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邪狼「・・・・・・なあ司会者さんよ、ちょっといいか」

 

斐綱「ああ、はいはい、何でしょうか。・・・成程、確かにそうですね」

 

何やらコソコソと二人で話し合った後、斐綱がマイクに向かって声を飛ばす

 

斐綱「えー、お楽しみの所申し訳ありませんが、これ以上試合が長引いてしまうと以降の試合に支障をきたしてしまうという事で・・・真に勝手ながら次の一手で強制終了とさせていただきます!」

 

蒼麻「何その前代未聞な展開」

 

赤「いや、まあ確かに他の試合が短過ぎたっていうのも関係していると思うがな・・・」

 

赤のその言葉に参加者の何人かがクリティカルダメージを受けた

そして会場もザワザワと騒がしい

だが当の二人は静かだ。それも致し方無いと思っているのだろう

 

グラム「次の一手が幕引きの合図とはな」

 

白帝「ですが、試合というのは何が起こるか分からない物だと思います」

 

グラムはその言に少し感心する

先程までの少女は何処か空回りをしていた

それがこの短期間で驚く程に進歩した

まるで孫の成長を見ている様な感覚であった

 

グラム「ならば、皆の期待にそぐわぬ一手を見せるとしよう」

 

白帝「全身全霊でお相手します!」

 

グラムは己が愛刀を強く握り締め、その両眼を鋭くさせて目前の少女を睨む

一方の白帝は一番左下に位置する剣の柄に手を掛け、真っ直ぐな瞳で目前の老騎士を見据える

共に心は剣と共に在る

捧げるは己が意志

剣の術を磨き、何時か同じ場所に立つ為に

 

グラム「―――我流・風迅」

 

そのあまりに鋭過ぎる剣気は風に乗り捉えたものを切り裂く刃となる

風の刃が迫り来る中、白帝は只々自然な動作で攻撃を繰り出した

自覚はしていなかったが、今の彼女は本来持っていた力を出し切っていた

 

白帝「―――神剣技・終宴」

 

長かった宴も何時か終わりが来るから

それが儚いと思うならまた開けばいい。人が居る限り宴は終わらないのだから

これはそんな想いを宿らせた一撃

想いは何物にも勝る力だ

そこに明確な理由は無いけれど

想い続ければ叶うから

 

蒼麻「お前は本当に優秀な弟子だな。俺は弟子に取れた事を誇るぞ」

 

その一撃はグラムの刀を見事に弾いた

途端、会場中の人間が大音量の歓声を上げる

それを傍目に二人はそっと握手を交わす

何時かまた、何処かで二人が出会ったら、今みたいに仕合おうと

その日一番の歓声が別々の道を行く二人を祝った

 

続け 

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