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服屋を出る

そういえば実家の方では、ブティックとか小洒落た言い方をしていたなと思う

実際には近所のおばちゃんがやってる昔ながらの小さな店だったんだけど

そんな事を考えながら石畳の道をフィーナと肩を並べて歩く

 

フィーナ「服の方はこれで心配要らないから、後は身の回りの小物とかかしら。香水の類は・・・・・・似合いそうにないわね」

 

横目でチラと見られて即答された

前にお婆ちゃんにも言われたけど、私そんなに似合わないのかな?

 

ソフィー「お婆ちゃんにも言われたよ。『貴女は香水の匂いをかき消してしまうから、そもそも意味が無い』って」

 

フィーナ「変な言い回しね。人工の匂いに負けない甘い体臭だ、とかなら分かるけど、かき消すだなんて・・・」

 

ソフィー「や、甘い体臭もそれはそれで嫌だけど」

 

私は食虫植物か何かかっての

 

「お嬢様、これ等如何でしょう?」

 

先程フィーナに熱視線を向けていた事実も彼方に

メイドのコルネリアさんが一つのアクセサリーを差し出した

 

フィーナ「あら珍しい、冬の涙じゃない」

 

ソフィー「冬の涙?」

 

フィーナ「ええ、元々は氷雨石っていう白く透き通った希少な水晶で、宝石商からはその名にちなんで冬の涙と呼ばれているわ」

 

ソフィー「へえ」

 

フィーナ「それにしても、本当に珍しいわね。央都の宝石店なら数百万はくだらな・・・・・・え、三千!?安っ!!」

 

あまりの値段の安さに大声を上げてしまう

少し周囲の視線を集めてしまうが、当のフィーナはそれ所ではない

都会からかなりの距離が離れている故に、宝石の値段にしろ、その鑑定を行う人材にしろ、色々と規格外なのである

しかも辺境に程近いという事もあってか、少しばかり流通も遅れている

希少な水晶があるのは近くに鉱山があるという事で、別段おかしな事でもない

つまり流行に追いつくにはそれなりの時間が必要だが、廃れに関しては当分縁が無いという事である

 

フィーナ「コルネリア、私はソフィーに街の案内をしてくるから、日用雑貨とか足りない物とか追加で買っておいて頂戴」

 

コルネリア「かしこまりました。用件が終わり次第お呼び下さい、何処にいらっしゃろうと馳せ参じます」

 

その場でお辞儀をしながらソフィー達を見送るコルネリア

その言葉に一抹の恐怖を覚えながら、ソフィーはフィーナと肩を並べて再び歩き出した

何故恐怖を覚えるのかって?

かのメイド、名をコルネリア=スタードットというのだが

フィーナが名前を呼んだ数秒後には傍に居るのだ

しかもどんなに距離が離れていようが関係無しに

更に屋外だと車付きで

恐怖を覚えるなと言う方が難しい

 

 

第六雨

「恐怖の万能メイド」

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