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―――悩んでも、悩んでも、答えは出て来ない。

 

炎馬椿は眉根を寄せて訊ねる

 

炎馬「いらっしゃったのですか・・・って、お前何も知らないのか?」

 

琴音「と、言われましても私はずっと一人娘として扱われてきたのですが」

 

自分には兄弟姉妹が居ないと思って今まで生きてきた

ましてや両親ですらその様な事を言った事は無い

必ずしも秘匿が悪いという事は無いが、家族以外の第三者から告げられるのは些か違和感がある

 

炎馬「お前の姉は私と水斗・・・ああ、山辺の兄だ・・・の友人でな。高校卒業と同時にアムリガに留学したんだ」

 

アムリガ、確か正式名称はアムリガ合衆国

元々は何処かの国の植民地であったらしいが、約二百年前に独立し現在は世界有数の軍事国家として知られている

噂では国の何処かには広大な研究施設があり、時に謎の奇声や怪奇現象が起こるらしい

それらをまとめた雑誌があるらしいが、結局はどれもこれも眉唾物だというのが結論との事だ

 

琴音「あそこは銃社会と聞きましたが、お姉様はご無事なのですか?」

 

炎馬「ん、大丈夫だろ。殺しても死ななそうな奴だし、案外異様なまでに溶け込んでるんじゃないか?」

 

炎馬先生は軽口で話す

本音を言い合える間柄なのだろう

普通は殺しても死ななそう等とは友人には言わないだろうし

 

炎馬「だが、まあ、妹のお前が知らないのもあながちおかしい事でもないか」

 

琴音「え?何故、そう思うのですか?」

 

炎馬先生は少し考えると苦笑気味に答える

 

炎馬「卒業式が終わった時に三人で集まったんだが、その時になって初めて自分は天木の人間なんだと話されたんだ」

 

炎馬先生が言うには自分が留学するその直前まで嘘の姓を名乗っていたらしい

何故そこまでして天木の名を名乗りたくないのか、私には当時のお姉様の考えが分からない

そもそも私はお姉様に会った事も無いし顔を見た事も無い

如何いう人なのかは炎馬先生の話から大体は察せるが、結局はそれだけだという事実

近日中にお会い出来るのかと心の内で思いつつも、私はまだ何処か不安だった

未だ見ぬ知らない家族を前に私は平静を保っていられるのだろうか?

私は、本当に天木の人間としてお姉様と出会っていいのだろうか?

 

炎馬「ま、あいつが・・・・・のは・・・だと書いてあったし、そう身構えなくても・・・・・」

 

考えに没頭していた為か炎馬先生の言葉を聞き逃してしまった

そうこうしている内に予鈴が鳴り、炎馬先生は足早に廊下を歩いて行ってしまう

残された私は溜め息を一つ吐くと、不安を肩に乗せて教室に向かった

 

 

第五十九話

「私は、如何すれば」

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