忍術の師匠をする事になった藍です」

 

よろしくね♪と笑顔を向けて来る
その顔を見てドクンと心臓が高鳴った
ああ、こりゃもう弁明しようがねえ、恋以外の何物でもねえ

 

蛟介「よ、よろしくお願いします・・・(////」

 

自己主張の激しい心臓を手で抑えながらそれに答えた
それからというもの、俺は藍さんの指導を受けながら忍術の修行に明け暮れた
普通だったら「何が忍術だ、時代錯誤も甚だしい」とか言う所だが、実際は藍さんと一緒に居たいという欲求が前面に出過ぎて否定出来ない
ところで藍さんの指導はというと、お世辞にも最高とは言い難く
端から見たら専門の人が教えた方が良いんじゃないか?と言われそうなレベルである
俺もそこの所をさり気無く言ってみた訳なのだが・・・

 

藍「え、えっと、実は私忍術って行使の仕方は知ってても使った事なくて・・・」

 

と苦笑しながら言われた
じゃあ何でこの役受けたんですかと聞くと

 

藍「お世話になってる所に恩返しとか、かな?あ、後蛟介君と私って年齢近いみたいなんだ」

 

聞けば藍さんは今年で21歳らしい
近いといえば微妙な所なのだが、周りの人達の中では年下であるとの事
成程、それじゃあ藍さんしか適任は居ないですねと無理矢理納得した
これは後日談になるんだが、如何やらウチのクソジジイが人選に噛んでいたらしい
本当にあのジジイはムカつく事この上無い

 

続くんじゃよ

 


あれは何時の事だったか
あれから二ヶ月も経っているので細かい所までは覚えていない
でも、確かあの日は珍しくジジイが家に居なかった
居なかったから、俺は藍さんと二人っきりだと思って柄にも無くテンションが上がっていた
そんな時だった、アレが起こったのは・・・

 

藍「・・・?」

 

蛟介「如何しました?」

 

藍さんが神妙な顔で窓の外を見ていた
何かを警戒するかの様な表情で窓の外を睨んでいたかと思うと、突然俺を腕の掴んで横に跳んだ

 

蛟介「うわあっ!?な、何を・・・って、何だコレ?」


見ると今まで俺の立っていた所に三本の金属の棒が刺さっていた
黒く鈍く光るソレが何なのか抜こうと近寄った
その直後、閃光が目の前を覆った

 

藍「蛟介君!」

 

蛟介「え、のわっ!?」

 

藍さんが俺に被さる様に突っ込んで来た
頭と背中をガッチリと抱き締められた瞬間、道場の床に刺さっていた金属の棒が音を立てて爆発した

 

藍「やっぱり・・・火薬を仕込んだ棒苦無だ。これなら刺さらなくても爆発で幾らかはダメージは与えられる」

 

俺は一体全体何が起こっているのか分からなくて慌てている
苦無ってのが何なのかは分かる
忍者が携行している武器の一つだ
手裏剣と忍者刀と苦無。忍者といえばこの三つがよく挙げられる
棒苦無とは多分棒状の形だからそう呼ばれてるんだろう
だがここで一つ疑問だ
何で俺は同業者になるであろう忍者に命を狙われてるんだ?

 

「娘よ、その小僧をこちらへ渡して貰おう」

 

声のする方へ目を向けると、何時から立っていたのか濃い茶の忍装束を来た忍者が其処に居た

 

藍「どんな事情か知らないけど、問答無用で仕掛けて来る相手に渡そうとは思わない」

 

「そうか、ならば・・・ここで死んで貰う。殺ッ!!」

 

苦無を逆手に持つと一足跳びで肉薄
それを半歩ズレる事でかわすと、藍さんは忍者の胸目掛けて右腕を強く振るった
嫌な音がした
骨が折れる音に似ていた
金属が打ち合わさる様な音にも似ていた

 

「ちぃっ!鎖帷子が意味を成さぬとは・・・娘、貴様まさか人外か!?」

 

人外
それは人あらざる者
人のカタチをした化物
俺の友達の能力者とも違う、本当の意味での異端
藍さんがその人外だって言うのか?

 

藍「人外だから強い訳じゃない、守りたい人が居るから私は強いんだ。そして目の前の貴方は敵、それだけだよ」

 

強く言い放った
そうだった、あの火事の日も彼女は強かった
目の前で助かるべき人を死なせてしまうのが嫌だから
誰も助けられないのなら、せめて力のある自分が助けようって
だから彼女は強いんだと俺は今になって漸く気が付いた

 

続いておくれ

 


「フン、強弱の世界に情など必要無い。いざ、鉄鎖縛牢陣!」

 

藍「なっ!?」

 

忍者が叫ぶと同時に床から不意に伸びてきた鎖によって藍は捕らえられてしまう
もがく事さえ許されない状態にされ、尚も戦意を失わない藍に忍者は言う

 

「私の捕縛術からは何人足りとて逃れられはせん。諦めろ」

 

藍「私は諦めないよ。どんなに時間が掛かっても絶対に抜け出してやるんだから」

 

「そうか。だが、その前にこの小僧の命は如何なるだろうな?」

 

藍「!?」

 

俺には客観視でしか二人を見る事が出来ない
俺にはまだ力が無いから
力があったとしても、それを上手く使う事は多分出来ないと思うから
忍者の持つ苦無がこちらに伸びる
的確に心臓を狙ってる事なんてすぐ分かる
あ、俺死ぬのかな?
何が何だか分からないけど、これが死ぬっていう事への恐怖なんだろうな
さっきから体がガクガク震えて言う事を聞かない
歯はガチガチと音を鳴らして、足は一向に動いてくれない
逃げろ、逃げろって頭は言ってるのに、何で・・・

 

藍「蛟介君、逃げてっ!!」

 

蛟介「っ!」

 

俺の体は無意識に動いていた
けれどそれは忍者の家系に生まれた者にとって、至極自然な事だったのかもしれない
苦無の動きが止まる
相手が止めたんじゃない
止まらざるを得ない状況に陥ったんだ

 

藍「・・・・・・凍結掌」

 

ソレは忍術の中でも一般的な物ではあったが、同時にクソジジイの得意技だった
その兆候は全く無かったんだが、俺は如何やら何処まで行っても忍者からは逃れられないらしい
でも、これで惚れた人を助けられる
だから俺は、

 

蛟介「うおおおおおおおおおっ!!」

 

思いっ切り苦無を弾き飛ばした
放物線を描いて道場の壁に突き刺さった苦無を傍目に、俺は追い討ちだと言わんばかりに右手を薙いだ
突然の事に忍者も対処出来ず、俺の攻撃を受けて倒れる
と、俺の中ではそうなる筈だった
だが実際には忍者は余裕で避けて、空いた左手で俺にデコピンを食らわせた
ゴロゴロ転がる俺を尻目に忍者は嘆息気味に告げる

 

「まあ、ギリギリ合格ですね。間合いも技術もあったモンじゃないですが、それは追々如何にかなるでしょう」

 

ピタッ
痛さでデコを押さえながら床を転がっていた俺はその言葉に止まる
忍者は顔を覆っていた布を外すと笑顔で言う

 

「如何です若?意外とちゃんと演技出来てたでしょう?」

 

本家でよく見る顔だった
というかジジイの側近だった

 

続くんじゃ

 


蛟介君がムスーッとした顔で拗ねている。ちょっと可愛い

 

「いやあ、頭領からは親の敵でも見るかの様な毛嫌い振りだと聞いていたんですがねえ」

 

藍「えーっと、あながち間違ってもない様な・・・」

 

時雨「あ、申し遅れました。わたくし、凍賀忍軍行動隊長の時雨と申します。以後宜しくお願い致します」

 

藍「あ、これはご丁寧に。蒼黒神社で巫女をやってる藍です」

 

そっかー、凍賀おじいちゃんの所の人かー
どうりで術が全然破れない訳だ・・・

 

藍「それで、何でこんな事に?」

 

時雨「ああ、それは「どうせジジイだろ」・・・今若が言った通りです」

 

苦笑する
ムスーッとした顔を少し崩して蛟介君はこちらに振り向いた

 

蛟介「俺が忍術を勉強しないからって、孫を殺しかけるとかふざけんじゃねえっての」

 

時雨「・・・何か勘違いされている様ですが、わたしは完全に殺す気でしたよ」

 

蛟介「はあっ?!」

 

蛟介君は流石に驚いて全力で振り向いた
その顔は「おいおい、コイツ何言っちゃってんの?」とでも言いたい様だった
確かにそれは私だって思う
公然と人殺し宣言されたんだから

 

時雨「凍賀の一族は代々生き死にの瞬間に遭う事で力に目覚めてきました。なのでわたしの行動は何も間違っていないのです」

 

蛟介「俺が忍術を習ってなかった場合の事は考えなかったのかよ!?」

 

時雨さんはチラと私の方を見てから蛟介君の方を向いて言う

 

時雨「その点は心配不要でしょう。若が忍術を習わない場合、藍さんがこの場に居る事は無いですからね」

 

蛟介「ら、藍さんは関係ねえだろうがっ」

 

何故かしどろもどろになる蛟介君
何か言いたそうにしてるけど、口をモゴモゴさせるだけで踏ん切りがつかないみたいだ

 

時雨「いえいえ、関係ありますよ。十六夜なんかは当初から分かっていた様ですし・・・」

 

蛟介「おい、何でそこで十六夜・・・が。ちょっと待て、分かってたって何の事だ?」

 

時雨「他人の口から言っちゃっていいんですか?若自ら告白した方が格好良いと思いますけど?」

 

笑顔で言う時雨さんの言葉に蛟介君が固まった
何の話だろ?
硬直から復帰した蛟介君は「テメエ等一体何処まで知ってんだ!?」と咆吼した
その怒声がよく響く道場で、私は一人だけ何も分からず首を傾げていた

 

続く

 

 

藍「ただいま、蒼ちゃん♪」

 

蒼麻「おう、おかえり。あっちは如何だった?」

 

藍「んー、お義父さんもお義母さんも優しい人で過ごし易かったよ」

 

蒼麻「へえ、理想の夫婦ってやつか。良いトコに嫁いだなお前も」

 

あれから二ヶ月が経っていた
私と蛟介君は相変わらず忍術の勉強をしていた
そろそろ本格的に始めようか、なんて話していたら事件が起きた
天神町を襲った未曾有の大火災
そしてそれと同時に襲い掛かってきた妖魔の群れ
結果として私は傷付いて倒れ、蛟介君は凍賀の力に目覚めた

 

蒼麻「それにしてもお前の彼氏、あの時凄かったよな。正直当代のジジイより能力では勝ってるんじゃねえか?」

 

藍「お爺ちゃんは「まだまだ経験が足らん」って言ってたけどね」

 

それは確かにそうだった
大火災を一度で止め、妖魔の群れを氷漬けにした直後、彼は私と同じ様に倒れたんだから
でもその時かな、あんなに頼りなかった彼が凄く頼もしく見えたのは
その後告白されちゃったんだよね
えへへ、今思い出しても何か恥ずかしいな
今まで誰かを好きになった事も、誰かから告白された事も無かったし

 

蒼麻「・・・い、おい藍!お前聞いてんのか!?」

 

藍「ふわっ!?」

 

蒼麻「お前、幸せに浸るのはいいけどな・・・あの小僧が高校を卒業するまでは、お前はウチの子なんだからな」

 

藍「だ、大丈夫だよ、それは十分分かってるから!」

 

蒼麻「まあいい、それより今日は頼子に料理教えて貰うんだろ?早く行かなくていいのか?」

 

藍「っと、そうだった。行ってきまーす!」

 

蒼麻「おう」

 

社務所の奥にある居住スペースに走って行く藍を見送ると、蒼麻は鳥居下の石段に腰を掛けた
その隣に何処から現れたのか赤が腕組みをして立った

 

赤「まさか俺が旅行をしている間に、藍に男が出来るとはな」

 

蒼麻「長い事暮らしてきても予測する事が無理な事だってある」

 

赤「・・・・・・如何した?お前らしくないな」

 

蒼麻「アイツが預けられてから二十年、寝てた時間を差し引いても五年だ」

 

赤「そうか、もうそんなになるか」

 

人外にとって二十年なんて一瞬だ
なまじ二万年も生きてると些細な事なんて如何でもよく思える
それなのに

 

蒼麻「ずっと兄妹同然に暮らしてきたからかな、何か心にポッカリと穴が開いた感覚なんだ」

 

赤「・・・あの子も何時までも子供じゃないんだぞ」

 

蒼麻「そうだよなぁ、誰もが子供じゃ居られないんだよなぁ」

 

蒼麻は悲しげな目で石段に座ったまま遠くを見つめた
藍と蛟介が正式に婚約したのはそれから半年後の事だった

 

終わり

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