緩やかな坂道を下り街の広場に差し掛かった
真ん中に噴水がある石畳の広場
噴水を囲む様に木製のベンチが設置してあり、お爺さんが座っていたり野良猫が眠っていたりしている
それらを眺めていると突然声を掛けられた
「誰かと思えば嬢ちゃんじゃねえか。前回からそんなに日ぃ開いてねえけど、何か要りようかい?」
声を掛けてきたのはフィーナと同じ位背の高い男性
首元の開いたパーカーを着ており、動き易いカーゴパンツを穿いている所為か少し軟派に映る
勿論それは偏見であるのだが
フィーナ「あら、テッドじゃない。この辺も貴方の行動範囲内だったのね」
テッド「いやいやいや、それだとバーと家だけが俺の全てみてえじゃねえか」
フィーナ「だって貴方、家で寝てるかバーでお酒飲んでるかだけじゃない」
テッド「・・・まあ、否定はしねえけどよ。それはそうと、そっちの嬢ちゃん見ない顔だな?どっから来たんだ?」
いきなり話を振られた
話を聞く限りだと如何やらフィーナの知り合いの様だ
であるならば、ここは話を合わせておくべきだろう
ソフィー「えっと・・・と、遠くの方」
流石にこれは無いだろう事は瞬時に理解した
成程、私にはその手のスキルが備わってないらしい
テッド「遠くねえ・・・・・・ここより遠くっつーと、トラストラルか?」
聞き慣れない単語が出た
よくは分からないがこの辺りの街の名前なんだと思う
でも私の生まれた街はそんなオシャレ~な名前ではない
「何してんだテッド、こんな広場じゃあ情報買う奴なんて・・・あ゛?お前も一緒かよ」
また一人増えた
今度は燃える様な赤毛の男性
白のワイシャツに群青色のネクタイを締め、肩にジャケットを掛けた姿は仕事帰りのサラリーマンを想起させる
テッド「おうレリクス、聞いてくれよ。この嬢ちゃん遠くの方から来たって言ってんだけど、やっぱトラストラル辺りかな?」
レリクス「はあ?トラストラル程度じゃあ、そう遠くねえだろ。ツァード辺りが関の山だっての」
テッド「いや、でも、嬢ちゃんの反応からしてもっと遠くっぽいぜ」
レリクス「ああ゛?ツァードより向こうっつったら・・・・・・もうタクワカの森しかねえだろうがよ」
どんどん分からない単語が出て来る
隣にいるフィーナに小声で訊ねてみると、トラストラルはもう完全に田舎
ツァードはそれよりも田舎であり、辺境といっても差し支えない位置にあるらしい
そしてタクワカの森なのだけど・・・
テッド「森越えて来たってのか?央都直属の騎士団だって入る事をためらう踏破不可能の森だぜ?」
レリクス「ああ、何でも噂では入る度に内部の構造が変わるらしい。昔どっかの馬鹿が魔導で造ったとからしい」
テッド「それが本当なら、この嬢ちゃんかなり凄えんだけど」
何かキラキラした目で見られている
誤解なんだけど切り出せないみたいな感じ
まさに今がソレ
第七雨
「誤解も六階もあるよ」
完