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人で賑わうその町に二人の男が降り立った
一人は長身痩躯で背中まで届く黒髪を風に揺らす男
一人はガッシリとした体躯で白髪オールバックの男

 

赤「此処か、依頼主が指定した町というのは」

 

蒼麻「ああ、人口もそれなりで温泉街なんかもある観光地みたいなトコらしい」

 

赤「だが本当にこんな所に居るのか?依頼内容から相当な眉唾物なんだが・・・」

 

蒼麻「俺もそこには同意だけどよ、現に被害報告が上がってんだから信じるしかねえだろ?」

 

赤「・・・まあ、こうやって現地に来てウダウダ言うのもな。取り敢えず情報収集といくか」

 

蒼麻「おう。お前西側頼むわ、合流は予約してる旅館で」

 

赤「了解」

 

一方その頃

 

秋「白帝、蒼麻見なかった?部屋にも雑木林の方にも居なくてさ」

 

白帝「師匠ですか?師匠なら今朝方赤さんと弐本に行くと言っていましたけど」

 

秋「弐本?そりゃまた如何して?」

 

白帝「久方振りに依頼が舞い込んだらしく、私に鍛錬のメニューだけ渡して出掛けられましたよ」

 

秋「相変わらず杜撰な弟子管理だなあ。依頼という事は一日二日じゃ帰って来ないか」

 

白帝「急ぎの用件なんですか?」

 

秋「ああ、いや、三市街や次元外からも訪れる人が増えたから、施設や道路の拡張工事をしようって事で度々話はしてたんだ」

 

白帝「それより衛星の撤去作業を早めた方が良いのでは?」

 

秋「あれはあれで観光名所みたいになってるから、地区長から中々許可が下りなくてね。搭載武装の類は外殻上でデブリと化してるらしいから安全ではあるんだけど・・・」

 

白帝「成程、王国と似た様な状態という訳ですか」

 

いつだったか全世界を巻き込んだ大事件がそこで起きたのだが、終わってみれば観光名所である
この世界の人達はメンタルが強いのか、それとも楽観的なのか謎である
恐らく後者なのだろうが

 

秋「うん、それでさ、蒼麻達は弐本のどの県にい「走りこみ終わりましたー!」・・・鍛錬って彼の事か」

 

白帝「では次は素振り1万回、1時間で終わらせる様に!」

 

「分かりました!」と元気良く返事をすると青年は駆け出して行った

 

秋「・・・・・・それ1時間で終わるものなの?」

 

白帝「始めの方は半分も行きませんでしたけど、今では問題無くこなしますよ」

 

秋「段々化け物染みて来たな」

 

正真正銘の生まれも育ちも人間なのにね

 

白帝「先の質問の答えですけど、師匠達は神府に行かれるとの事です」

 

秋「神府っていうと夜摩梨県の県庁所在地だっけ。・・・あれ、ここ最近何処かで神府の記事見たぞ?」

 

あれは三日前の新聞だったか
見出しは確か・・・

 

秋「現代の神隠しか!?上清翠町で町民が行方不明・・・だったかな」

 

白帝「行方不明、ですか。物騒な話ですね」

 

秋「まあ、神隠しなんて人の世では珍しい事でもないんだけどね。この現代で起きるのは如何考えてもおかしいね」

 

白帝「という事は、師匠達はその調査を依頼されたと」

 

秋「もしくは既に犯人が分かっていて、その処理かもしれないね。あの二人なら不測の事態に陥っても何とかなるし」

 

でも何故だろうか?
心の片隅でもう一人の自分が警鐘を鳴らしている気がする

 

秋「・・・気の所為だといいんだけど」

 

続く

 

 

 

旅館で合流した二人は取り敢えず歩き詰めの疲労を取る為に風呂に向かった

 

蒼麻「ふぃー、人間の生み出した物の中で温泉はやっぱ上位に食い込むな」

 

赤「ああ、やはり神社に温泉を引いて良かったな」

 

そうなのである
過去に登場していたあの風呂、わざわざ温泉を引いてるのである
こんな所で明かされる衝撃の事実
しかし今回の物語にはなんの関係も無いのであった

 

蒼麻「東側じゃ特に騒がれてはないな。ニュースや新聞では取り上げられてるみてえだが、都市部が近いのもあって対岸の火事って感じだ」

 

赤「そうか、こちらでは幾つかの目撃証言を得たぞ。どれも夜間から朝方にかけてだがな」

 

蒼麻「つー事は・・・日の光を避けてるって事だから、依頼内容は真実か」

 

赤「それに西側は山道に通じるルートも確認した。木が鬱蒼と生えていてな、正に何かが居そうな感じだったぞ」

 

蒼麻「んじゃあ、そこに行ってみますか。運が良ければ第一村人が目的のネクロマンサーの可能性もあるしな」

 

赤「屍霊術の意味が無くなるだろ。だがまあ、最初に出遭ったものがゾンビやスケルトンの様なアンデッドならビンゴだろうな」

 

蒼麻「そうと決まりゃ早速行くぞ!」

 

赤「待て!」

 

蒼麻「なんだよ」

 

赤「ちゃんと頭と体を洗え」

 

蒼麻「こんな時まで真面目かよ」

 

赤「郷に入っては郷に従え、だ。ただでさえ親子連れも居るんだ、大人は子供の手本であるべきだ」

 

蒼麻「・・・これだから子持ちは」

 

30分後

 

蒼麻「今から山登るのに頭洗う必要あったのかね?」

 

赤「身だしなみは基本だぞ。例え今から泥まみれになろうと、返り血を全身に浴びようと、最初から汚いよりかはいい」

 

蒼麻「そうかなあ」

 

若干の疑問を残しつつ二人は山道を登っていく
外灯はあるがそのどれもが割られ、最早一つも機能を満たしていない
アンデッドが人口の光を嫌うか如何かは定かではないが、暗い中で背後から襲われようものなら普通なら即お陀仏である
が、そこはそれ。一般人や人間ならまだしも二人は人外である
すぐ目が慣れるし行動の阻害も意味を成さない

 

赤「?」

 

最初に気付いたのは赤だった
人外にも疲れという物はある
昼間に歩き詰めで疲労が溜まったのだから、疲れないなんて輩は居ない
普段あまり歩かない山道だから疲労の溜まり方が違うのも理解している
だが、彼は今でもたまに旅行に行くと言って弐本や外国に足を延ばしている
山道には慣れている筈だ。それなのに若干体が重い

 

蒼麻「なあ、俺の気の所為だと思うんだけど・・・なんか体の動きが若干重くね?」

 

赤「それはオレも考えていた所だ。山道に入った所までは普通だったんだが、先程辺りから歩くのが若干億劫気味だ」

 

蒼麻「ネクロマンシーの影響を受けてるって事かな?え、でも、俺ら状態異常無効だろ」

 

赤「親父の言によればそうらしいが・・・神社の外だからか?」

 

蒼麻「えー、東ドーティカで皇虫毒に罹ったけどすぐ治ったじゃん」

 

赤「確かに」

 

ちなみに皇虫毒とは東ドーティカにのみ生息する皇虫と呼ばれる毒虫である
罹ったが最後40度以上の高熱と急激な脱水症状と止まらない吐き気で死ぬ
精神的にも死ぬが物理的にも死ぬ。如何足掻いても死ぬ

 

赤「あと考えられるのは・・・・・・・・・ネクロマンシーって何属性だ?」

 

蒼麻「屍霊術だってんだから闇属性じゃねえの?黒魔術とか反魂術とかも闇属性だし」

 

赤「ここからはオレの推測だが、もしかしたらオレ達の状態異常無効というのは闇属性には効果が全体と比較して薄いのかもしれない」

 

蒼麻「それはちょっと突飛過ぎねえか」

 

赤「いや、よく思い出してみろ。親父が普段使っている魔導、アレ何属性だと思う?」

 

蒼麻「・・・・・・闇属性かなあ」

 

実は物語にも登場していないのだが、邪狼はたまに「闇装雷」だとか「闇滅赫」だとかいう魔導を使っているのだ

 

赤「創った本人だからな、闇属性無効が正常に働いていないというのも間違いではないかもしれない」

 

蒼麻「野郎・・・帰ったら一発ブン殴ってやる」

 

一方その頃、蒼黒神社

 

邪狼「ぶえっくしっ!!ずずっ・・・おかしいな、風邪は引かねー筈なんだが・・・誰か噂でもしてんのか?」

 

大正解
ちなみにその後、サクッとワンパンでネクロマンサーを沈めた蒼麻は、宣言通り帰宅した直後に邪狼を一発ブン殴った
久し振りの大喧嘩に発展したのは言うまでもない

 

終わる

 

 

 

後書き(書き下ろし)

久し振りに小説を書くし、久し振りに後書きを書く作者こと蒼麻です

うーん、この物語を書くそもそものキッカケはとある同人エロゲをしてて、そこでネクロマンサーという単語が出たからなんですが・・・

実は一度も本編に出さないままのキャラが居るのです。しかも闇本関係でね

使わないと可哀想だよなーと名前を見る度思っていたので、丁度良い機会だった訳ですね

まあ、ワンパンで沈みましたけど。しかもこのキャラ女性だしね

六道巴っていうんですけど、設定では「餓鬼道の魔導者」、「死者や屍鬼を操る邪術師」となってるんですよ

・・・・・・邪術っていってるし大丈夫でしょ

と、こんな事を言ってしまうと女性差別だとか言われるので補足しときますと、蒼麻は相手がどんな犯罪者だろうと人間であるならば殺す様な事はしません

表現が簡素なので誤解されたかもしれませんが、ワンパンというのは頭小突いた程度です

人外が本気でワンパン繰り出したら原型留めてませんよ。よくてミンチ寸前、悪くて爆裂四散ですからね

しかし久し振りにこうやって物語を書くと意外とすんなり出来るモンですね

やっぱり物書きが好きなんだなあとしみじみ思う

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