「充、突然だが我は今逃げ出したい気分になってきたぞ・・・」
充「逃げ出したいって・・・。あ、でも僕もさっきから何か予感めいた物を感じます・・・」
如何やらマスターは原因の分からない恐怖を感じているらしい
恐怖なんて断罪皇帝を知っている人からすれば戯言だと思うだろう
だけど如何に最強の存在でも完全じゃない。見付かり難いけど何かしらの弱点はある
それが今、音も立てずに忍び寄って来ている
不意にガチャッと玄関の扉が開いた
「ぬ、何故誰も居らぬのに扉が開く?!」
充「今日は祝福さんも来ない筈ですけど・・・」
祝福戦神。断罪皇帝と肩を並べる永窮冠獄・三強の一人
その人も今日は来る予定などは無い
ならば何故扉が開くのか?
「・・・ん?扉が開いた形跡が無いぞ?」
充「え、でもさっきガチャッて・・・・・・っ!?」
「む、如何し」
急に声が消えたので不審に思い後ろを向いた
瞬間動きが固まった
・・・そこには断罪皇帝の天敵が居たからだ
「ああん、やっぱり断罪ちゃん可愛い〜!!」
「き、季由香!?貴様いつの間に?!」
季由香と呼ばれた少女は断罪皇帝をその胸に抱いて恍惚とした表情をしている
出来る事ならお近づきにはなりたくない表情である
そして何かに気付いた様に一言
季由香「あれ?居たの、お兄ちゃん」
充「さっきから居たし、気付くの遅いよ季由香」
そう・・・僕、片那充と目の前の少女、季由香は兄妹なのだ
この兄にしてこの妹とは神様は何を考えているんだろうとたまに思う
しかもこの季由香は僕以外で唯一マスターの正体を知っている人間だ
因みに季由香はどちらのマスターも好んでいるらしく、鎧を着ているマスターは結婚したい程好きで、今のマスターは抱きつきたい程好きらしい
その結果がこれなんだけど・・・
「ええい季由香、貴様・・・そろそろ離せ!」
季由香「ああん、怒ってる断罪ちゃんも可愛い〜!私濡れちゃうかも〜!!」
「何を満面の笑みで口走っとるか貴様はっ!?」
マスターは季由香のあまりにもな変態的言動にドン引きだ
それを視界の端に置きつつ僕はお茶を飲む
ああ、何だかんだで慣れてるなぁ僕
「妹はしっかりしてないのがデフォ」
完