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フロータードバレスタでの騒乱は遠くこの地まで響いていた
ブラストリオンは即座に情報の波に潜ると、何が起こったのか分からない者達に的確に答えを紡ぐ

 

ブラストリオン「フロータードパレスタに八つ首ノ巨竜ガ出現。全高ハ30m程度。現在巨竜ハ剣帝ト交戦中、些か剣帝ガ不利ノ様ダ」

 

ミラ「八つ首の巨竜ですって?この国に複数の首を持つ竜は居ない筈・・・一体何が起こっているの?」

 

リベリア「剣帝というのは?」

 

ブラストリオン「ローレウル十三廻廊ニ所属シテイル孔鉄王国ヒルダガルドの国主ニシテ、現トウマ最強ト謳われる双剣士ダ」

 

グラム「ほお」

 

グラムの瞳が若干輝いた
元々バトルマニアの気があるので魂が無意識に震えた様だ

 

ブラストリオン「戦況ハ未だ剣帝ノ方ニ傾いてはいるガ、なにせ相手ハ八つ首ダ。一つノ相手ヲスレバモウ一つガ来る、全てヲ相手シキル事等人間ニハ無理ナ話ダ」

 

ソフィー「じゃあ助けよう!」

 

ソフィーがこの場の誰よりも力強い声で言った

 

テッド「助けるってお前、話聞いてたか?竜種の最高峰といわれる鋼竜でさえ全長5mが限度だ。奴さんはその約6倍、俺達は能力を持ってるとはいえあくまで人間・・・適う訳無えだろうが!」

 

ソフィー「どんなに勝ち目が無くても、抗う術が無かったとしても、私はその人を助けたい」

 

テッド「そりゃあ雨巫女の力を使えば足止め位は出来るだろう。援護程度ならまだ出来るかもしれない。だが、会った事も無い人間の為にどうしてお前が名乗りを上げなきゃいけねえんだ!」

 

テッドの言いたい事は十分解る
能力を持っているという事は戦えるという事
しかし戦う術があったとしても扱う本人は結局の所ただの人間だ
獣人の様に足は素早くないし、不死者の様に重傷を負っても治りが早い訳でもない
とても脆く、とても未熟で、とても壊れ易い
天と獄が繋がっていた時代に起こったとされる大戦には人間も兵士として動員されたらしいが、その多くはやはり帰って来なかった
帰って来たとしても腕や足が欠落している者、狂気に陥ってしまった者、抜け殻となってしまった者ばかりだった
その様な凄惨な場に送り出せる筈が無い
自らの守るべき主だとかそんな事とは別に、夢も希望も未来もある少女を二つ返事で送り出せる訳が無いのだ

 

ソフィー「・・・お父さんやお母さんが昔住んでた国だから守りたいだなんて言っても、結局は血の繋がりなんて無いんだからそれはただの自己満足でしかないんだと思う。でも、フィーナが、初めて出来た友達が居るこの国を、私の時の様にさせたくない」

 

ソフィーは言って静かに拳を握る
守りたい者が居る
守りたい物がある
どんな形でもいい
どんな無様な結果になってもいい
行動しなければ何も始まらないし何も好転しない
こんな所でビクビク震えて事態の収束を待ってるだけなんて、そんな臆病な人間にはなりたくない

 

ミラ「よく言ったわ、それでこそ私の妹ね」

 

リベリア「ふぅ、ミラはその竜に興味があるだけでしょう?」

 

グラム「主君が行くのなら従者である儂も付いて行かねばなりませんな。竜狩りというのも中々乙な物でしょう」

 

ミラ「ええ、貴方達には私の両翼を護って頂かないと。おちおち欠伸も出来ないわ」

 

テッド「・・・・・・はぁ、結局俺なんかが何か言った所で我が主の意志は梃子でも動かねえってやつかい。はいはい、分かりましたよ。そんなに言うなら俺達がアンタの後ろを守ってやるさ」

 

テッドは最初からこうなる事が分かっていたのか、驚く程簡単に折れてくれた
そしてソフィーが瞬きをした直後には、既にそこにテッドの姿は無く代わりにキリガラが居た

 

キリガラ「行きましょう、我が主。主の求める小さくも素晴らしき世界、我等で救いましょう!」

 

ソフィー「うん、行こう・・・フロータードパレスタへ!」

 


第二十四雨
「命を懸けてもいいと思えた」

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