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数ある中の一説によると、
其処は日も当たらない暗き場所で、
太陽の照りつける熱き場所で、
亡者の住まう穢れた場所で、
死の香り立ち込める秘匿の理想郷で、
果ての向こうの・・・全ての始まりの地。

 

【界の果て-とある魔剣と男の話-】

 

a「ふはっ、この世界は中々にアタリだなあ。生者と死者のバランスも良し、天と獄の繋がりも無し、一点惜しむらくは女の覇気がまるで無い」

 

光が点在する其の場所で足元に開いた穴に向かって顔を向けながら男は一人呟いた
穴の中では何処とも知れぬ世界の映像が止まる事無く動き続けている

 

a「・・・で?お前どっから迷い込んだんだ?」

 

男は顔を上げずに問う
穴を挟んで向こう側、光に照らされ一振りの剣が浮いていた

 

「此処は何処だ?俺は確かに封印された筈だというのに」

 

a「封印?なんだお前、何か悪い事でもしたのか?暇潰しに聞かせてくれねえか?」

 

「簡単な事だ。俺を創造した鍛冶神が俺を御し切れなかった」

 

何故だか男の問いに抗えなかった
抗おうと思えば抗えたのだろうが、己の魂はそれを拒絶した
自問自答したい程の疑問であるが、それさえも己の魂は拒否した

 

a「鍛冶神か・・・・・・確か名はトーマ、現在は旧友に倣って鍛神刀麻だったか。ふーん、自分で打った剣の力量を測れないんじゃ鍛冶神失格だが、封印する事で証拠隠滅って感じか」

 

「よく知っているな、神の事情に精通しているとはただの隠居ではない様だ」

 

a「隠居?はは、隠居か。まあ遠からず近からずといった感じだな」

 

「先の質問だが答えてくれる気にはなっただろうか」

 

a「ああ、此処は何処かって話か。ズバリ『界の果て』だ、簡単に言や位階の最高到達点だ」

 

「位階・・・一般的には階級を指す言葉だが、貴方様の言う位階は世界としての、ですか」

 

自然と口から零れた『貴方様』という敬称
これも意識外の事ではあるが、己の魂は男が只者ではない以上に敬意をもって接しなければならない存在である事を知っている様だ

 

a「この時空には三つの位階が設定されている。一つ目はクラス、個体の強さ。二つ目はカテゴリ、種族から算出される階級。三つ目はエリア、その世界がどの位置に在るか」

 

「つまり、この場所は次元でも時空でもない、その更に一段階上に位置していると」

 

a「時空にも色々と在ってな。アカシックレコードも系統樹の幹もカウンターアースもある。存在を万人に否定された全ての物が確たる質量を持って存在している。その上だ、『界の果て』が在るのは」

 

『界の果て』という名称をそのまま引用するなら、正しく『界』の『果て』に在るのだろう
ならば此処に居る己はその位階に到達したという事だろうか?
封印されたというのは虚偽だったのか?
その答えは男の口からもたらされた

 

a「それは違うぞ、お前は如何見たって本体って感じじゃない。いわゆる精神体ってやつだな」

 

心を・・・?

 

a「心を読むまでもないぞ。今のお前は輪郭があまりにもぼやけててな、魂が剥き出しの状態だからな。此処はそういう奴が集まり易いんだ・・・まあ、俺の前まで来れたのはお前が第一号だけどな」

 

成程、合点がいった
如何やら外見以上に知識は豊富な様だ
今ならば幾つかの疑問に対しての答えが得られるかもしれない

 

「質問をしても?」

 

a「いいぜ、数学の未解決問題からムー大陸の詳細な地図まで何でもござれだ。兎に角俺の暇が解消されるんなら何でも答えてやるぜ?」

 

「世界は神々が創った、ならば次元は誰が作ったのか?」

 

a「インテリジェント・デザインか。何処かの世界じゃ一部の人間種が説いて回ったらしいが、聖耀教会は一部否定しているらしい。聖書の内容がガラッと変わるからな。・・・結論から言うと『古空』が創った」

 

「古空?それは神々の上位存在と認識すればいいのか?」

 

a「神々は一見完璧に見えるが、実の所は継ぎ接ぎや欠けがある。古空はそれすらない完璧な一点物だ。まあ、だから多少融通の利かない所はあるが」

 

「了解した。では質問を変える」

 

a「ああ、ちょっと待て。俺まだお前の名前訊いてないんだよな。封印食らうってんだから相当謂れのある名なんだろ?」

 

「産まれた直後の試しで封印を食らった。故に名は無い」

 

a「マジか、不便だな」

 

「不便という事は特には無い。封印はおいそれとは解けないし、誰であろうと魔剣に自ら手を伸ばす者は居ない」

 

a「なんだ、お前魔剣なのか。始光剣って分かるか?」

 

「オリジン殿か。産まれたてでも彼女の事は知っている。全ての聖剣の生みの母であり育ての父である。比べるべくもない力量差ではあるが、俺は彼女の対となる事を願われ鍛たれたのだ」

 

a「ほお、聖剣・第一位の対に・・・って事はお前、魔剣・第一位か」

 

「その様な数えで呼ばれた事は無かったが」

 

a「ああ、まだその時期じゃなかったか。だけど名前は必要だな。よし、俺が名付けてやろう」

 

「それは、大変嬉しいが・・・・・・」

 

己の魂はそれを受け入れている
あんなに拒絶や拒否をしていたというのに
何故こうも、嬉しさが込み上げて来るのか

 

a「ん?なんだ、泣いてんのか?」

 

「分かる・・・のか」

 

精神だけの存在だというのに

 

a「俺に分かんないモンなんてねえぞ?この時空だって古空だって俺が創ったんだから」

 

ああ、ならばやはりこの方は・・・

 

『―――接続(アクセス)』

 

意識が引き戻される
此処は外神界、鍛冶神が剣を打つ為の庵
そう、あれから幾つもの年月が経ち、幾つもの同種が生み出された
魔剣は俺から数えて第十三位まで打たれ、そのどれもが所有者を死の道に引き摺り込んだ
封印が解かれる事は無かった。中から外は見えていたがそれだけ
手も足も出せないとは正にこの事で、俺はこの狭い箱の中で静かに外界を眺めていた
其処にあの男が現れた

 

『刀麻ってば、封印の仕方がえげつないな。これじゃあ中から外が丸見えじゃないか。精神攻撃は基本、とはよく聞くけどさ』

 

誰だ、一体誰が俺を呼び起こす
誰が、俺を外に連れ出そうとしているんだ

 

『まったく・・・刀剣を創り出す人が刀剣の扱いに不得手とか詐欺もいいところだよ。よいしょっと!』

 

封印がガラスでも割れたかの様に軽い音を立てて破れた
そしてこちらに差し出された手を見て、俺は心の中で確信した

 

『魔剣・第一位「岺」、確かに拝領した。これより朱窮螺を伴い鋼雅戦役に介入する!』

 

間違いなく彼だ、と

 

 

 

 

どうも、蒼麻です。

最近は雪ウサギと名乗る方が多いので、こちらの名前を使うのはかなり久し振りです。

まあ、そんな事はどうでもいいんですが、今回は外伝という事で遂に『界の果て』登場です。

色んな商業作品でも別の言葉で見かける終着点ですね。

解り易い様に言うと、女神になったり旧神になったり英霊になったりすると辿り着く所です。

あらゆる世界の更に上にあるのでこちらから干渉する事は出来ませんし、あちらから手を差し伸べる事も基本的には出来ません。

というか、其処に至った時点でやろうと思えばなんでも出来ちゃうので縛りを課してます。

簡単に言うと「過度な干渉を禁ずる」とか「分身体を作って楽しむのはいいけど、記憶の完全リンクは駄目」とかね。

ところでaの正体ってブログ以外で言った事ってあったかな?

特に隠す理由も無いので言ってしまうと、正式名称は「amuos:sF」で逆から読むと「Fs:souma」。

つまり看板息子その3である如月蒼麻の行き着く先です。どちらかというと過去の姿かな。

時空創ったり古空創ったりして暇を潰してたんですが、何を思ったか唐突に自身を414の欠片に分けて全次元に散らばらせました。

んで、その時に生まれたのが記憶を司る夜剣で、核にあたるのが如月蒼麻、いつか統合する時に欠片を集める役目を担う天壌神。

ただまあ、統合する時なんてのは結構未来の話でして・・・。

2020年で「外伝」が全部終了して、300年後の2320年に「エンジェル・ワークス」が起こり、1000年後の3020年に「覇を奏でる」が始まり、それから途方も無い時間が経過して人間種が地球を放棄して宇宙に旅立つと「Se-sT」が始まるので、かなり未来という事になります。

そもそも書くかどうか分からないし、ブログの方でも「面倒臭いから多分書かない」って言ってるし。確か言ったと思うし。

唐突に終わる。

と、いうのが普通なのですが。

申し訳無い、現在2018年2月21日、文章の一部を改訂しました。

この蒼麻は”天星世界”の如月蒼麻ではなく、”極月世界”の如月蒼麻なのである。

言ってる意味が分からない?そうだね、違う世界とでも言っておこうか。

2020年にとある事件が起きて世界の分岐点が出来た。

一つは正史を、もう一つは外史を進む事になった。

これは外史の物語なんだ。いわばパラレルワールドというものだよ。

そして唐突に終わる。

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