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城壁、幾重もの城壁

原材料となる鉱石が不明の城壁

内に流るる魔導もまた不明

かつてこの国で起きた戦争が終結した後に造られた強固なる要塞

ローレウル十三廻廊とは、肩書きではなく真にその要塞の事を指す

トウマの国では「13」は古くより「不滅」の意味で扱われる

 

「へえ、珍しい。何時も忙しいって来ないのに、如何いう風の吹き回し?」

 

少女の様な声をした女性が言う

虎の皮をマフラー代わりに首に巻き、大型の鉄塊を背負い柱にもたれている

釣り上がった目は獣の様な雰囲気を纏い、まるで獅子かと思わせる髪色をしている

女性の問いに対面に座る男が答える

 

「今日に限って早く終わったのでね。それで?今回の召集は如何いった用件なのだ、テイカー卿?」

 

テイカー卿と呼ばれた青年は手を組みながら静かに答える

 

「災終血凍に動きが見られた」

 

「あの小娘が動いただけで俺達は呼ばれたのか?はっ、召集するならもう少しマシな理由にしろよな」

 

青年が言うが早いか、足を乱暴にテーブルに投げ出した少年が悪態を零す

しかし、その態度に何のお咎めも無く、青年はまた静かに答える

 

テイカー卿「彼女をあまり過小評価しない方がいい。現在は城を捨てた身ではあるが、かつてこの世の真実に至った者の子孫だ、どの様な秘奥を隠し持っているか分からない」

 

「それはテメエも同じだろう、ストール。いや、そこのオッサンもネエちゃんも腹に一物持ってそうに見えるぜ?」

 

少年はケケッと嘲笑う様に笑う

それは悪戯を思い付いた子供の様な顔だった

 

「ああ゛?何の証拠も無しに人疑ってんじゃねえぞ、クソガキが。ケンカ売ってんなら、今ここで細切れにしてやってもいいんだぜ?」

 

背負っている鉄塊に刺さっている棒に手を掛けながら言う

よく見ると鉄塊は幾つもの不揃いのパーツが集合して形作られている

こういう物を通称『パズルブレイド』と呼び、その扱いの難度から使い手は希少とされる

 

「サザンカ、刀を仕舞え。其処は私の圏内でもあるのだぞ?」

 

サザンカ「っ、流石のアタシでも剣帝は相手にしたくねえしな」

 

剣帝「お前もだシュヴァルツァ、災終血凍は我が廻廊内で最も極高位に近い者。些細な事で頭に血が上るお前では足元にも及ばん」

 

シュヴァルツァ「はっ、俺の力にゃ誰も抗えねえよ」

 

ストール「君の力も気になるが、本人に訊く事はルール違反だしね。まあ、今回の召集はこれで終わりという事で」

 

ストールと呼ばれた青年はそう告げると、静かに席を立って部屋を後にした

それに続く様にサザンカ、剣帝、シュヴァルツァの順に部屋を去って行く

そして部屋はシンと静まり返り、

 

「・・・・・・災終・・・血凍・・・」

 

物陰に潜む真っ黒なヒトガタが発した呟きしか残らなかった

 

 

第四雨

「13」

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