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悪態を吐きつつもトリ肉を口内に運び入れたソフィーは、外はカリッで中からジュワッの美味しさにワンカウントで負けた

結局の所、トリ肉に負けたのである。納得はいかなかったがその美味しさには納得がいった

そしてそんな定食屋を後にして、再びソード城の前まで戻って来ると・・・

 

ソフィー「え、もう行った?」

 

ミラ達から言伝を頼まれていたメイドの一人が言う

なんでも行く所が二つ出来たとの事

それと寝場所の確保は既に出来ているとの事

ソフィーも知っている所なので用事が無い様なら後で来いとの事

この三点だった

 

ソフィー「既に出来てるなら先に言っといて欲しいんだけどなあ・・・」

 

愚痴をこぼしてみるが同時に自分が知っている様な場所に泊まれる所なんてあったかと思う

そもそもトウマの国全域をまるで知らない自分では100%あそこだと言える自信が無い

頭の片隅にとある場所のイメージが出て来はしたが、即座にノーの判子を押す

そんな事を道の真ん中に立って考えていると、犬も歩けば棒に当たるというものだ

 

ソフィー「あだっ!?」

 

「・・・・・・っ?!」

 

おでことおでこがぶつかった

幸いな事にどちらとも石頭ではなかったが、どちらともそれ相応に痛みは感じていた

 

テッド「大丈夫か?つーか往来のど真ん中で立ち止まって何してんだよ」

 

ソフィー「ちょっと考え事を・・・いたたたた」

 

テッド「お前は大丈夫そうだが、あちらさんはすっ転んでんぞ」

 

ソフィー「わ、ホントだ!だ、大丈夫!?」

 

見ると同年齢位の女の子だった

表情は長い前髪に隠れて見えないが、大人しそうな雰囲気を醸し出している

その女の子はムクリと音も無く起き上がると口を開いて何か言った

何か、と曖昧なのは女の子の言葉が二人には聞こえなかったからだ

聞き取り辛いとかそうういうレベルではなく、むしろ口パクに近いと言った方が正しい

 

「前を見ていなかった私も悪かった、と言ってるんだ」

 

後ろから声がした

振り向くと黒髪の青年が立っていた

青年は女の子の横まで歩いていくと、頭や背中に付いた砂をはたいて落とす

一連の動作を終えると改めてこちらを向き、

 

「連れが迷惑を掛けた、すまない」

 

ソフィー「え、あ、いや。私も注意不足でしたしおあいこですよ」

 

「そう言ってくれると助かるな。あ、俺はカントウ影楼、こっちはカンサイ鎖暗、よろしく」

 

ソフィー「ああ、えっと、ソフィア=インベルタークです。ソフィーって呼んで下さい」

 

テッド「テッド=スカイティアだ。つかぬ事を聞くが、アンタ等この国の人間じゃないだろ?」

 

影楼「ああ、ちょっとした野暮用で来たんだ。やっぱりそういうの分かるのか」

 

テッド「まあ、情報屋っつー職業してると人種とかに聡くなるんでな」

 

鎖暗「・・・・・・」

 

クイクイと鎖暗と呼ばれた女の子が服の裾を掴んで何事か呟いた

 

影楼「ん?ああ、そうだな。その方が確実か」

 

何故言ってる事が分かるのか、ソフィーには理解不能であった

似た様な名字だし親戚とか兄妹とかそういう類なのだろう

 

影楼「情報を買うとかじゃないんだけどちょっと道に迷っててさ。ターシャ大聖堂広場って何処か分かるかな?」

 

テッド「ああ、それならここから近いな。あっちに槌の看板掲げてるトコあるだろ?あそこを右に曲がるとデカい門が見えて来るから、それをくぐって道なりに進めば大聖堂広場だ」

 

影楼「助かるよ。最初は四人で行くつもりだったんだけど、二手に別れないと非効率だって事でこっち担当になったんだけど全然土地勘無くて困ってたんだ」

 

テッド「この辺は田舎だから特に路地とか入り組んでるしな。ま、藪から蛇出したくなけりゃ素直に大通りとか通った方がいいぞ。アンタ等今思いっ切り裏通りに侵入してるから」

 

影楼「耳が痛い言葉だ」

 

影楼さんはお礼を言うと鎖暗ちゃんの手を引いて去って行った

その後姿は年上の優しいお兄さんと大人しい年の離れた妹みたいだった

さて、それなりに時間も経った事だし私達は私達の用件を済ませよう

 

 

第十七雨

「奇妙な出逢い」

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