蒼麻「やべえな、中の様子が全っ然分かりゃしねえ」
赤「いかに人外の眼をもってしても煙幕はなぁ・・・(苦笑)」
そう、充の策とは煙幕を張る事だった
しかしその程度の事がかの断罪皇帝に通じる筈も無い
誰もがその考えに行き着いていた
だが断罪皇帝もまた人外である。外から見えない物を内から見る事など出来るだろうか?
答えは無理の一言である。現に断罪皇帝は充の姿を見失ったのである
断罪「考えた物だ、まさか煙幕で姿を隠すとはな。だが、見えぬのはお前も同様!」
断罪皇帝は視線を彷徨わせる
突然の事態にも遅れる事無く動く為だ
そして予想通りに充はこちらに走って来た。しかも真正面からだ
断罪「正面突破など10年早いわ!」
言うが早いか業螺殲で薙ぎ払う態勢に入る
劫等穿「デュアル・セパレーション!」
断罪「小賢しいわ!!」
直前でもう一体分身を作ったが、それすらもまとめて薙ぎ払う
二人の片那充は跡形も無く掻き消える。二人ともである
その違和感に。分身は片方だけだと勘違いしていたという事実に気付くのに、そう時間は掛からなかった
だが時間が無かった訳ではない
その一瞬の時間をチャンスに変える事により、充の策はようやく実現する
断罪「ぐっ、二体の分身による囮か!ならば本体は・・・」
劫等穿「シャドウ・ハイド・・・影に潜み影の如く気取られぬ内に動く」
充「これでチェックメイトです、マスター」
何時の間にか後ろに移動していた充が、断罪皇帝の鎧の一部を回した
すると如何した事か。あんなにも堅牢だった鎧が音を立てずに消えて行くではないか
そうして中から現れたのは、如何見ても幼女。しかもショーツを穿いただけの半裸
幼女「な、なななななっ(////」
充「マスター、僕の作戦勝ちです」
幼女は顔全部を真っ赤にさせたまま充に掴み掛かった
色々見えているが、今はそんな事を気にしている場合ではないのだ
幼女「お前という奴は何をやっているのか分かって・・・むぐぅ!?」
充「大声出したら皆さんにバレちゃいますって!」
幼女「むぅ・・・それは我のプライドが許さん。だがそれはそれ、これはこれだ。鎧が無くともお前位赤子の手を捻る様な・・・」
充「もうご飯作りませんよ?」
幼女「うぐっ」
それはもう清々しいまでに無慈悲な言葉だった
充「お風呂も一緒に入りませんし、髪を梳く事もしませんよ?」
無慈悲な言葉が三連続で突き刺さる
幼女「そ、それはかなり嫌だ」
充「それじゃあ如何します?」
ああ、今はこの笑顔が凄く心に刺さる
しかも土足で何の断りも無くズカズカと入って来たのに、それを無碍にも出来ない己が居る
というか、すると破滅する。主に生活面が
幼女「・・・・・・分かった」
煙が晴れると、さっきまでの事態も何のそのと重厚な鎧を身に纏った断罪皇帝がいた
そして静かに放たれる一言
断罪「口惜しいが、我の負けだ」
本当に口惜しそうに言う
鎧の下では密かに涙目である
斐綱「え、ええっとー、一体あの煙の中で何が行われていたのか激しく気にはなりますが・・・これにてBブロック一回戦終了!勝者の片那充選手は二回戦に進出決定です!!」
静まり返っていた会場が一気に歓声に沸いた
それもその筈、優勝候補として囁かれていた断罪皇帝をイレギュラーが倒したのだ。歓声が沸かない筈が無い
が、直後の充の言葉で再び静まり返る
充「・・・あ、僕棄権します」
一同「えええええ~~~~~~~~~~~!?」
ともに会場を後にする二人の後ろを見ながら、しばし会場中の人間が口を開けたまま固まった
続け