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火花が散る

二人の剣士が己が腕を揮い、儀式にも似た剣劇を繰り返す

鋼と鋼がぶつかる度に音の波は会場中を渡り歩く

訂正しよう、片側の剣は鋼で出来てはいなかった

それは骨、遠き昔に共に戦って散った盟友の骨。骨で出来た剣など珍しい物でもない

しかし現存する多くの骨の剣の中でも、ソレだけは他と違っていた

一つは使い手の身長を遥かに超える刀身の長さ

一見して二倍はあるのではないかと思われるソレを軽々と振り回す様は一種異様な光景といえる

もう一つは明らかに巨大な一本の骨から出来ている事

そこまで巨大な骨を有した生物はこの世界には存在しない

故に、ソレは何よりも異端で何よりも破壊に特化した得物だった

 

斐綱「さあ、試合もいよいよ最後のGブロックとなりました!開始直後から激しい鍔迫り合いを見せている両選手をもう一度ご紹介しましょう!!」

 

斐綱「身の丈以上の大太刀を振るうは『髑髏騎士』グラム=バテレイト選手!それに対するは『白き剣』白帝選手!両者とも剣の腕では他の追随を全く許さない程の攻防となっております!!」

 

司会がグッドなタイミングで紹介してくれた所で少し補足説明すると

グラムも白帝も剣の扱いに関しては師範クラスだと言っていい

経験も技量もグラムの方が当然上ではあるが、白帝には神力がある

神力とは具体的に言えば自身の血に起因した力の事で、神に属する親の下に産まれれば誰もが持ち得る物である

基本的にはブーストの役割を果たし、その都度解放してやらなければ発動はしない

そして彼女の最も得意とするのが『神速』と呼ばれる物である

『神速』とは文字通り『神』の如き『速さ』である

常時神速で行動されればその姿を捉える事は不可能に近いとさえ言われている

この試合、どちらが勝ってもおかしくは無いのである

 

白帝「・・・っはー、はー・・・」

 

白帝は心中で焦っていた

先程からの鍔迫り合いで解った事が二つある

相手の剣士の力が思いの外強いのと、大剣ゆえに打ち返すという事が出来ないのである

もう何度目か分からない鍔迫り合いを繰り返す

受け流すにしろ、いなすにしろ持ち手に対する負荷が大きい

あちらは大太刀、こちらは日本刀。大きさはさる事ながら斬るという動作においての破壊力が違い過ぎる

 

白帝「(何か・・・何か打開策が無ければ、このまま・・・!!)」

 

このまま疲労が蓄積されていけば、気力があろうと否応無く地に膝を付ける事になる

それだけは避けなければいけないと頭の中で何度も何度も言い聞かせ、彼女は再び地を蹴る

目指すは相手の懐。大太刀の重量では一つの動作から次の動作に移るまでにかなりの隙がある、そこを狙うのだ

 

白帝「もらっ」

 

た、と続く筈だった言葉はしかし新たな刀により防がれた

 

グラム「矢張り屠骨では近接戦闘の際に不利になるか・・・」

 

伸ばした腕の先には日本刀に近い姿をした骨の刀

名を『活骨刀・至水』と云う

彼が最も長く使用している刀であり、自慢の愛刀でもある

骨は何よりも硬く何よりも脆い。その刀身に使われる骨が自身に近しい者程強固な物となる

鍛たれる過程で素となった人物の記憶や使い手の想いを埋め込み、何にも勝る武器と成す

 

グラム「この刀では二度と殺生はせぬと誓ったが、今回はあくまで試合であるからな。十全で相手をしようぞ」

 

言うが早いか居合いの構えのまま前に飛び出したグラム

それに即座に対応しようと自らも刀に手を伸ばす

しかし・・・

 

グラム「少々遅い。筋は良いが未だ完成の域ではないと言える」

 

一瞬の交差。最速で振り抜かれた刀は、しかし逆に最速の刀によっていなされた

刀を握る両の手は重い痺れを覚える

交差しただけで、同じ形状の刀と打ち合っただけで、これ程までの衝撃をこの身に受けるとは思わなかった

 

続け 

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