top of page

嵐の体はデバイス・黒の剣との不完全な融合の為に、他の姉妹とは明らかに違う特徴を持っている

それが四肢の物質変換機能。疲れを知らぬ機械の足と何をも引き裂く変幻自在の腕

その姿は彼女本来の美貌と相まって異様さを引き立たせていた

そんな体故か妹達を守る為に戦場を駆けた

異常とも呼べる日常の中で彼女は一人の男と出逢った

その人に言われた言葉。その言葉は彼女にとって忘れられない思い出。戦い以外で自分を必要としてくれる人が居る事をその時初めて知っ

だから、彼が見ている前で負ける訳にはいかない!

 

嵐「貴女はいいですね」

 

それはただの独り言の様な物

でも誰かに問い掛けている様にも思える

その言葉に白槌は動きを止める。構えは解かない、戦いの最中にそんな愚行は犯さない

 

嵐「血は繋がっていなくてもあの人の娘である、その事実は私にとって堪らなく羨ましい事」

 

言いながら俯く。その表情は計り知れない

もしかしたら微笑んでいるのかもしれないし、泣いているのかもしれない、妬んでいるのかもしれない

 

嵐「あの人の隣に立ちたい。あの人の支えになりたい。あの人と共に生きたい。私は何時もそれだけを想ってきた」

 

嵐「・・・でも、想うだけでは何も始まらない。だから試合が始まる前に言いました、私を応援して下さいと」

 

白槌は再び攻撃を仕掛け始める

自分には関係の無い事だから。自分にとって「あの人」は邪魔な存在であり、到底馴れ合う事の出来ない父親

深くは無いが浅くも無い嫌悪感を抱く父親的な存在

多分それは同じ人外でありながら、敵でさえも信じる性格だからだろう

性格なんて物は根付いたらそう簡単に変えられる様な物じゃない。だから嫌悪する

右の拳が頬を掠る。すかさず左の膝蹴りを放つ

銀と紅の輝きを持つ両の腕で防がれる。下方からの斬り返しを、刀身に足を掛けその反動で後方に宙返りしながら回避する

 

嵐「貴女はあの人とちゃんと話をしましたか?一方的に嫌って一方的に距離を開いただけじゃないんですか?!」

 

その言葉は胸を抉った気がした

それでも前進を続ける事はやめない

両肩の表面装甲を開く。内部に搭載されている徹甲弾を射出する

それら全てをかわされると、背部装甲を展開し大口径のカノン砲を出現させる

そこからプラズマ球が吐き出される

それを紙一重でかわしながら嵐は白槌の至近距離まで接近する

 

嵐「それじゃあ只の意地を張ってる子供じゃないですか!子供は子供らしく・・・父親に甘えてなさい!!」

 

右斜め下からの斬撃

いかに外からの攻撃に対して強固な重装甲の鎧であろうと、関節部分を無くす事等不可能だ

動くという事はその動作に必要な空きが必要になる。その部分を斬られれば如何なるか

右腕が飛んだ、続けて左膝から下が、最後に頭が

失った部位から小規模な爆発が起き、白槌(有人式高機動型重装甲)は動きを止めた

腕を元に戻して白槌に向き直る

 

嵐「近々神社を訪れる予定なので貴女も居て下さいね。約束ですよ♪・・・まあ、破る様な事があればその時はお仕置きですけど・・・」

 

口を三日月の形に歪めて冷たく笑う。長い前髪で表情は読めない

白槌の中で葉月は無言で目を閉じる

彼女が自分の気持ちに素直になれるのは何時の事なのか、それは誰にも分からない

 

斐綱「Dブロックの勝者は『ストームブリンガー』嵐選手です!攻撃の余波で会場の各所は破損してしまいましたが、死傷者は居ないのでこのまま続けたいと思います!!」

 

先程の白槌の徹甲弾やプラズマ球が原因であるが、観客に当たる前にその悉くを一人の男により阻止されていたのである

そして司会ももう慣れっこである。何故か体をすり抜けていくし

幽霊なんだから仕方無い

 

続け 

bottom of page