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―――ポジティブにネガティブ。

 

天木先輩の俺に対する対応が変わってから数日

確かにそれは大きな変化だったかもしれない

でも俺達の関係は何一つ変わらない

こんな事を言うと、俺と先輩が踏ん切りがつかない恋人同士の様な誤解を与えてしまいそうだ

何故彼女がそうなってしまったのか俺もちゃんと考えてはみた

桜花祭が終わってからなのだから祭の時に何かがあったんだろう

何か・・・そう、何か見てはいけない物を見て・・・

 

遼亮「ぁ・・・」

 

不意に頭の中に一つの解が浮かび上がった

ソレは確かにそうなる程の物だろうし、人の考え方を変える事の出来る事だろう

あの日は祭だったのだ。皆が浮かれるのは当然の事で、単純な見落としにも気付かないのは至極当然の事

 

遼亮「(それが原因なら、あの対応も頷ける)」

 

普通の人・・・この場合は一般的な常識を持つ人間・・・からすると、ソレは如何見たって異常に映る

ましてや彼女は自分を好いているのだろう事が一目で分かっていた

例え自分に恋人が居るとしても、恋心を抱くのは当人の勝手だ

そこにいきなり不安要素が混じると、その人はこれでいいのかと思ってしまう

それは恋愛という盤上ではなく、常識という境い目である

 

遼亮「(あの時、だろうな。桜の幹が集まってるから見えないと思ったのに・・・)」

 

誰にも見えないから、誰も見てないから、誰も気付かないから、誰も、、、、

だが蓋を開けてみればこれだ。自分の考えを大いに買い被っていたらしい

傑作だった、笑い物だった、後悔しかなかった

夢であれと心から思う

この推察は只の推察でしかないが、大方の予想通りに間違ってはいないのだろう

ネガティブ思考により泥の海に沈みそうになった俺は、教室のスピーカーから流れて来る声に引き戻された

 

「2年C組の城戸遼亮くん、まだ校内に居るのでしたら至急生徒会室に来て下さい。繰り返します。2年C組の城戸遼亮くん、まだ校内に・・・」

 

聞き覚えのある声に無言で席を立つと、赤と橙が入り混じった廊下を歩く

視界の端に映った太陽は水平線に身を潜ませようとしている

俺の心中は泥の海のまま、頭の中ではドナドナが鳴り響いていた

 

 

第六十九話

「終宴への一歩」

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