ソフィー「あの大破壊からもう一週間か・・・」
フィーナの城にある宛がわれた部屋のベッドで横になり、縦にした枕に顔を埋めながらソフィアは独り言ちた
そしておもむろに溜息を一つ吐くと
ソフィー「私あれだけ啖呵切ったのに何もしてなくない?」
軽い気持ちで真理に到達した
そう、何もしていないのである
姉が昔住んでいた屋敷の地下で物凄い啖呵を切り、まるでこれから大立ち回りをするかの如く意気揚々と飛び出した訳だが
結果としては逃げる住民の避難誘導をしただけに過ぎなかった
しかもその後雑談もしていたので減点2である
ソフィー「う゛~、やっぱり途中でお父さんと別れたのが原因だよ~!」
盛大にすっ転んだ時に頭からダイレクトに地面に突っ込んだので、少し休めと言われ置いて行かれたのである
父親としては怪我をした娘(超軽傷)を連れ歩くのもどうかと思った故の行動なのだが
娘としては置いて行かれた、という思いの方が強かったのである
そもそも初めて訪れるであろう場所にソフィア(方向音痴)が赴いた事自体が間違いではあるのだが
ソフィー「はぁ・・・・・・気分転換に散歩でもしてこようかな」
のそのそとベッドから這い出すと、着の身着のまま部屋から飛び出した
ネガティブな思考を払拭せねば身も心もどんどん沈んで行ってしまう
無理に元気になれとは言わないが、空元気でもいいからポジティブな方向に軌道修正せねばと、街へと繰り出す事にする
フロータードパレスタから離れた地点にある街は、何事も無かったかの様に平穏を謳歌している
噴水の前で空を仰ぐと、何て事無い澄み切った雲一つ無い青空
小さい事でくよくよ悩んでいる自分がアホらしいと思えて来た
ソフィー「よし、悩むのはここまで!取り敢えず美味しい物でも食べて忘れよう」
と、屋台が並んでいる方面に足を向けようとクルリと左に反転した直後
ソフィー「ぶぇっ!?」
「ぬおっ!?」
またもや誰かとぶつかった
よく人にぶつかる子だと、誰かが指摘したとしても私は否定しようがない
注意力が散漫だとか、前を見ていないとか、もうその通りで御座いますとしか言えない
ソフィー「す、すみません。私が前をちゃんと見ていなかったばかりに・・・」
「いや・・・妾も屋台の匂いにつられて心あらずだった故、お互い様であろう」
なんかこれも既視感あるなあ
そんな事を心中思いつつ、ぶつかった相手の方に目をやると
そこには御伽噺の中から出て来た様な見目麗しい美少女が尻餅をついていた
銀糸の髪を後頭部で結い、ゆったりとしたウェーブ状のもみあげを垂らした髪型。確かシニなんとかっていうやつだ
・・・凄いな私。髪型に拘り無いから名前すら満足に覚えてないや
でもあの髪型ってそれなりに長くないと綺麗に纏められない様な気がする
フィーナ程じゃないけど私よりは確実に長そうかも
そんな事を考えていると、美少女はホコリを払いながら立ち上がり、こちらに声をかけて来た
「其方は大事ないか?」
ソフィー「(えらく古風な口調、貴族とかなのかな?)・・・ああ、えっと、大丈夫です!」
「怪我をしている様なら妾の城に請求・・・あ、いや、今のは忘れてくれ。妾はもうあそことは縁を切りたいんじゃ」
ソフィー「はぁ・・・(なにか事情がある感じ?)」
「(・・・ふむ、惹き込まれる瞳をしておる。この娘とは何か縁の様な物がありそうじゃな)」
ケイネ「すまぬ、自己紹介が先じゃったな、妾はケイネという。家名はちと事情がある故明かせぬが、後日何か不備が発生したならば、情報屋テッド経由で知らせてはくれまいか。補償はしかと行うでな」
少女は何事か逡巡するとこちらの目を見てハッキリとそう宣言した
決意というか、覚悟というか、何か強い意志の様なものを感じ取れるそんな目だ
いや、ぶつかっただけなんだけどさ。若干向けられる視線が重いのは気の所為だろうか?
ソフィー「って、情報屋テッド?テッドとお知り合いなんですか?」
ケイネ「む?という事はお主もあの小僧を知っておるのか」
私はかいつまんで説明した
特にお姉ちゃんとかフロータードパレスタの事とかは伏せて
だって私は直接は関係してないし
あ、またちょっとネガティブになってしまった。反省反省
ケイネ「成程のお。あ奴何処の所属にもならんフリーであったからの、そろそろ腰を落ち着けてみたらどうかと勧めてはいたが・・・。ふむ、人生を捧げられる主が見つかったのは良き事じゃ。フフ、他人事ながら我が事の様に嬉しいのお」
笑う姿も絵になるなあ、とソフィーは思った
額縁で囲えばお城や美術館にも飾れるんじゃなかろうか?
ソフィアー「あ、そういえばさっき屋台の匂いにつられたって言ってましたよね?」
ケイネ「む?うむ、この辺りは土地勘が無いのでな。匂いはすれどもどちらの方角から漂って来ておるのか分からんでな」
ソフィー「ああ。じゃあ私と行きます?散歩がてら屋台制覇しようと思ってたんで!」
ケイネ「良いのか?うら若き娘であろうに、この様な老婆にかまけておらんで、同年代の友と青春を送った方が輝かしき想い出になると思うが」
ソフィー「ああ、いえ、友達にも言わないで出て来ちゃったので。それにぶつかったお詫びもありますし」
目の前のやんごとなきオーラで目が曇っていたのか
はたまたこんな美少女とお近づきになりたい欲が鎌首をもたげたのか
ソフィーは少女が投げ掛けた言葉の違和感に全く気付かなかった
というより、身近に似た様なヒトが居たので感覚が麻痺していたのである
傍から見るとおかしく映るものでも、近過ぎれば意外と気付かないものは世の中に沢山ある
それはいわゆる灯台下暗しというやつである
ちなみにその後、屋台は無事制覇された
第三十一雨
「少女と少女?と屋台と縁と」
完
