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突如現れた女性・キリガラは一直線にソフィアに疾駆すると、手首に備え付けられたブレードを一閃した

姿を確認した瞬間に言い知れぬ危機感を覚えていたので、それを間一髪の所でかわす

その行動にキリガラは薄く微笑むと、今度は両手のブレードを互い違いに振り始める

避けられない速度ではない。が、逃げられる様な隙も無い

後ろを見せれば即座に斬って捨てられるだろう

 

フィーナ「ソフィー!今コルネリアを呼んで・・・きゃあっ!!」

 

フィーナの方向に顔を向けられないので状況は分からないけど、如何やら何らかの投擲武具を投げつけられたらしい

直後に尻餅をつく音とコルネリアさんの声、無事を伝えるフィーナの声が途切れ途切れに聞こえた

 

キリガラ「あのメイドは我でも少々梃子摺るのでな、暫しの間無効化させて貰う」

 

ソフィー「こっちに来て初めての友達なんだ。こんな些細な事で一生残る様な傷を付けさせたくない!」

 

キリガラ「案ずるな、髪の毛が数本無くなった程度だ。掠り傷一つ付いていないさ」

 

尚もその閃撃を止めず答える

正直喋りながらの回避は集中力が大いに削がれる

尤もそういう修行も必要だと祖母や父から教わっていたので、苦とも思ってはいないけど

それでも現状は変わらず、また私には武器が無いという事も問題だった

その事を歯痒く思っていると、突然キリガラは動きを止めると一足飛びに後退した

 

キリガラ「・・・・・・」

 

ソフィー「突然如何したのさ?試しってのが終わったんなら、それに越した事は無いけど・・・」

 

相手の事を窺いながら自分の状態を確認する

大丈夫、息切れは起こしてない

五体も満足だ、これならまだいける

相対するキリガラは不意に空を見上げると、ソフィアに言葉を投げ掛けた

 

キリガラ「今この街を覆うコレは、暖かく湿った空気が水柱で冷やされた事で起こった現象だ」

 

ソフィー「うん、俗に言う移流霧ってやつだ」

 

キリガラ「霧は我が力の源。だが、霧もまた大いなる現象の一部にすぎない」

 

ソフィー「言ってる意味が解かんないな。それが私を試すのと何の関係があるの?」

 

キリガラ「大本を雲とする我と貴様が揃う事で条件は整った。もう一度言う、貴様の力を試させて貰うぞ・・・雨巫女!」

 

ソフィー「ああ、成程。得心が行ったよ」

 

本当は出合った時に解っていたのかもしれない

キリガラの言葉の意味。それが示す私と彼女の関係

霧に包まれた街では誰も気付かなかったが、空からは何時しか雨粒が降り始めていた

 

 

第九雨

「雲の眷属」

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