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私が居た場所はイオと呼ばれる自由都市らしい

暗きイオ、貴族達が集まる夢と希望と欲望の街

欲望が無いと言えば嘘になるけど、私は貴族じゃないから彼等の気持ちは解らないと思う

ただ私は此処でやらなければならない事があるから来ただけ

そう、それだけ・・・の筈だったのに

 

ソフィー「何で無いかなー」

 

向かい合わせの座席に背中を預けながら一人呟く

この国で行動する為には一時的な住居が要る

祖母が昔住んでいたという屋敷を使えばいいやと、安易に考えていた私は目の前に座る少女から衝撃の事実を聞かされた

 

少女「仕方が無いでしょ?人の住まなくなった屋敷は年を経る毎に朽ちていくのだから」

 

私の何気ない呟きが聞こえたのか、少女は静かに言った

そう、屋敷はもう無いのだ。政府役所で聞いたので間違い無い

悉く潰され、骨組みすら存在しない更地になっているという

途方に暮れる私に祖母の知り合いの娘だという目の前の少女が、ウチに来ればいいと名乗り出てくれた

少しおかしな話の展開ではあったけど、まさに渡りに船、捨てる神あれば拾う神あり

車で送ると言われたけど、そこまでされると申し訳無かったので住所だけ聞いてその足で向かった

・・・と、そこまでは良かった

 

少女「貴女、方向音痴でしょ」

 

ソフィー「仰る通りです」

 

そう、方向音痴なのである

地図を見ても頭にインプットされないし、そもそもあまり地元から出る事も無かったのだ

降りる駅を間違える事は無かったし、幸い役所が駅から近い所にあったのでそちらは問題無かった

問題はそこから先。実際に歩いて覚えないとさっきの様になる

 

少女「はぁ・・・まあ、明日からは私が一緒について回るから大丈夫よ」

 

ソフィー「ありがとうございます、お嬢様」

 

少女「フィーナでいいわ。それと敬語は要らないって言ったでしょ?ウチに居る間は友人として居て貰うんだから」

 

そうなのだ。目の前の少女・・・フィーナは、住む所を提供してくれたばかりか、この国で最初の友達にもなってくれたのだ

それはとても嬉しい事だ

でもその反面、何故初対面の私にそこまでしてくれるのかが全く分からない

単に同情からなのか、それとも別の理由があるのか

 

フィーナ「何を考えているのかは知らないけど、見えてきたわよ。今日から貴女が住む家が」

 

言われて窓の外に目を向けた

針葉樹に囲まれたお城の様な家

いや、これはもうお城といっても差し支えない

 

ソフィー「し・・・」

 

フィーナ「し?」

 

ソフィー「白いっ!」

 

フィーナ「・・・・・・他には?」

 

ソフィー「んー・・・大きいっ!」

 

フィーナ「あのねえ」

 

フィーナはジト目で私を見たけど、それ以外の言葉なんて何にも出て来ない

それ程白くて大きいお城の様な家だった

 

 

第三雨

「それは雪のように白く」

 

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