ここはトウマの国
怪物が棲み、獣人が闊歩し、人間が笑い、妖精が舞う
魔術が発展し、科学が興り、技術が進歩した
そんな国に一組の男女が居た
男の名は、グラム=バテレイト
誇り高き髑髏の戦士
女の名は、ミラーユ=ルコロイド=サーチェス=ベルガ=ケーテンブルク
あまりにも長い名前なので、髑髏騎士からはミラ・・・もしくはミラ様と呼ばれている
グラムは老体にも拘らず、その剣先は鋭さを失わない
だが幾多もの戦を駆け抜けた猛者も、姫には敵わないのであった
姫は何故か髑髏の騎士を慕っている
いや、慕っていると言えば聞こえは良いが、実際は好意を抱いている方が正しい
グラム「ミラ様、首にしがみつかれると取れるのですが・・・」
ミラ「取れたらまた付ければ良いわ」
グラム「いや、そういう問題ではなくて・・・」
ミラ「騎士が些細な事を気にして如何するの!それよりも、今日はイルが来るから」
グラム「む・・・では、ワシが出迎えるとしましょう」
グラムが歩くとミラも歩く
グラムが止まるとミラも止まる
グラムが
グラム「・・・あの、ミラ様?ワシが出迎えると言った筈ですが」
ミラ「だってグラムの側に居たいもの」
ご老体は頭を悩ませる
如何すれば我が姫を自分から剥がせるかを
そうこうしている内に、ベルが鳴る
ミラ「あ、来たみたい」
グラム「勝手知ったる何とやらか・・・貴様等、こちらが行くまで待てんのか?」
そこには銀色の扇を持った女性と、青い体毛の人狼が居た
妖艶な輝きを放つ女性、名をイリューダ=フォルテ=ソードという
つまり、イルは愛称
イル「あら、ごめんなさい。時間になっても誰も来なかったから仕方無く入ったの」
グラム「むぅ、それはすまなかった。少し取り込んでおっての」
ミラ「あれはグラムの背中が居心地が良いのが原因よ」
グラム「ワシの所為なのですか・・・」
そこに人狼・・・ドーファ・・・が口を挟む
ドーファ「つまり嬢ちゃんはそれなりの理由があったって訳だ。それじゃあ、じぎゃひん!?」
ドーファの言葉が急に途切れる
原因はドーファの後頭部にイルの銀扇がヒットしたからだった
イル「言葉を慎みなさい、私達の前に居る方は誰?」
ドーファ「て、天獄の姫・・・です」
痛みに震えながら言葉を紡ぐ
かなり痛そうだ
イル「では誓いなさい。「わたしは天獄の姫に対して野蛮な言葉を今後一切使いません」って」
ドーファ「わ・・・わたしは、天獄の姫に対して野蛮な言葉を今後一切使いません。・・・・・・くぅ、これでいいのかよ!」
イル「はい、よく出来ました。ご褒美にキスしてあげる♪」
ドーファ「は!?いや、ちょっと待」
これで中々二人の関係は良好なのかもしれない
・・・主従関係だけど
ミラ「ねえ、グラム?」
グラム「断らせて頂きます」
ミラ「えー」
我が姫は本当に如何すれば自分から剥がせるのだろうかと、ご老体は悩んでいた
第一骨
「一輪の花は磨耗した歯車を愛す」
完
EDテーマ
イメージ:惑いて来たれ、遊惰な神隠し