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拮抗する戦力

これが戦場で団体戦ならば

同士討ちも辞さない覚悟であろう

 

【三全世壊】

 

剣を取る

とは言っても真剣ではない

木刀である

真剣勝負とはいっても命の取り合いではないからだ

それに人殺しにはなりたくないし

なる気もさらさら無い

 

白帝「勝負はどちらかが一本取るまで」

 

我最「ああ、俺は何でもいいぞ」

 

又あの不敵な笑み

この男、仕合いを何かゲームの様に思っているのではないか?

そんな考えを持つなど武士の鑑にもならん男だ

私はその時はそう感じた

門下生を審判に据えて仕合いを始める

 

白帝「先に聞いておきたい、流派は?」

 

その問いに対して不敵な笑みを崩さず

 

我最「人神流」

 

その言葉を聞いた時

私は何を思ったのだろう

どこかで聞いたという事だけは分かっていた

そしてその流派の噂も耳にしていた

曰く、人神流の先代は息子に代を渡し

既に没した後だと

息子は正統後継者という力を誇示し

剣術の禁忌とされる道場破りをしていると

人神流はこの国の最高峰の流派

だから・・・背筋に悪寒が走ったのかもしれない

 

我最「仕合いの最中に考え事とは余裕だな!」

 

白帝「!?・・・クッ!」

 

ハッとして前に居直るが遅かった

我最の木刀は私の人中を捉える

人中を狙って来るのは

剣術においては平常でも

仕合いにとっては異状である

寸での所を剣で逸らしたが

中っていれば致命傷になりかねない

しかも我最の木刀は仕込みだった様で

隙間から輝く刀身を覗かせているではないか

 

白帝「貴様!」

 

我最「如何した?シアイというのは何をしてもいいんじゃないのかぁ?」

 

白帝「何を馬鹿なこ・・・貴様、まさか!?」

 

まさかシアイというのは

仕合いではなく・・・

 

我最「そらそら!死合いっつーのは殺るか殺られるかだろうがよ!!」

 

私は根本的な所から間違っていたのか

仕合いだと思っていたから適当にあしらおうと考えていた

だが実際は死合いだった

手が震える

過去何度も剣を取っているが

私は一度も人を殺した事が無かった

そんな事など露すら考えた事もなかった

 

我最「何だ何だぁ?手が震えてるぞぉ?もしかして人を斬った事が無いのかぁ?!」

 

白帝「クッ・・・・・・はあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

踏み込む

それ以上言うな!

これ以上話すな!

頭の中がドロドロになる感覚だった

足元がおぼつかなくなる様な、そんな感覚

だから踏み込んだ

だけど簡単に止められて

 

我最「人を斬る瞬間は良いぞ!とても気持ちが良くて頭の中が真っ白になる」

 

目の前の男が何を言っているのかも分からなくて

立っているのもやっとで

私は今にも逃げたい、そんな気持ちになっていた

 

 

「三巻」

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