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―――君には感謝する、これでまだ続けられるよ。

 

日曜日、俺は斎の誘いで家にお邪魔する事になった

斎の家は俺の家から少し離れた閑静な住宅街にあった

中に通され階段を上り、斎の部屋に入った

見てすぐに女の子の部屋なのだと認識させられる

独特の甘い匂いに各所に置かれたぬいぐるみ達

風によってレースのカーテンをなびかせている窓

そのどれもが新鮮だった

月子の部屋を見た事はあるけど、あれはどちらかというとマッドでサイエンティックな部屋

だから俺の目には凄く新鮮に映った

 

斎「そ、そんなにジロジロ見ないで下さい(////」

 

遼亮「あ、いや、すまん。女の子の部屋なんて見るのも初めてだから・・・(苦笑)」

 

俺の答えに斎も同じく苦笑を返す

そして飲み物を取りに行くと部屋を後にした

一人残された俺は妙にソワソワして必要以上に部屋を見回してしまう

 

遼亮「な、何か凄えドキドキして来た・・・(////」

 

と、ドアが開いた

斎が戻って来たのかと思って顔を向けると

 

「ふむ、あの子にしては上出来じゃないか」

 

見覚えの無い女性が立っていた

メガネを指で押し上げながら女性は言った

 

「君が城戸遼亮くんだね?」

 

遼亮「そう、ですけど。あの・・・」

 

幟月「ああ、紹介が遅れたね。私は幟月(しづき)、一応斎の保護者をやっている」

 

聞いてすぐに斎の言っていたお姉さんであると分かった

 

幟月「斎から君の話を聞いていたけど、まさか会える日が来るとはね」

 

遼亮「・・・・・・」

 

俺はその言葉に静かに耳を傾けていた

いや、実際には耳から耳へ素通りしていたのかもしれない

 

幟月「ん?・・・ふふふ、如何した?顔が真っ赤だぞ?」

 

言われて気付いた

確かに俺の顔は真っ赤だった

綺麗だとは聞いていたけどこれ程とは思わなかった

そうこうしているとジュースをトレイに載せて斎が戻って来た

 

斎「先輩、お待たせしまし・・・っ!?」

 

幟月「やあ、斎、やっと戻って来たね」

 

斎「ドク・・・お姉ちゃん、何やってるの?」

 

幟月「いや~、斎がいつも話している彼に少し興味が湧いてね。自己紹介をしていた所だよ」

 

幟月さんは斎の横を抜けて部屋を出て行く

途端に俺は長く息を吐いた

 

斎「先輩、何もされてませんか?」

 

トレイを置きながらそんな事を訊ねてくる

質問の意図が全く分からないが真っ正直に答える

 

遼亮「これといって何も?自己紹介されただけだけど」

 

訝しげに訊く俺に斎は短く答えた

 

斎「その・・・科学者だからなのか分からないんですが、たまに人を使って実験するので・・・」

 

悲痛な表情で言っている所を見ると、斎も大変な目にあったんだろう

そんな事を聞いている最中、俺はというと・・・

頭の中に我が妹である月子の顔が浮かんでいた

 

 

第十九話

「科学者・立川幟月」

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