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―――その道が正しいかなんて誰にも分からない。

 

遼亮「俺は・・・・・・今の斎を選ぶ」

 

喉から搾り出した声は意外と落ち着いていた

薄く微笑んでいる幟月に向かって、遼亮は自分の心を吐露する様に言う

 

遼亮「最初は他人と違う所に惹かれて付き合い始めた。それは確かに自分勝手だとは思うし、ただの自己満足だとも思う。でも、だからって今の関係を断ち切れば俺は絶対に後悔する。何十年経とうが後悔し続けるに決まってる!」

 

幟月「・・・成程、君の意見は理解した。だがあの子の運命は無くす事は叶わない、ソコは如何する気なのかな?」

 

遼亮「当然、二人で乗り越えてやるさ」

 

幟月「ふむ・・・中々の威勢だ」

 

遼亮「もう二度と離さないって決めたんだ。どんな事があっても必ず打倒してみせる!」

 

その答えに、その一言に幟月は目を閉じしばし考える

そして静かに笑ってこう返した

 

幟月「ならあの子の管理は君に任せるよ、城戸少年」

 

遼亮「管理って言うな、斎はれっきとした人間だ」

 

その真っ向からの反論に目を点にして、今度は声に出して笑った

その笑いにムッとした遼亮に幟月は目尻に涙を残しながら言う

 

幟月「はー、はー・・・いやいや済まない。君の中では最初からそうだったな」

 

遼亮「データだか何だか知らないけど、斎に何かしたら俺が黙っちゃいないからな!」

 

幟月「ああ、分かっているさ。私の自慢の妹を頼むよ」

 

その言葉に遼亮は「勿論です」とだけ答えて研究室を出て行った

残された幟月は思い出したのかまた笑い出した

それまで静観していたツインテールの女の子が話し出す

 

「よかったのですか博士。あの男は我々の研究にとって、大変邪魔な異分子と成り得る可能性が・・・」

 

幟月「ぷくくっ・・・・・・ああ、その事なら心配要らないよ。私の下には優秀な妹が他にも居るからね。千草もその中の一人だよ」

 

千草「私には博士のその言葉はあまりに勿体無いです」

 

幟月「私はそうは思わないがね。・・・・・・おや、買い物から帰って来たみたいだな」

 

ドアを開けて入って来たのは、如何見ても子供にしか見えない二人の少女

買い物袋を片手に提げて元気に幟月に声を掛けた

 

「お姉ちゃん、見て見て!遂にワタシやったのよ!」

 

幟月「如何したんだい、夜宵?」

 

夜宵「遂に『世界の人外シリーズ』のウルトラシークレットを当てたの!すっごい嬉しいわ♪」

 

「ただの食玩程度にそこまで一喜一憂出来るって、ある意味天才だと思うの」

 

夜宵「何よ!あからさまな演技でお菓子おまけしてもらったからって、姉に対してのその罵詈雑言は無いんじゃない?!」

 

幟月「玖雨、あまり夜宵を苛めるものではないよ。確かに夜宵は苛め甲斐があるが・・・」

 

千草「博士、本音が漏れています」

 

玖雨「しづネエはわたしよりもSだと思うの」

 

そんな感じで一日が過ぎていく

この光景だけを切り取れば、どんな異常も正常の範囲内に収まるのだが

そんな奇跡は起きない。起きる筈が無いのだ

全ては彼の選択次第なのだから

 

 

第二十九話

「自慢の妹's」

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