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それは荘厳だった

どんな物にも負けない位の流麗さだった

 

白帝「―――六逆、五の型」

 

その姿に見惚れていたのかグラムは動作に少し遅れた

既に白帝は居合いの動作に入っている

遅れは命に関わるというが、この髑髏騎士は他とは一味違う

 

グラム「だがお主の速さは確りとこの目に焼き付けている。甘いっ!!」

 

いなしたと思った。受け止めたと思った。弾いたと思った

だが違っていた

・・・軌跡は五つ存在したのだから

 

グラム「馬鹿な!?この短時間でこれ程まで速くなる事等・・・」

 

そう、無理だ。人にしろ人外にしろ上達時間の短縮は覆せない

しかしそれを可能にするのが「六逆の戒め」と呼ばれる武器なのだ

 

白帝「この刀の名は居合い五連。一振りで五振りの働きをする者」

 

その言葉で納得がいった

一回しか振るっていないのに五本の軌跡が見えたのはその所為かと大いに感心した

では何か?その様な一筋縄ではいかない刀剣が残り五振りもあるのか、と少しだけ己を客観的に見て哀れんだ

 

グラム「(だがソレを捌ききってこそ騎士というもの・・・)」

 

この身は騎士。敗走も外道も許されぬ正しき者

その称号を背負うたからには生半可な負けでは認められない

俗に言うバトルマニアではないが、目前の少女に一寸でも見惚れたのだ。剣士として騎士として憧れたのだ

負けぬ挫けぬその心意気に。折れぬ果てぬ精神に

その時からだろう、彼の心に再び炎が灯ったのは

熱く静かに燃えるその炎は未知なる物への挑戦だ

六振りの剣を捌き、いなし、打ち返す。それを目標とした挑戦だ

 

グラム「(久しく忘れていた感情だ。心中で済まないが礼を言うぞ、白亜の剣士よ)」

 

グラムの瞳の光が増した

前を見遣る視線が猛る獣の様だった

踏み込む。それは己が出し得る最高の速さ

あまりに速過ぎる為か鞘から抜いて再び鞘に戻す動作が同時だった

それだけの速さに並大抵の剣士が付いて来れる筈が無かった

しかし相対する少女はそれすらも超え得る速さを持っていたと言える

 

白帝「神速・是空」

 

ヒトを凌駕する速さと神の如き速さ

その違いは一目瞭然

 

グラム「ぐうっ!?・・・だがその隙貰ったっ!!」

 

五つの裂傷をその身に刻みながら、直後の僅かな硬直時間を狙ってグラムの至水が閃く

防御を排した戦法は彼の人生の中でも類を見ない物だった

騎士とは守る者。守りを排除すれば主に危険が迫る

だが今の状況では守るべき対象が居ない。ならばこの行動も概ね理解が出来る

その予想だにしていなかった行動に気圧されながらも白帝は別の剣を抜く

 

白帝「っ六逆、四の型!防ぎきれ、痣吽角枷!!」

 

白帝を守るかの様に四方に展開した鹿の角にも似た刀身

それ等が至水の攻撃を見事に防ぎきった

その様を見ながら尚もグラムの瞳は光を増す。渾身の一振りを防いだからだ

今この時ばかりは彼をバトルマニアだと言っても否定はされないだろう

 

続け 

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