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こっちの方が近道になるぜとテッドに言われ、何の疑いも無しに入っていった路地裏

流石は田舎というべきか、結構道は入り組んでおり少々歩き難かった

それでも、確かにこれは近道だと言える程にすんなり目的地に着いた事には敬意を表する

前を行くテッドはいつもの飄々とした表情を崩さず、陽気に歩を進めている

 

ソフィー「ねえねえ、テッドってさ、なんで情報屋なんて事してるの?」

 

黙ったままというのもアレなので気になった事を訊いてみた

それに彼はんー、と暫し考え込むと

 

テッド「実は相棒が居るんだけどな。ソイツは戦う事しか出来なかったから、だったら俺が色んなトコから情報仕入れてソイツをサポートすりゃいいんじゃねえかってさ!」

 

ソフィー「相棒・・・あのレリクスって人の事?」

 

テッド「いや、レリクスはただの同居人。完全な自慢になっちまうが、俺の相棒はそりゃもう凄えぞ?」

 

ソフィー「男?女?」

 

テッド「あー・・・・・・一応女、かな」

 

何やら歯切れが悪くなった

どうやらあまり詮索して欲しくない様だった

その話はそこで終わり。気付けば私達は駅に着いていた

構内に入り改札口を横目に地下鉄への階段を下りて行く

地下から上って来る人の波をすり抜けて、13番線と書かれた入り口を抜ける

 

テッド「なあ、おい。央都駅に13番線なんて無かった筈だぞ?」

 

ソフィー「みたいだね。現にパスを持ってない人にはここの入り口自体見えてない筈だよ」

 

テッドは私の傍に居るから例外だと思うよ、と最後に付けてソフィーはそう言った

恐らく地下道を行く人達に手を振ったり大声で叫んでも、一切気付かれたりはしないだろう

そして僅かに足元だけを照らす常備灯のトンネルを抜けると、今までとは違うホームに着いた

 

ソフィー「あ、丁度来たみたい」

 

その言葉にテッドが線路を見ると、今まさにホームへと滑り込んで来る列車の姿があった

黒を基調とする色に銀色のラインが引かれ、車体の各所から放出された虹色の粒子が後方へと帯の様に流れている

これが通称・次元トレインと呼ばれる物

次元と次元を結び、いつ乗り込んだとしても希望した時間に必ず着くという、いうなれば謎の技術の集合体

客車は個室毎に外部時間から隔絶されており、理論上億年以上乗っていても降りたら一日しか経っていなかったというケースもある

それ程までに謎なのである。謎過ぎて誰が作ったのかも謎であったりする

 

テッド「はー・・・噂にゃ聞いてたがトンでもねえ乗り物なんだな」

 

テッドはただただ圧倒され、そんな感じの言葉しか出て来ない

客車部分のドアが開く

大きなトランクを両手で押しながら小さな少女が降りて来る

その後ろに銀色の髪を肩に垂らしたメイド服姿の女性、その後ろから冗談じゃないかって言いたくなるドクロが出て来た

 

ソフィー「あ、あれ、なんでおば・・・お姉ちゃんが居るの?!」

 

「おば」の所まで言い掛けて一瞬鋭く光った目に慌てて引っ込めた

家ではそうだけど、他の場所では・・・特にこの国では姉として扱えと言われていたのを思い出したからだ

 

「別に。そちらに行かないとは言ってないでしょ?」

 

ソフィー「ま、まあ、確かにそうなんですけど・・・」

 

変わってない。私が家を出た時から何も

そうそう何が変わる訳でもないけど、お姉ちゃんは元から色々凄いからなあ

 

「一ヶ月も経っていないけれど、元気にやっているみたいねソフィー」

 

ソフィー「お陰さまで・・・そっちもお変わり無い様で嬉しいです、ミラーユお姉ちゃん」

 

トウマの国に■■の■が帰って来た

それが意味するのは一体何なのか?

物語はまだ、始まってもいない

 

 

第十三雨

「姫君は、されど廻る」

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