その光景をのちの世の者が表現するとすれば、何と例えようか?
星々の煌めきか?
否、星々は今互いの存在証明を掛けて争っている
では何と例えようか
然るに、これは・・・
黒威「喰らえ燃ゆる竜よ、灼熱の顎門を以てその威を示せ!」
竜が迫る。静かに。豪気に。一直線に。
何者をも寄せ付けぬと。ただ眼前を屠るのみと。
対する少女も静かに紡ぐ。歌う様に、紡ぐ。
ミラ「深緑、赤銅。私が願う―――変(まじ)れ」
耳をつんざく程の荒れ狂う豪風が吹いた
燃える竜は体表を覆う炎を風に巻かれ、手繰り寄せられ、一瞬炎が尽きた
一瞬とはいえ刹那の時間
瞬きすれば炎は戻る
だがそれをみすみす逃すミラでは無かった
ミラ「月光、紫雲、黒銀。略式希(こいねが)う!」
言うが早いか、何処からともなく雷鳴を帯びた何筋もの光線が伸び、燃える竜を貫いて行く
竜はそのあまりの痛みか、はたまた灼ける苦しみか
断末魔をあげながら羽を失ったかの如く落ちて行き、地面に到ると同時に黒い霧となって消え失せた
黒威「ほお・・・成程、それが件の秘石か。魔導、否、真域魔法にも匹敵しそうな威力ではないか」
ミラ「買い被り過ぎではないかしら?アレは私の様な一介の魔女では到達し得ない域にあるもの。それこそ私の・・・私達以上のバケモノの領域にあるものよ?」
あなたも知っているでしょう?、暗にミラはそう問うていた
その言葉に黒威・創破も見えない口を綻ばせながら頷く
黒威「うむ、確かにそうだ。我らは既にバケモノだが、それさえも超えるバケモノが居る事は周知の事実。先の言葉を忘れよ、永く倦怠に揺られた所為だ」
ミラ「あら、謝罪は結構よ。私もごく最近まで平穏に身を置いていたから、あなたの言っている事もよく解るし」
黒威「まさかこの様な遠くの世界まで来て同種の罪人に出逢うとはな。クク・・・やはり汝あれか?100年前、否、廻廊創設初期に何かあったのか?」
ミラ「それはまた別の機会に話した方がいいでしょう。今は・・・」
瞬間、ミラの影から何かが躍り出た
黒威・創破にはそれが素早いとは思えなかったが、如何せん数瞬反応が遅れてしまった
気配の移動には気付いていたのだが、目の前の同種との会話の方が楽しかったのだ
剣帝「浮動剣・雲切!」
空中に制止した五本の剣が同じ動きで以て黒きヒトガタに迫る
それは浮動剣と呼ばれる魔導式の剣群
剣帝のいわゆる切り札であった
第二十六雨
「際会、同罪の者よ」
完
