―――時間に罪は無い。
12時、指定されたのはその時間
待ち合わせ場所は時計の付いたモニュメントの前
待たせるのも男として如何かと思うので、10分前に到着する様に準備した
そして待ちながらふと思う
彼女が来た時言うであろう台詞は何だろうと
蟹崎「ごめん、待った?」
遼亮「いや、さっき来た所だよ」
心の中で苦笑する
やっぱりこの会話はお約束なんだな
遼亮「今日は何処に行くんだ?」
蟹崎「まずは服かな。それじゃあ行こっか♪」
さり気なく手を繋いでくる
何時もと違ったその雰囲気にドギマギしたが、顔には出さない事にする
それから1時間程買い物を楽しんだ俺達は、休憩もかねて喫茶店に入った
蟹崎「・・・それで城戸君はキスってもう済ませたの?」
遼亮「ぶふっ!?」
飲んでいた紅茶を盛大に噴き出した
テーブルに零れたのをお手拭きで拭きながら訊ねる
遼亮「いや、何で唐突にそういう話になるんですかね。蟹崎さん?」
蟹崎「え?だって気になるじゃない。それともまだしてないの?」
遼亮「や、そりゃしてるけどさ」
蟹崎「それならいいじゃない、隠したって何の得にもならないんだしさ」
遼亮「いや、何というか、他人に話すのって案外恥ずかしいモンなんだけど・・・」
言いつつも遼亮の顔は苦笑を絵に描いたみたいだった
なんだってこんな事を話しているのか自分は、といった心境の様だ
蟹崎「で、その次は?」
遼亮「え!?あ、いやその、斎の方にも色々と事情があって、あまり出来ない日が多くて・・・別にそういうの無くても俺は斎の事好きなんだけどさ・・・・・・って俺何言ってんだ!?」
勝手に話し始めて勝手に自爆している男がここに一人
あと先程の遼亮の言葉は全くの無意識も混じっている故に、言わなくてもいい事をベラベラ喋ってしまったという結果である
これを自爆と言わずして何と言う?
蟹崎「あ、やっと帰って来た。お帰りなさい」
遼亮「あ、どうもすいませんでした。それとただいま」
如何やら声を掛けても反応してくれないので、帰って来るまで待っていた様だ。ミルフィーユをつつきながら
遼亮「ってあれ!?何時の間に頼んだのソレ?!」
蟹崎「城戸君がファンシー夢妄想世界に旅立ってる間に」
冷静な意見が飛んで来た
心に刺さった気がした。八割程の深さで
致命傷じゃねえか
第三十五話
「深夜のノリで書くと失敗する良い例」
完