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あの日は普段と変わらない天気で

空を見上げれば他と変わらない空が続いていたと彼女は言う

それにある者はこう言ったという

何も変わらないという事が一番幸せな瞬間だ

 

【二律敗凡】

 

白帝という名の私はこの道場の師範代だ

来る日も来る日も門下生達を前に稽古をしている

それを苦には思わず私は充実した毎日を送る

ある日の事だった

一人の男が道場の門を叩いた

普通客人は神社の方に行き、それから道場に案内される

だからおかしいと思ったのだろう

側に誰も居なかったから・・・

 

「お前が此処の管理者か」

 

面識も無いのに命令口調

私はそれにムッとしたが

初対面の人に対していきなりそんな事を言っても詮無い事だ

 

白帝「そうですが、何の御用でしょうか?」

 

男に問う

今思えば何故そんな事を聞いたのか自分でも分からない

威圧めいたものを感じた筈なのに

私はそれに抗おうとでもしたのだろうか?

 

「はっ、出会い頭に師範が誰かを聞いたんだ。道場破りに決まっているだろう!」

 

不敵な笑みを浮かべ

吐き捨てる様な言い草

それはとても好きにはなれない表情だったが

私はそんな事よりも心の中で考えている事があった

「またか」という諦めにも近い言葉

この道場は過去にも何度か道場破りがあった

その全てを完膚無きまでに阻止してきた私は

いつの頃からか彼等に対して呆れの感情を当てていた

 

我最「俺の名前は我最強也(わがも きょうや)!お前の名前は何だ?!」

 

白帝「光剣剣道場・師範代、白帝」

 

我最「・・・師範代だと?」

 

疑問に思うのは仕方が無い事だ

何せ師範は一度もこの道場に足を踏み入れた事が無いのだから

それでよく師範が務まるものだという声も聞くが

あの方はそれが平常なのである

 

我最「まあいい、白帝とやら。俺が勝ったら道場の看板は貰う」

 

これも又同じ展開

いつもの如く私はそれを受け入れ勝負を始める

それだけである

順序は変わらないし

結果だって今までそうしてきた様に変わらない

だから・・・

 

白帝「いいでしょう。その仕合い、受けて立ちましょう」

 

私はその要求を呑んだのだ

その答えが間違っていたのかどうかはすぐに分かる事だ

 

 

「二巻」

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