斐綱「えー、Fブロックの試合を始めたいと思います。『通称・正義の味方』超絶魔人選手VS『統屠桜花扇』魔桜・霊武選手、はい、ちゃっちゃと試合始めちゃってねー」
超絶「投げ槍だなオイ!?つか俺は別に正義の味方でも何でもねーぞ!!」
司会に抗議の野次を飛ばす
しかし司会は飛んでくる言葉も何のそのとお姉さんから飲み物を買っていた
最早この会場内で恐るるもの無しといった所だ
いいのか、こんな司会で・・・
超絶「~~~~・・・ああ、くそっ!マジで頭にクる!!」
霊武「そう怒らずとも良いではないか。それにお主の事は手に取る様に分かるぞ?」
超絶「それ本気で言ってんだったら、アンタ確実に頭おかしいぞ」
霊武「信じておらぬな?では訊くが、お主の求めるものは何だ?」
超絶「はっ、そんなの守りたい奴を守れるだけの力に決まってんだろうが!」
霊武「ほお、それではその守りたい者は傍に居るのか?」
超絶「ああ、居るさ。近過ぎて、逆にもう届かない存在だけどな・・・」
霊武「では最後に」
超絶「つか待て、それ絶対後付けだろ?後出しで正解してても信憑性ねーだろ?!」
霊武「では最後に」
超絶「人の話を聞け!!」
霊武「・・・お主の体内を流れるソレは何だ?」
超絶「!?」
その瞬間、超絶魔人は目を見開き一歩後ずさった
それは未知のモノを見る様な目
恐怖でもなく、焦りでもなく、ただただ警戒している
自分や自分の様な者達にとって、その単語は一種のトップシークレット
知られれば殺す事も厭わない
霊武「ソレは・・・流れを見る限りでは金属、か?」
超絶「何でそこまで・・・!?」
霊武「いや、なに、ただお主の内側を垣間見ただけの事。霊視の類の様な物だ」
扇で口元を隠しながら軽く言い放つ
その姿に少しばかりの苛立ちを覚え、超絶魔人は一足飛びで霊武に突撃する
己の知られて欲しくない部分を他人に知られるのは何よりも怖い事だ
しかもその相手が最初から己の力量では太刀打ち出来ないレベルである等と・・・
己の存在理由から全否定された様な気持ちだった
この時はたまたま彼だけに当てはまる事柄だったが、決して彼以外の誰もが当てはまらない事柄がある訳ではない
全ては巡り巡る。全ての事柄、事象、相違点はメビウスリングを回り、終わる事の無い輪廻を回る
人という生き物は知られたくない秘密が露呈するのを最も嫌うのだ
なれば彼の行動も納得出来るだろう
だが、所詮は力の差が大き過ぎるという結論に至るだけ
一匹の虫ケラでは巨大な鯨には勝てないのだ
霊武「散扇・舞桜」
超絶「・・・ぐあぁっ!!」
桜の花びらが体にまとわりつき、そこから連鎖的な爆発が起こった
眺めていた観客達も一様に目を覆いたくなる程の惨状
体の数箇所から黒い煙を立ち昇らせながらも、それでも彼は尚も立ち上がる
何故かって?例え正義の味方で無いとしても、どんなに勝てないと言われようとも、ヒーローは倒れるわけにはいかない
何の為かって?二度も言わせるな!守りたい人が傍に居るから、その守りたい人が居る世界を守りたいからに決まってんだろ!!
超絶「俺は・・・まだ・・・・・・アイツ、を・・・守り・・・」
最後まで言えないまま意識を失い倒れ込む超絶魔人
その姿を静かに見下ろし霊武は言葉を投げ掛ける
霊武「正道では無いが故に邪道を以って正しきを為す。お主のその揺るぎ無き意志、他の者が蔑もうとも吾は賛美する。胸を張り前を向いて生きよ、その道の先にはお主の目指すモノが必ずあるだろう」
「それまで日々精進せいよ?」と残し、魔桜・霊武はバトルフィールドを後にした
斐綱「・・・あ。え、Fブロックの勝者は『統屠桜花扇』魔桜・霊武選手です!」
救護班が足早に超絶魔人を担架に乗せて医務室に連れて行く
あれ程の爆発が起きても立ち上がった彼の事だ。すぐに元気な姿を見せてくれるだろう
彼はヒーローだ。正しき道から外れた本来在り得ぬヒーローだが、それでもヒーローである事を後悔した事は無い
―――それは、まだ彼が幼い頃に形作った心の象徴なのだから
続け