top of page

鉄格子がはめ込まれた窓がカタカタと音を鳴らす

石造りの床には鮮血色の絨毯が玉座まで一直線に走っている

天井には穴。深く黒く飲み込まれてしまいそうな程開いている

壁の一部は戦場にでもなった事があるのか無数の弾痕がある

その部屋の玉座に彼は居た。彼の名はトライド、種族は人間・・・だった

退屈そうに冷たい玉座に腰掛け、寄りかかる女の髪を時折梳きながら天井を眺める

ふと足音が聞こえた

またぞろ何処かの国の使いでも来たのだろうと視線をチラと向けると

 

リベリア「久し振りだね、ライ君。最後に挨拶に来て以来だったから九十年振り位かな?」

 

子供の頃の幼馴染みが立っていた

あの頃から何も変わっていない

いや、正確には心が壊れる前のほんの短い期間だったので、あの頃と比べるとガラリと変わっていた

 

トライド「ベリー、お前だから許してはいるがな。あまり昔の呼び方をするな。ウチには嫉妬深いのが沢山居るからな」

 

ククッと笑う

嫉妬深いというより羨望の方が強いが、それは気付かない振りをして過ごすしかないだろう

元より日陰を生きるモノと日の下で生きる者では世界が違うのだから

 

トライド「それで・・・今日は何の用件で来たんだ。わざわざ剣聖を連れてまで思い出話をしに来た訳じゃないんだろう?」

 

グラム「うむ、単刀直入に言おう。黄昏の魔導者に係わる事だ」

 

トライド「・・・成程。ここ最近央都政府がタクワカの森に出入りしてるのはその所為か」

 

リベリア「タクワカの森に?あそこは並みの騎士団でも骨が折れる迷い易さだった記憶があるけど・・・」

 

トライド「不確定な情報だが、央都政府には央竜騎士団(セイグラント)と呼ばれる異能の力を行使する者達が存在するらしい。それが本当なら侵入どころか攻略さえ容易だろう」

 

グラム「ふむ・・・ここ数年の間に大型魔導陣、もしくは転送陣が使われた形跡は?」

 

トライド「今の所は無い。それよりも少々気になる事が起きた」

 

トライドが指を鳴らすと別の女がやって来た

女は脇に抱えた書類の文章を無表情に読み上げる

 

メガネを掛けた女「先日テレティアにてキリガラと名乗る者と雨巫女が交戦しました」

 

リベリア「そちらは・・・予想はついていたから問題無いわ」

 

トライド「ああ、問題はその後だ。続けろ」

 

メガネを掛けた女「キリガラと雨巫女の邂逅と時を同じくして、ローレウル十三廻廊内部にて正体不明のノイズを検知しました。時間としては短く断定出来るものではありませんが、恐らく何らかの生命体が発した声と思われます」

 

グラム「詳しい場所などは?」

 

トライド「廻廊の設計図は長らく紛失したままだ。だが、俺の勘を信じるなら動力部だろうな」

 

グラムは思い返す

かつて廻廊が自我を持っているが如く動き出したのを

侵入者撃退用のゴーレムはあるが、あれは如何考えても侵入者用ではない

何か別の用途で宛がわれた物としか思えない

 

グラム「諒解した。情報提供感謝する、屍骸王」

 

トライド「フン、感謝するならベリーに言え。通常なら情報料としてそれなりの代償を貰う所だが、幼馴染みのよしみでタダにしてやるんだからな」

 

リベリア「うん、ありがとうライ君。落ち着いたらソフィーと一緒に会いに来るからね」

 

トライド「やめろ、無駄だと分かりながらもこいつ等が毎日泣いて懇願してくるだろうが」

 

メガネを掛けた女「泣きはしません。八つ当たりで村を一つ壊滅させるかもしれませんが」

 

トライド「おい、誰かこいつを解体しろ。とばっちりで討伐される気は毛頭ねえぞ」

 

すぐさま三人位の別の女が来て奥へと引っ張って行った

その光景を横目に深く溜め息を吐いて一言

 

トライド「はぁ・・・なんでウチの女共はこうも個性派揃いなんだ」

 

ひどく疲れていた

 

 

第十八雨

「グールキング」

bottom of page