先程の試合を見ていた蒼麻は思いの外冷静だった
蒼麻「・・・流石は真崎さんだな。一介の人間が神を憑依させてるなんて普通分かんないよ」
蒼麻は昔真崎謙悟に助けられているのでその強さは身に染みる程理解している
そしてその事実は言うなれば凄く戦いたくないという結論に至る
正直、規格外クラスよりも下位の自分が、その規格外を圧倒する存在を相手に出来るかと問われれば絶対無理と言う
言葉を変えるなら無謀だとも言えるだろう。それ位無理である
しかしそれが解っているとしても棄権等出来ないのだ
だって主催者の関係者でもあるし、そもそもの元ネタの発案者でもあるからだ
今になって過去の自分の発言を呪った
しかし如何やっても過去は変えられないから諦めるしか道はない
蒼麻「何かもう悲惨を通り越して絶望しか感じねえよ」
自分は何で逆シード的な位置に居るんだろうとか考えてみたし、準決勝で白帝が万に一つの確立で勝つかもしれないとか考えてみたが結論は最初から一択しかない
真崎さんは白帝を軽く倒して俺と戦う事になる。俺は首を洗って待つしかない
その選択肢だけだ。いやもう選択肢ですらない
試合中に赤から肩をポンと叩かれてご愁傷様とか言われたが、まさにその通りなので何も言えなかった
ずっと憧れていた人の強さの意味が知れたのは素直に喜ぶ所だけど、それ以上の現実が俺の両肩に重くずっしりと乗っかった気がする
白帝「師匠」
蒼麻「・・・ん、おう、白帝。如何した?」
白帝「大丈夫ですか?お顔が優れない様ですが・・・」
蒼麻「・・・・・・一つ聞いていいか」
白帝「?、はい、何でしょうか」
蒼麻「真崎さんと戦うの、恐くないのか?」
はっ、師匠がこんなんで如何するんだか
こんな気弱になってるトコを弟子に見せる様じゃ師匠として失格かもな
しかしそんな俺の問いに白帝はさも当然の様に言う
白帝「恐いですよ、恐いですけどそれは当たり前の事だと思います。未知の存在に怯えるのは人間として生きているという証拠になりますから」
蒼麻「・・・・・・」
正直言って驚いた
そこまで説明出来るというのも驚いたし、自分の事を人間だと言う事に一番驚いた
自分は人外だと長い間思ってきた。化け物だと言われてきたから自分は人間とは程遠い存在なのだと思っていた
だが目の前の少女は自分達の事を人間だと言った
それは言われ慣れていない単語だった
自分は生まれた時から人外。それでも何故か今の言葉が嬉しいと思えた
白帝「あの・・・師匠?」
蒼麻「ありがとな、白帝。感謝してもしきれないけど・・・それでもありがとう」
白帝「はぁ、お役に立てられたのなら嬉しい限りですが・・・」
何が何だか分からない白帝はポカンとしている
俺はその頭をゆっくり撫でる
まったく・・・弟子に教えられるなんてな
駄目な師匠で申し訳無いと思うのが半分、成長を嬉しく思うのが半分の何とも変な気分になった
続け