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―――斎はここのケーキが大好物です。

 

宇美菜ちゃんが言うには、如何やらたっつーのポジションは単なる家事手伝いと同等らしい

家事手伝いという字面があまりにも似合わないが、万が一でも宇美菜ちゃんが凹む様な事があったらいけないので心の中に留めた

ん?たっつーが凹んだ場合?アイツ凹む事ってあんの?

変態が服着て歩いている様なモンなんだから、心配する方がおかしいだろ

 

辰巳「やっぱり何か理不尽な事を言われている気がする・・・」

 

遼亮「だから気の所為だっつーのに」

 

俺がゆっくりヘッドロック体勢に入るのを見て「了解した」と引き下がるたっつー

コイツ此処では一般人を装う気だな

 

辰巳「俺はあくまで一般人の範疇に居るつもりだが?」

 

遼亮「何処がぁ?!」

 

その発言には流石の俺でも驚くぞ

そんな感じでワイワイやってる俺達に声が掛かった

 

「お前等な、他の客に迷惑になるだろ。味に舌鼓打つとか、友達との会話に花を咲かせるならまだしもな・・・」

 

宇美菜「あれ、お兄ちゃん、今日の分のケーキ終わりなの?」

 

お兄ちゃんと呼ばれた長身の男性は名を水斗という

奈美菜と宇美菜ちゃんのお兄さんで、俺達が通う学校のOBでもある

先程のケーキというのはつまり、水斗さんがケーキを作る担当だという事を示している

水斗さんは見るからに「怒ってます」という風に顔を歪めて言った

 

水斗「呼んでも返事をしなかったから何かと思って来たが、まさかこんな所で油を売っているとは思わなかったぞ」

 

ジト目で責めるこの人、こう見えても昔はバリバリの超不良だったのでかなり様になっている

宇美菜ちゃんはその言葉にハッと気付いて、慌てた様にレジやら何やらに急いだ

 

水斗「朋康はまぁ手伝って貰ってる手前強くは言えないが、それでもあまり褒められた事じゃないだろう?」

 

辰巳「すいません、水斗義兄さん。じゃあ遼亮、また後で」

 

遼亮「あ、ああ」

 

残されたのは俺達二人と水斗さんだけ

やべ、凄え緊張してきた

ただでさえ憧れてる人を目の前にしてるのに、その人が如何やら俺に話し掛けようとしているのがまた緊張を誘う

そんな事を考えていると水斗さんが口を開いた

 

水斗「久し振りだな、遼亮。彼女出来たんだって?」

 

遼亮「は、はいっ!出来ました!」

 

水斗「遼亮・・・声のトーンを落とせ。後ガッチガチになってるぞ。もうちょっとリラックスしろ」

 

うえあぁ、目の前がグルグルするぅ

頭ン中がホワイトアウトで何も考えられねえ

今斎の事で何か言われても全然対処出来ねえよ・・・

ってか今サラッと誤解されそうな言葉が飛び交った様な・・・あ、ダメ、頭がパンクする

 

水斗「何か君の彼氏君、おかしくないか?」

 

斎「確かに・・・」

 

斎は苦笑して返す

遼亮の受難はまだ続く

 

 

第四十五話

「しかし彼のルートは無い」

 

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