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実はこの世界に来た時に役所で場所は予め聞いていたので苦は無かった

私一人なら尚更、今はテッドが居るので道を逸れたら引き止めてくれるのだ

なんて便利なバディなのだろう

・・・いや、流石に今のは言い過ぎた

なんて頼りになるお兄さん位にしておこう

そんなくだらない事を頭の隅で考えていたら目的地に着いた

 

テッド「なあ、やっぱりここにゃ何も無えって。見ての通りの更地だぜ?」

 

ソフィー「うん、政府役所でもこの百年は誰も買い手がついてないって言ってた」

 

テッド「ホントにこんなトコに居んのか?影も形も無えぞ?」

 

テッドの言う事も尤もだ

周囲には小さな林と舗装されていない道と壊れた教会しかない

いうなれば廃墟。その真ん中の部分だけくりぬかれた様に更地になっている

私としてもこんな所にお姉ちゃん達が居るとは全く思えない

 

ミラ「それがどっこい居るのよ」

 

突然声がした

それは更地の方向から聞こえ、その直後何も無い空間が観音開きに開いた

 

ソフィー「お、お姉ちゃん・・・遂にこの世の人ではない人に・・・」

 

ミラ「人聞きの悪い事言わないでちょうだい。それよりそんな所に突っ立っていないで早く中に入りなさい」

 

ソフィー「入るのはいいけど、そこって一体何なの?人体に害とかない?体が捩れて口から心臓飛び出ない?」

 

ミラ「飛び出ないわよ、なにその偏ったオカルト知識。今はちょっと理由があって世間から隠しているけど、此処は何の害も無い屋敷よ」

 

私はその言葉にホッとしてお姉ちゃんの後に続いて扉の内側に入った

テッドもこの際最後までという事なのだろうか、私と同じく扉の内側に入った

しかし数秒してテッドが気付く

 

テッド「ちょっと待った、今屋敷って言ったか。この辺で屋敷といえば百年前に存在した・・・」

 

ミラ「そう、かつてローレウル十三廻廊に名を連ね、地続きに繋がっていた天国と地獄を切り離した張本人」

 

テッド「ああ、確か名前は・・・ミラーユ=ルコロイド=サーチェス=ベルガ=ケーテンブルク。央都政府によって冠された二つ名は」

 

ミラ「天獄の姫」

 

ソフィー「え、お姉ちゃん昔そんな長い名前だったの!?」

 

ミラ「貴族ですもの、当然よ」

 

ソフィー「でも名乗る時とか噛んだりしなかった?」

 

ミラ「意外と言葉の響きもいいしすんなり言えるわよ?」

 

テッド「おいソフィー、お前はこの国の人間じゃないから分からないだろうけどな。天獄の姫っつったらあの剣聖グラムを従えたと云われる伝説の人物だぞ?!」

 

テッドは物凄い剣幕でまくし立てる

それを聞いたソフィーはなんでもない事の様にただ一言

 

ソフィー「剣聖グラムってグラム=バテレイトって名前?」

 

テッド「あ、ああ、そうだが」

 

ソフィー「じゃあテッドもう会ってるよ。私のお父さん、そのグラム=バテレイトだもん」

 

これまたなんでもない事の様にサラリと言いのけた

これには流石のテッドも凍りついた

 

ミラ「驚きついでにもう一つ付け加えるけれど、ソフィーの母親である銀髪のメイドはかつてケイオスと呼ばれていたわ」

 

テッド「ケイオス・・・百年前のローレウル十三廻廊において並ぶ者無しと云われた極高位、が母親?」

 

ソフィー「それって凄い事なの?」

 

ミラ「この世界でいう所の英雄とか神の様な存在ね。まだ生きてるのに勝手に神格化しないで貰いたい物だわ」

 

ミラは愚痴るがテッドはそれ所ではない

今までソフィーの事をただ別の世界からやって来た少女位にしか思っていなかったのだ

それが蓋を開けてみればかつての戦争の英雄と、トウマの国最強と謳われ歴史の教科書にも出て来る存在の娘だと判明したのだ

そりゃあビックリもするし思考も停止するという物だ

実質ミラやソフィーが声を掛けてもそれから数分は微動だにしなかった

 

 

第十九雨

「バケモノ一家」

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