top of page

ゴーン、ゴーンと何処からか鈍い鐘の音が聞こえた
距離的に言えば山の上だろうか
いや、ここいらは基本的に平地であるからそれは無いか
男は一人自己完結した
そもそも山の上には神社が一軒ポツンと建っている
神社に鳴らす鐘は無い、つまり山ではない
では何処か?

 

蒼麻「・・・ふむ、さっきの観光者かな?余程念仏の効く体質だったらしい」

 

赤「棺と抽出機が必要だな」

 

蒼麻「石田先生はまだ回診から戻ってないから、最悪俺達の手で蘇生作業だ」

 

赤「心臓マッサージしたら胸部陥没するんじゃないか?ここは無難にAEDを使うべきか」

 

蒼麻「じゃあ石田医院に行って予備を・・・おい、また鐘鳴ったぞ」

 

赤「今日は多いな、GW程じゃないが四回とは。弐本が騒がないか?」

 

蒼麻「今の上層部にはむしろ好機と思われるさ。あの国は本当に自国民に対しても辛辣だからな。俺達人外の方がよっぽど優しいってモンだぜ」

 

赤「酷い国もあったものだ」

 

ゴーン、ゴーン、ゴーン
鐘が続けて三回鳴った
先程は二回で今回は三回
一体何が違うと問われれば

 

赤「戻り鐘・・・今日はこれで店仕舞いか」

 

蒼麻「朝から数えて四回だからな、休日でもないのによく働いた方だよ。能力者の場合行使する程体力の減りが半端じゃないって話だしな」

 

赤「その点ではやはり能力者は人外の劣化版という所か。益々人間の立場が危うくなるな」

 

蒼麻「まあ人間共は自分達の立場や存在理由を知らずに生まれて来るからな、その内勝手に暴走して勝手に自滅するんじゃないか?」

 

赤「つい先日も宇宙センターを建造していたしな。全く・・・オレ達が親切心から実ろうとする技術を丁寧に潰してやっているというのに」

 

蒼麻「宇宙に思いを馳せるよりヒトゲノムの研究でもやった方が自分らの為だろうに。如何する?地下とかに潜ってスペースシャトル建造とかし始めたら」

 

赤「当然潰す。地下なら地盤ごと、地上なら一帯焼け野原だ」

 

何が彼をここまでさせるのか
無論魂に刻まれた使命だ
人外とはこの世界に生まれ落ちた時からやる事が大体決まっている
人間が宇宙に進出するのを阻む事とか
爆発的に増えている人間を一定数まで減らすとか
砂漠の緑地化の為に自ら大地に根付く植物系人外も居るし
生態系のバランス調整の為に害獣指定の半人外を殺す仕事に就く者も居る
つまり、この世界は人間ではなく人外で回っているといえる

 

蒼麻「ところで和尚の洗脳念仏って明日も使えんのかな?リークした情報によると観光庁から秘密裏に視察が来るらしいんだが」

 

赤「本人に聞けばいいんじゃないか?」

 

蒼麻「会う度に有り難い話を一時間弱も聞かされるから正直苦手なんだよ」

 

赤「あー」

 

それ凄え分かる
口には出さなかったが赤は顔全体でソレを表していた

 

 

終わる

bottom of page