top of page

斐綱「これより準々決勝第一回戦を始めます!克己・光太郎選手VS嵐選手、互いに揃って入場です!!」

 

遂に準々決勝まで物語が進んだ

ここまで長かった様な短かった様な微妙な感じだったが、いざ迎えてみると感慨深い物である。多分

 

ケーロス「俺の相手は女の子が続くなぁ」

 

嵐「女の子なら手加減してくれるのですか?」

 

ケーロス「確かに女の子を殴るのは男として如何かと思うが、戦士が手を抜くのも如何かと思うんでな」

 

嵐「あら恐い。それでは私も戦士らしくお相手しましょうか」

 

ケーロス「来な!アンタの竜巻、俺の拳で吹き飛ばしてやるよ!!」

 

試合開始の合図が鳴った

直後、二人は同時に地を蹴り肉薄する

片や拳、片や剣。そのリーチの差は言わずとも分かるだろう

それでも気にした風も無くケーロスは拳を振るう

彼の銀色の甲冑は並みの攻撃ではビクともしない

ノーガード戦法は正直しない方だが、先程の骸骨剣士の戦い方を見てからその考えは少し変わったらしい

防御を捨てて懐に飛び込む。そしてがら空きの腹にでも一発叩き込めばいい

 

嵐「自らの纏った鎧を過信し過ぎではないですか?」

 

嵐が振るった右腕は正確に1mmのズレも無く鎧と鎧の間

つまり関節部分に吸い込まれていく

その事に途中で気付いたケーロスは即座に右肘を打ち下ろした

それと同時に右膝を上に突き出し、丁度白羽取りするかの様に剣を受け止めた

嵐は隙間から覗く肉の瞳と目が合ったが、すぐに目を逸らして次の攻撃モーションに移る

関節を狙おうとするとまるで見透かしているかの様に防がれる

これが本当の直感という物かと心中で驚いた

戦場で何度か見た事があるがそれとは何か違う。戦場では極限状態である時に発現すると言われているが、この男の場合は元から持っている潜在能力みたいである

 

ケーロス「時空超越・・・」

 

如何やら短期決戦に持ち込む気な様だ

だがこの男の直感、戦場で相手をした事がある誰よりも見切り易いのもまた事実だった

 

嵐「嵐王―――極界閃!」

 

白槌戦で見せた物よりも遥かに巨大な竜巻がケーロスを襲う

嵐王極界閃。その技は白帝が使う時よりもオリジナルに近い

竜巻による上昇気流で相手を空高く舞い上げ、八体の分身により文字通り斬り裂くのである

しかも空中という事もあって全て避けるのは至難の業

まさに嵐を従える王に相応しい技と云える

 

ケーロス「これは流石に予想してなか・・・のわあっ!?」

 

胸の前で両手をクロスに防御体勢に移っていたが、あまりに風力が強過ぎて両足が地面から離れてしまった

そこを見逃す嵐ではない。即座に八体の分身を作り、ケーロスを中心に丁度米の字に配置する

その陣形が成された瞬間、地上で見ていた蒼麻は確信した

ありゃ完全に詰んでる、と

無論他の観客達も解っていたが、口に出すのも吝かだろうという事で噤んだ

ただしその直後の事は予想外だったらしく・・・

 

一同「・・・あ゛」

 

メキョッとかグシャッとかの擬音が似合いそうな落下が待っていた

そりゃあ身動きの取れない空中で攻撃されれば否応無く落下するだろうさ

問題は受身が全く取れなかったというだけ

常人ならその時点で首の骨が折れてご臨終である

しかし彼も人外ではないにしろ強固な甲冑を身に纏った者であるので、そう簡単に死に至る様な事にはならない

事実バトルフィールドに犬神家よろしく首が刺さっている状態で元気に呻き声を発しているのだ

 

ケーロス「(くぐもった声で)いやマジ偉い事言ってすいませんでした。不躾なお願いなんですが引っこ抜いていただけませんでしょうか」

 

嵐「仕方の無い殿方ですねぇ」

 

ズボッと、それこそ大根か何かを抜くかの様に引っこ抜いた

 

ケーロス「ごはあっ!!・・・はぁ、土中とか洒落にならん・・・」

 

斐綱「えーっと・・・・・・試合の方は如何しますか?」

 

ケーロス「や、火を見るより明らかなんで俺の負けでいいです」

 

顔中を土まみれにしながらケーロスは敗北を宣言した

観客も「まあ、そうだろうな」という風に納得した

 

続け 

bottom of page