斐綱「さあ、Aブロック一回戦が始まりました!『兄弟殺しの槍使い』セルキナ選手VS『トワイライト』克己・光太郎選手、互いにバトルフィールドに入場っ!!」
それなりの距離を保って両者は互いを見た
片や少女、片や青年
と、青年が口を開いた
光太郎「お嬢ちゃん、心配しなくてもちゃんと手加減してやるからな」
セルキナ「・・・・・・」
光太郎「聞く耳持たずかぁ。最近の子は冷たいねぇ」
苦笑しながらバックルに右手を伸ばす
バックルの表面は五指全てを感知し、淡い光を放つ
そして光太郎はその言葉を叫ぶ
光太郎「変神!」
瞬時に彼を取り巻いていく銀色の甲冑
最後に顔全体を覆って変神が完了した
先促者ケーロス。それが変神後の彼の名前だ
ケーロス「悪いな、これが俺のバトルスタイルでね」
拳を握りファーティングポーズを取ったケーロスは、未だ動かぬ少女に言った
その直後、セルキナが動いた
否、ケーロスが後ろに飛びずさった
ケーロス「っぶねえ!もう少し反応が遅れてたら刺さってたぜ」
セルキナが無駄の無い動作で槍を振るったのだ
それはケーロスの仮面の真ん中を狙って放たれたもの
人間の動体視力を凌駕する一撃を放った上で避けられたのは、偏にケーロスの類稀なる直感による為である
その動作を見ても尚、セルキナはただ静かに
セルキナ「遅い」
そう言うだけ
その試合を遠くから見ていた赤が呟いた
赤「成程な、あの槍が『兄弟殺し』と言われるだけの事はあるな」
蒼麻「知ってんのか?」
赤「人類がその歴史の中で一番最初に犯した罪が、カインとアベルの兄弟殺しと云われている。あの槍の名はそのどちらかの名を貰ってるっていう噂だ」
蒼麻「へー」
邪狼「(ロンギヌス・オブ・カインか。・・・確か中世時代に担い手が存在したと聞いたが、つまりは彼女がその担い手という事か)」
斐綱「さあ、両名対峙したまま一向に動こうとしません!これは様子を見ているのか、それとも何か作戦を練っているのかあっ!?」
司会の叫びが会場に響き渡る
バトルフィールドに立つケーロスは、その声を完全にシャットダウンする
目の前の少女はかなりの使い手と見た。その彼女の隙を突いて勝つには如何すればいいか
考える。己が今までに繰り広げてきた戦いを思い返しながら考える
そして、答えを見付けた
それはセルキナの乱舞が始まり、終わった瞬間だった
セルキナ「っ!?」
先程まで自身の槍による攻撃をその身に受けていた相手がその場から消えたのだ
足音など聞こえなかった
後方へ回り込んだかと思ったが、それは得策ではないと切り捨てる
確かに後方は死角なのだが、槍はなにも穂先だけが攻撃手段ではない
持ち手である柄だって攻守ともにかなりの信頼性がある
ならば上方か?いや、空中では回避が出来ないからこれも無しだ
では何処へ行ったというのか?
その答えは・・・
ケーロス「残念、真後ろだ」
その言葉で明らかとなった
空間が歪む
何かに捩じ曲げられたかの様に孔が開き、『ケーロスの左足』が現れた
ケーロス「時空超越」
セルキナ「あぐっ!!」
そのまま蹴り飛ばされてバトルフィールドの外に落ちるセルキナ
ケーロス「手加減したから安心しな、5分程度で目は覚める」
駆け寄る少年にそう言い、変神を解く
斐綱「試合終了っ!克己・光太郎選手は二回戦に進出決定です!!」
続け