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―――自分の今の気持ちにやっと気付いた。

 

そんなこんなで喫茶店を後にしたお二人さん

当初の目的も果たしたので、後は別れて帰路に着くのみである

 

蟹崎「今日は楽しかった。普段見れない城戸君の素顔とか見れたし♪」

 

遼亮「出来る事ならこのまま忘れて下さい」

 

手を合わせて必死に懇願する遼亮

我を忘れて話していた方が悪いのだが、何となく理不尽だと思うこんな世の中である。ポイズンである

 

蟹崎「忘れられる物ならすぐやってるわよ。・・・はぁ、まさか城戸君がこんなにも変態だとは思わなかったわ」

 

遼亮「せめてHな奴とかスケベな奴とかにしてくれ。その言葉は何処となくたっつーを思い出させるから!」

 

蟹崎「・・・確かに」

 

流石にその通りだとしてもヒドくないだろうか

全然否定はしないけれども、その物言いはヒドくはないだろうか

大事な事なので二回言いました

 

蟹崎「ねえ、城戸君」

 

先程のダメージが抜け切ってないのか、涙目になって地面にのの字を描いている遼亮の頭上で声がする

追い討ちか何かかと警戒しながら顔を上げると、間近に迫った蟹崎の顔があった

 

蟹崎「ん・・・」

 

遼亮「(・・・・・・え?)」

 

今自分に起こっている事が理解出来なかった

もう終わった筈なのに、それこそ始まってすらいないのに、口を塞ぐ柔らかい感触はやがて音も無く離れて行き

 

蟹崎「これは今日付き合ってくれたお礼。じゃあまた明日学校で♪」

 

遼亮「・・・・・・」

 

笑顔で駆けて行く彼女を呆然としたまま見送る

取り敢えず明日はどんな顔で向き合えばいいのか帰りながら考えた

残念ながら答えは一つも出て来なかった

因みに翌日の彼女は至って普段と同じだった

でも何処か吹っ切れた感じになっていたのは気の所為だろうか?

 

 

第三十六話

「蟹崎郁美も吹っ切れた(良い意味で)」

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