ドーファ「ジイさん、配置は完了したか?」
少し遅れてグラムの声が聞こえる
グラム「・・・うむ、しかしミラ様も考えたものであるな」
リーガル「ああ、裏から二隊による奇襲・時間稼ぎ・陽動をして、その隙に別働隊を地下から潜り込ませるなんてな・・・天獄の姫も凄え事考えやがるぜ」
廻廊本部に地下がある事を知る者は
ミラと先代邪心聖母とケイオスだけである
この場合のケイオスとはグラムの妻にあたる本物
この伝令手段もミラが考えた策である
テーゼをフルバックに置き、能力の副産物である風を用い
大気を触媒として伝播させる事により
作戦本部に駐留しているドーファの指示を皆に伝えるという物である
ミラ「工音都市で風依伝播と言われている方法よ」
ソフィア「ミラの言う事はたまに解んない時があるわ」
心配するな、みんな大体で理解してるから
因みに電波伝播ともいう
準備が整ったという所でミラは後ろを振り返る
視線の先に居るのはアリューダ
最初から最後まで口を噤んでいた彼女に
ミラは何を言うのか?
それは勘の良いドーファには解っていた
アリューダが・・・何者なのか、という事を
ミラ「行かなくていいのかしら?」
アリューダ「え・・・?」
ミラ「後悔しない?」
アリューダ「私は・・・・・・私なんかが行っても・・・」
ミラ「貴女が側に居ないと、グラムは『また』元に戻ってしまうかもしれないわよ」
アリューダ「・・・あの人のあんな姿は、もう、見たくありません」
声を絞り出す
それは見てきたから言える事
共に居たから言える事
何時までも一緒に居たいから言える事
ミラ「だったらしっかりしなさい。貴女はリベリア=バテレイト、グラムの唯一無二の妻でしょう?!」
アリューダは・・・いや、リベリアはその言葉を聞いて
ハッとした様に顔を向ける
ミラ「馬鹿ね、知らないとでも思ったの?」
リベリア「ミラ様・・・」
ミラ「ほら、行って来なさい。貴女はその為に還って来たんでしょう?」
リベリア「・・・はい。行ってまいります!」
その後ろ姿を見送りながら
ふとミラは思い出す
何時かの少女は独りだった
でも今此処に在る少女は
あの時とは違い、心だってあるし居場所だって見付けられた
それが素直に嬉しいと思えるし
反面寂しくも思えた
ミラ「(束の間の夢というのがこれなのかしらね)」
髑髏の騎士の隣りにひと時でも居られた夢
それはこの地に降り立った時以来
初めての最高の幸せな夢
第二十五骨
「天獄の姫」
完
EDテーマ
イメージ:Forフルーツバスケット(フルーツバスケット/岡崎律子)