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白帝は形勢が変わらない事に心中で舌打ちした

全ては自らが未熟な所為だという勘違いを内包しているからだ

事実から言えば、白帝は未熟等では決して無い。良き師の下で鍛錬している事を差し引いたとしてもその実力は人並み以上である

だが彼女は自分を未熟だと言う

その心情が少しでも緩和されれば彼女は本来の力を出せるだろう

 

グラム「己の心の状態は体躯に表れる。目もまた然り、お主は今の戦況に対して焦りを感じている様だ」

 

白帝「っ!」

 

図星だ

目を見開き半歩後退りした。そこを突かれた

グラムの振るった刀は正確に白帝の腕へと伸びる

相手に殺しの意思が感じられないとしても、腕を斬りつけられるという事は剣士にとって致命傷になりかねない

何かが宙を舞い地に落ちた

 

グラム「少し目測を誤ったか。いかんな、老いとは無縁だと思ったのだが」

 

クッと薄く笑う

違う、今のは彼なりの遊びだ。体を捩って食い込むのを避ける様にはしたが、それだけでは直撃は免れない

ならば考えられるのは相手が何かをした事だけだ

白帝はその答えに行き着いた瞬間に理解した

今の自分の力では彼には勝てないと

モーンブレイドでもあれば或いは勝てただろうが、大会ルールでは所持していないと使用出来ない事になっている

戦う前の自分は浮かれていたのだ。目標である師匠と戦いたいという願望が前面に出ていて、他の事を全く危惧していなかった

それは自分の間違いだ。たとえ気付くのが遅かったとしても気付いた事実を彼女は誇っていい

 

白帝「(だが、状況は何一つ変わっては・・・これは!?)」

 

先程斬り付けられた腕を見た時、解決の糸口が見付かった

要は忘れていただけの事

彼女にとってあの日貰ったソレは己の人生の中で一番嬉しい瞬間だったから

ソレの存在を嬉しさが覆い被さって隠していた

 

白帝「(師匠、使わせて頂きます!)」

 

手に持っていた刀を鞘に納めると後方に居るであろう人に投げ渡す

その人は投げ渡された刀と白帝を交互に見て、意図を理解したのかゆっくりと微笑みを返した

その行動を訝しむグラムを余所に、白帝は着物の上半分を脱いだ

誤解の無い様言っておくが胸にはサラシをバッチリ巻いているので無問題である

刀を受け取った人も密かにガックリと肩を落とした事もついでに報告しておく

健康的な肌を外気に晒した白帝の両腕にはベルトが六つ巻かれている

二の腕に一つずつ、腕に二つずつである

そして息を一つ吸うと腹の奥から言葉を発した

 

白帝「六逆、開封!!」

 

全てのベルトが白色の閃光と共に爆ぜた

 

続け 

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