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かくして唐突に現れた暴竜は消え平穏が戻った
フロータードパレスタが瓦礫の園に変わるのと引き換えに
堆(うずたか)く積まれた大小様々な瓦礫はまるで壁の様で、その中心部に居る三者は密会に臨むかの様であった
ミラは比較的綺麗な瓦礫の一つに腰掛けると黒威・創破に問うた
そもそも何故この国に居るのかと

黒威「我より強い奴が居ると聞いてな、一もにも無く城を飛び出した」

 

ミラ「えぇ・・・お仲間は何か言ってなかった?」

 

黒威「うむ、かなり心配をされたが、なに、我はそうそう負けん!」

 

ミラ「(多分相手方の心配をされたのでしょうね・・・その気持ち解かるわ)」

 

正直返されるだろう答えは想定内のものだった
規格外と称される者達は大体こういう、戦えれば相手の事情とか知ったこっちゃない感が強いのである
そういう意味ではこれ以上無い程単純である

 

黒威「此処に来た際の口上も強い奴を燻り出す為のものでな、住民を殺す気など端から無いのだ。故に剣帝にはすまぬ事をした」

 

剣帝「あっけらかんと言い過ぎだ、確かに戦闘中も貴公からは殺気の様なものは感じられなかったが」

 

だがそれなり本気で来てたよな?
殺す気が無くともあんなに大きな竜の顎門で喰いつかれたら死ぬんだが?
剣帝はジト目を向け無言で訴えた

 

黒威「汝はこの国最強の剣士と聴いたぞ?なればあの程度の攻撃容易に凌げると思ったのだ!」

 

これまた朗らかな声音で言う
やはりこの規格外、頭のネジが緩んでいる
人とヒトは違う
容姿や中身が似通うとしても、そもそもの構造が違う
空気が無かろうが、毒を喰らおうが、どの様な環境でもヒトは生きていける
ガワが同じでも蓋を開ければバケモノなのだ
だからこその頭のネジの緩みである
思考の行き着く先が人の外にあるが故である
結果、剣帝は凄く嫌そうな顔をした。駄目だコイツとは相容れねえと言わんばかりに

 

ミラ「というか業鎖ノ王より強いヒトって本当に居るの?私が言うのもなんだけど、それはもうバケモノ以上なのではないかしら」

 

黒威「いや、確かに居るのだ。初期文明時代の次元間短波通信なのでちと情報は古いがな。この国の上澄みに生まれた最強種の一つとの事だ」

 

剣帝「上澄み、という事は古の血族や上流階級の人間か。その中でも最高位となると、吸血王イーリス=ファーグラウンドの直系一族、獣王レグティエ=コンバーランドの縁者筋、・・・それと聖女帝エルシア=バルデ=ブリュンクロスの辺りになるだろうな」

 

ミラ「(ふーん、ブリュンクロス・・・ねえ)」

 

黒威「まあ、どれが件の者かは判然とせんが取り敢えず我は一度潜る。監視の目が増えそうであるしな」

 

剣帝「むしろ増えなければ央都の危機管理意識が低いというもの。厳重抗議する所だ」

 

なんだかんだ言って剣帝は目の前の常軌を逸したヒトガタに慣れた
最早全く表情が読めんとか些細な事だと言わんばかりに
と、会話が一段落した三人の元に新たな影が一つ近付いて来た

 

ミラ「あらグラムじゃない。そちらは終わったのかしら?」

 

グラム「万事抜かり無く。途中ソフィーが前方不注意で派手に転んだ程度ですな」

 

剣帝「グラム・・・?」

 

ミラ「そう。何か仕掛けて来るのなら混乱の中で、と思っていたのだけれど・・・やっぱり此処何かあるのね」

 

グラム「相手の装備は統一されていましたが、動きは少々ぎこちない感じで、一人ひとりの練度はまばらという所ですな。あれでは集団戦というより個人戦の方がまだマシでしょうな」

 

ミラ「猟兵の線を疑っていたけれど、もしかして騎士団の類だったりするの?でも騎士なんて相応の大義名分が無いと動かせないわよね」

 

グラム「いわゆる非正規の、と頭に付けば大義名分が無くとも問題無いのでは?近世の強盗騎士の様な」

 

ミラ「雇われの傭兵って事?・・・確かにそれもありえそうだけど、金銭の授受は足が付き易いからリスクが高いのよね。奴らがそれで妥協するとは思えないし」

 

ミラとグラムが他二人を蚊帳の外に話し込み始めた訳だが
黒威は瓦礫の上で恐らく胡坐をかいて、恐らく頬杖をついて、恐らく寝始めた
全身真っ黒いのが原因で全ての行動の頭に「恐らく」が付いてしまう
一方剣帝は突然現れた骸骨騎士に対して百面相になっていた
しきりに「まさか」とか「いや、そんな事は」とか小声でブツブツと呟いている
先程判明した剣帝の悪い癖、思考の沼である
そして自分の中でそれなりの結論が付いたのか、恐る恐るだが意を決して口を開いた

 

剣帝「が、骸骨騎士殿、会話中失礼を承知で伺うが・・・あ、貴方は剣聖グラム=バテレイト様であらせられられますか?」

 

緊張し過ぎてちょっと噛んだ
これにグラムは静かに、そしてサラリと

 

グラム「確かに儂はグラムだが。ふむ、剣聖の称号を出すという事はお主がかの剣帝という者か」

 

剣帝「わ、わわわ、私を知っておられる!?じ、若輩の身ではありますが、剣聖殿の武勇伝は寝物語としても有名で、私も剣聖を目指しておりまして、大戦での功績も輝かしく思っていて!」

 

もう支離滅裂
文法も何もありゃしない
頭に思い浮かんだ単語を我先にとくっ付けてしまえば、意味も順番もとっちらけな文章になるに決まっている

 

グラム「まあ落ち着け。お主がこの国の現在最強の剣士だという事は聴き及んでおる。強いというなら一度戦ってみたいと、儂も思っておったんじゃ」

 

剣帝「け、剣聖殿に知られているだけではなく、し、ししし、仕合ってみたいと・・・!?っこ、このジュネーサ=アラトリオン、大歓喜で身が震える思いで!!・・・っぐ、ぐぶぶぶぶ」

 

ミラ「うわぁ」

 

これにはミラもドン引き
剣帝は感情が振り切れ過ぎて過呼吸になり、終いには口から泡を吹き始めた
さしものグラムもこれには超絶焦る
現場はカオスの様相を呈していた

 


第二十八雨
「動き出す闇、昏倒する王」

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