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それはある陽気な春の日の事
その日は花粉が多く舞うとの注意報が前日出た所為か、いつにもまして参拝客が少ない蒼黒神社
あまりにも閑古鳥が鳴くので手持無沙汰になった赤が、社務所兼住居の一階で新作料理の開発に勤しんでいた
そして蒼麻はというと・・・

蒼麻「(あー、暇だわ。何もやる事ねえし、これなら弥生達と一緒に買い物にでも行きゃよかった・・・)」

 

片手に煎餅持ってバリボリと宜しくやっていた
ちなみに弥生は藍や影裏と一緒に鶴ヶ谷市のデパートにショッピングである
残された旦那は独りソファーに横になって自堕落中であった
暇過ぎてテレビを点けてみたが平日という事もあって大して面白くもないワイドショーしかやってないし、チャンネルを替えても十数年前のアナログ放送時代のトレンディドラマなんかやってるし
早い話が面白い事は何にも無かった

 

蒼麻「まーたどっかの国でドンパチやってる話題かよ。人間共ホントに飽きねえなあ」

 

赤「言ってやるな。思想の違う正義同士がぶつかれば必然とそうなる事は目に見えてるだろう」

 

包丁を持っているので背中を向けたまま赤が答える
音から察するに筍を切っている模様
そういえば昨日近所のばあさんに貰ってたっけ

 

蒼麻「進歩が無えって言ってんの。アイツ等紀元前からおんなじ事やってんじゃん、学習能力無えのかよ」

 

赤「・・・まあ、どんなに新しい兵器を投入してもイタチゴッコだしな。だが俺達が言えた義理か?」

 

蒼麻「そりゃ俺等は戦争なんてまだるっこしい事はしな・・・・・・まあ、そうか」

 

途中まで言って多分そういう事じゃないな
恐らく昔の日常的に殺し合いしてた頃の事言ってんだな、と思い当たって急遽承諾した
そうこう言ってる内にテレビの中では戦車の砲弾が何処かの街の郊外に着弾した映像が流れていた
その砲弾が炸裂してモウモウと砂煙が立ち込める画面が映り、直後にスタジオに推移して出演者がコメントを言い始める
その数秒間の映像にソファーに横になっていた蒼麻は唖然とした
何か有り得ないモノを見た様に言葉を詰まらせて一瞬無言になったのである

 

赤「如何した?何か変な物でも見・・・たんだな」

 

先程まで煎餅が割れる音が聞こえていたので何事かと思い包丁を置いてクルリと振り返ったその先には、口をポカーンと開けてテレビを見て固まっている蒼麻が居た
ちなみに煎餅は驚きのあまり手から落ちている

 

赤「ふむ、ナニカが居たんだな?当ててみよう・・・知り合いの人外か?」

 

蒼麻「知り合いなんてモンじゃねえ・・・」

 

赤「なら半獣の類か。確か連日ニュースでやっている戦争が起きた国周辺には闇ルートで半獣を売り捌いている奴等が多く居た筈、そいつ等だろう?」

 

蒼麻「・・・・・・が居た」

 

赤「すまん、聞き取れなかった。なんだって?」

 

蒼麻「・・・俺が居た」

 

赤「・・・は?」

 

蒼麻「外神界で殺し合いしてた頃の俺が、砂煙の中に居た」

 

赤「そ、れは有り得ないだろう。現にお前は今オレの目の前に居る訳だし」

 

蒼麻「そう、なん・・・だよなあ。明らか俺此処に居るのに、何故か明らか俺そのままな奴が画面の中にも居るんだよなあ。ドッペル?」

 

赤「人外にドッペルもクソも無いだろう」

 

蒼麻「だよな。魂の欠片抽出されてねえし、提供した覚えも無えし。・・・え、じゃあアレ何?」

 

赤はこの時蒼麻の頭が春の陽気でボーっとしてしまってるだの
ソファーに横になっていたので眠気で幻でも見たんじゃないかだの
そんなありきたりな事を言ってその場は事無きを得たのだが
その後、蒼麻は旧知の間柄である蛛璃からDCT経由で
『なんかお前テレビに映ってたぞ!m9(^Д^)プゲラ』とメールが送られてくるのであった
やっぱり見間違えじゃなかったと蒼麻は愕然としたが、取り敢えずプゲラはもう死語だよとツッコんでおいた
変な所で平静にさせるんじゃないよ、目まぐるしいわ


一応終わり

 


後書き

どうも、雪ウサギです。
何故こんな謎が残る様な物を書いたのか。
それは思い付いたからです。ただ捨てるには勿体無かった。
ちなみにドッペルではありません、コピーでも無いです。
じゃあなんなのか?・・・並行世界から迷い込んだ一夜の幻(現物)です。

天星世界に限った事ではないのですが、電話でいう混線みたいなのがたまにある様なのです。
ウチの他作品で例えると題名アナザーのミナみたいな感じですかね。
あの子って実は自分の意志であそこに現れた訳じゃないんですよ。
気付いたらあそこに居てああなってただけで。
ただ縁は結んだのでそれからは頻繁に自分の意志で来れてますけど。
って言っておけば、ウチでは割とそれで丸く収まるんじゃないかなと思ってみたり。
実際の所はなんでしょう?謎パワー?

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