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―――白く、白く、塗りつぶして。

 

遼亮「・・・・・・それで、助かるのか」

 

声を喉から絞り出した

声は如何しようもなく震えていた

数秒の沈黙の後

 

幟月「ああ、助かるさ」

 

ただ一言「助かる」とだけ

それだけでいい

目を閉じれば笑顔で語りかけてくる大切な人の顔

それを心に刻んで、静かに告げる

 

遼亮「それが・・・最善の方法ならやってくれ」

 

幟月「オーケー、君のその後の平穏を約束しよう」

 

それから沢山の年月が経った

あの時のそれは誓いだったのかもしれない

願望だったのかもしれない

いや、むしろ淡い想いだったのかもしれない

今となってはそんな事は如何でもよかった

この世界に「城戸遼亮」という役者が居て、「立川斎」という役名があっただけの事

彼にとってはもう昔の事に過ぎない

ただ、今でも想う

何十年経とうが忘れられない

あの日出逢った少女の姿を・・・

 

 

アナザー

「真っ白な道」

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