ゼペストさんと少し話があるという事で私とテッドはその間外で待つ事になった
少しとはいえどれ位の時間が掛かるのか分からないので、そろそろ昼という事もあり早めの昼食を摂る事にする
ソフィー「テッド、この辺に美味しいお店ってある?」
テッド「そうだな・・・トリ肉を使った定食屋があるにはあるが、トリは食える方か?」
ソフィー「うん、大丈夫だよ。にしても鳥かー、唐揚げかな?それともグリル?唐揚げならネギ醤油をたっぷりかけて食べたい所だなー」
まず女の子が出さないであろうデヘヘといった擬音を漏らしながら、口から垂れそうになる涎を一生懸命押し留めているソフィー
普段食べ物の事ではここまでだらける事は無い
しかし鳥肉が絡むと理性が簡単に決壊するのである
なんと分かり易い子であろうか
テッド「ねぎしょーゆってのが何なのか分かんねえが、此処のトリ肉は他のトコで獲れるヤツより肉付きが良いからな。運が良いとハネ肉も食えるんじゃないか?」
ソフィー「うわー、そういうの聞くとさっきよりも涎が増えるー」
さっきよりも更にソフィーの表情はだらけていく
いや、だらけるというより緩むという方が正しいのか
取り敢えず恍惚としているのである。世の男共が見れば途端にドン引きするレベルで
そんな状態であるからか、テッドの言葉の端々に何やらおかしな単語が見え隠れしている事には全く気付いていなかった
注文をし席に座って待っていると、隣の席から匂って来る肉の匂いに鼻腔が侵される
よく焼けた肉の匂いは早いとはいえ空腹に容赦無いパンチを叩き込んでくる
来た瞬間にかぶりついてやると心で決めていたソフィーは、運ばれて来た料理を見て目が点になった
テッド「お、ハネ肉付いてるじゃねえか!ラッキー♪」
グッとガッツポーズをとって喜ぶテッド
その言葉通りハネ肉と呼ばれる部位がソレにくっ付いていた
そしてソレはトリ肉と呼ぶにはあまりにも丸い姿をしており、そもそも足が四本あり、ソフィーの知る鳥とは違い頭が現存しており
まあ、その、なんだ
早い話が空を飛んでる鳥じゃあなかった
テッド「ん、どした?食わねえのか?」
ソフィー「ねえ、さっき鳥って言ったよね?」
テッド「ああ、どっから如何見てもトリだろ?」
ソフィー「私の目には兎に見えるんですが・・・」
そう、何処から如何見ても兎である
此処は戦国時代か
ソフィーがそんな事を思ったか如何かは定かではないが兎肉をトリ肉だと言うのだ
否が応にも某天下統一の人を思い出すというものだ
だがテッドはその問いにさも当然の様に返した
テッド「そりゃ羽兎(うと)っつー鳥だからな、兎の姿してねえと語義矛盾になるだろ」
そこまで聞いてソフィーは目の前の料理を理解した
今まで住んでいた世界も色々常識が通じない様な所だったが、トウマの国はそれよりも通じない所なのだと
少女はこの時少しだけ成長した、のかもしれない
第十六雨
「飛べない兎は普通の兎」
完