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―――生まれし時は違えど、妹である事は違わず。

 

授業が終わって放課後になったので久し振りに部活に顔を出した

私は一年生の頃から水泳部に所属している

どんな時でも泳いでいれば気持ちを入れ替える事が出来たからだ

それなのに、どんなに一心不乱に泳いでも私の不安は一向に晴れないでいた

 

琴音「・・・はぁ」

 

プールサイドで足を水に浸けながら溜め息を吐く

そんな私の様子に気付いたのか、後輩の一人が後ろから声を掛けて来た

 

「天木先輩、溜め息なんて吐いて如何したんですか?何か悩み事でも?」

 

その少女は丁度水から出たばかりなのか、明るめな紺色の髪を滴らせていた

確か名前は山辺宇美菜。城戸さんのクラスメートにお姉さんが居た筈

彼女はこの水泳部に今年入ったばかりの新人で、何故か記録が伸び難くなっている子だった

その原因は部内の誰よりも大きい胸にあるという事は明らかである

 

琴音「大丈夫よ、貴女がそんなに気にする様な事でもないわ」

 

それは多分強がりだ

自分でも分かっているのだ

誰かに話して、誰かと相談してそうすれば多少なりとも不安は取り除けると

でも只の部活の後輩である彼女に話してもいいのかという気持ちもある

 

宇美菜「・・・ほっとけませんよ。尊敬する先輩にはずっと笑顔で居て貰いたいですし」

 

拳を胸の前で握りながら真剣な顔で言われた

その真摯な瞳に私は目を見開き驚いた

尊敬されているというのも驚きだが、それ以上に彼女の気勢に押された自分が居た

彼女になら話してもいいかもしれない

短い会話の間でそう思った

 

琴音「会った事も無いお姉様が居るって分かったら、貴女は如何するかしら?私はその人に何て話し掛ければいいのかしら?」

 

宇美菜「そんなの簡単じゃないですか」

 

琴音「え?」

 

宇美菜「例え会った事が無くても本当の姉妹なら絶対仲良くなれますよ。私とお姉ちゃんもそうですから!」

 

私はその言葉に半ば呆れた

まさか確信の無い答えを出されるとは思わなかったからだ

でも何故だか、そう何故だか

 

琴音「そんな物かしら」

 

宇美菜「はい、そういう物なんですよ!」

 

自分でも分からないのに心の中にあった不安が少しだけ和らいでいた

これは後日談になるのだが、結局お姉様は帰って来なかった

炎馬先生に訊ねると「だから帰って来るのは今年中だと言っただろう、聴いてなかったのか」と言われてしまった

私の苦労は一体何だったのかと、数日後戻って来た瑞華に八つ当たり気味に愚痴った

 

 

第六十話

「妹は強し」

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