top of page

とある午後の日だった
その日はポカポカと暖かい気温で吹く風も何処か涼やかで
昼飯を食べ終えた事もあり縁側で寛いでいたそんな折
ふと藍が天星神に尋ねた

藍「前々から考えてたんだけどさ、蒼ちゃんとか赤の不死っていうのは能力じゃないんだよね?アレって人外特有の何かなの?」

 

天星神「ふむ、其処に目を付けるとは矢張り藍は聡いの。確かに蒼麻や赤の保有しておる不死は人外にしか備わっておらん」

 

蒼麻「言われてみりゃあ・・・俺の能力は冷気だもんな。おかしいと言やあおかしいか」

 

赤「他より死に難い・死なない程度にしか考えた事は無かったな」

 

藍「わたし個人の推測としては、人外を創る時に必要な、えっと・・・人外伏卦録だっけ、が鍵を握ってるんじゃないかなと」

 

蒼麻「ああ、ソレな。なんか胸ん所に収まってるらしいヤツ。全く実感無えけど」

 

人外伏卦録は人外を生成する上で非常に大切な物
コレが無ければ人外は人外足りえないとさえ言われている
いわば人外の核である

 

天星神「目に見えん様に加工されとるから実感無いのは仕方無いんじゃよ。それと藍は大正解じゃ。飴さんやろう」

 

蒼麻「つーか人外伏卦録って結局何なんだよ。人外としてのシステムの付与を担ってるってのは解るけどよ、どういう原理なんだよ」

 

赤「確かに。人外の基が高度に進化した人型生命体・偽体だというのは以前教えて貰った時に理解したが、それだけで既に人外の様な気がする。わざわざ人外伏卦録を埋め込む意味は無いんじゃないのか?」

 

天星神「偽体そのままでは人型生命体という枠のままじゃよ。人外とはそのままズバリ人を外れなければならない。人が人の姿のまま人を外れるというよりは、人という殻を被った人に見える人ではないナニカ、それが人外なんじゃよ」

 

蒼麻「外神界で言われてた人鎧ってやつか」

 

天星神「アレは正式名称を人型鎧殻体という。鎧の様に、殻の様に人の姿を被るからじゃ」

 

藍「・・・あれ?ちょっと待って。元々は偽体しか生命は居なかったんだよね?じゃあ何で人の殻を被る様な真似をしなきゃいけないのさ」

 

世界に偽体と呼ばれる人型生命体しか居なかったのだとしたら
他に人と呼べる存在が居なかったのだとしたら
人という群れの中に人を騙るモノが紛れ込む必要があるのか
そう、藍は問いたいのだ

 

天星神「ソコが、このお話の肝なんじゃよ」

 

赤「まさか人外の元になった存在が居るんじゃないだろうな」

 

天星神「うむ、おるよ。このお話の肝である異世界の神じゃ」

 

蒼麻「異世界?おい待て待て、今更異世界程度で驚きゃしないが、影裏の話にあった300年前の異世界間戦争ってのはまさか・・・」

 

天星神「いやソレとはまた別の世界じゃよ。それでその神々の事を儂らは亜神と呼んどるんじゃがの、伏卦録には彼等の遺伝子情報がちょこっと入っとるんじゃよ」

 

本当にちょこっとらしく限り無く親指と人差し指が触れるか触れないかのギリギリである
単位にするとミリぐらい
いやミリってそれ割と入ってないだろうか
血液検査だって血液1マイクロリットルで十分だというのだから

 

藍「という事は、蒼ちゃん達は厳密には半神半人外って事?」

 

天星神「いやいや、遺伝子の情報が入っとるだけで性行為した訳じゃないからの。赤ん坊の時点で子供が居るとか、生物的にというか性癖的に異常じゃろ」

 

蒼麻はその言葉に昔弐本で耳にしたある風俗店の噂を思い出していた
インファントフィリア、意味は幼児性愛の事であるが
流石に弐本といえど、しかも歓楽街の最奥といえどもである
あまりにも歪んでいるだろうと、噂は噂と当時は一蹴したのだが
たかが人間、されど人間
神がせめて無限の可能性をと汎用に創ってしまったので、
今となっては真偽はまるで不明ではあるが、どうも不安感が拭い切れない
昨今のロリコンという用語がペドフィリアに直結する事を考えると
どうやらこの不安、あながち間違っていない様な気もする
と、今はそんな事を議論している場合ではない
その問題はメインではなくサブであり、本編ではなく閑話である

 

蒼麻「で、その亜神ってのはどんな奴なんだよ?相当強そうってのは判るが判断材料が少ない」

 

天星神「いや別に儂らとそう変わらんよ。人の中に紛れる為に妙に精巧な擬態をしとるがの、外神界にも昔来とったよ」

 

赤「知らない顔が居ればすぐ分かるが、オレは見た事無いぞ?」

 

蒼麻「右に同じく」

 

天星神「お主等がまだ人界に降りる前じゃったから会って話しとる筈じゃぞ。肌の焼けとるツインテールの娘と赤髪の短パン小僧が居ったじゃろ?」

 

蒼麻と赤は互いに目を合わす
まさか、それこそまさかだ
いや確かに見た事がある。二人共確かに見た
記憶には靄がかかった様に不透明な箇所が沢山あるが確かに既視感がある

 

天星神「お主等覚えてなさそうじゃから儂が説明するが、そう、あれはお主等二人の1000歳の誕生日じゃった」

 

普段外神界には神々しか居ないのだがその日はちらほら二人も知らない顔が幾人か居た
今となっては彼等の内の数名が純粋な神ではないにしろ、その関係者なのであろう事は明白である
其処に居た。その件の二人が
確かにおかしな話なのだ
神々とその関係者に子供は居なかったのである
だからあの二人がそうなのだろうと
正直目から鱗である

 

蒼麻「よりによって1000歳とは・・・」

 

赤「あの頃が一番オレ達精神狂ってた時じゃないか?オレなんか全然記憶残ってないぞ」

 

蒼麻はまだ戻化状態の制御が出来ていたのでマシな方だが
赤に至っては戻化すれば100%暴走。全力出しても暴走。必殺技撃つと排熱しきれなくて暴走
もう何やっても暴走のリスクしか無かったのだから酷いの一言に尽きる
本当によくもまあここまで正しく成長したものだ

 

藍「はー、成程ね。今の話だけでも明らかに人外の何倍も上の強体値だって事は解ったよ」

 

天星神「ちなみにウチの神社にも来た事あるぞい」

 

藍「甘酒神の他にも来てたんだ」

 

天星神「去年お汁粉の列に三人位並んどったわ」

 

藍「わお、ウチ特異点みたいになってるね。一応この世界の抑止力名乗ってる訳だし、下手すると殲滅対象に成り得るんじゃないの?」

 

天星神「・・・亜神は異世界の住人じゃから強体値の上限に引っ掛からんのよ。じゃからクラスの上では古空より下にはなっとるが、素の強体値だけを見るとありゃあ戦女神と同列かもしれん」

 

藍「なにそれ怖っ」

 

蒼麻「そんなの聞くとまだまだだなって思うな俺達」

 

赤「いやオレは家族が守れればそれでいいんだが」

 

これはある日の午後の話
年の頃は2020年の3月
この数ヶ月後、天星世界ではその後の歴史を大きく塗り替える大事件が起こるのだが
それはまだ誰も知らない未来のお話


終わり

bottom of page