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産まれた事に喜んで

死ねない事を悲しんで

受け継ぐ事を望まれて

私達は如何すれば幸せになれるのか

 

【幻想識零本/弐】

 

レベル3に辿り着いた
伝え聞く限りではこれが最後
十番目の部屋に入る事が出来れば願いが叶う
そうして私は最初の部屋に入る
何も無い部屋
しかし壁を流れる幾何学な模様
天井を覆う無数の数字
そして空中に映し出される誰かの影
『ジジ・・・帰っテ、来タのか・・・それモマた、一つの道ダ・・・』
言っている意味が解らない
帰って来たとは如何いう事だろうか?
私がこの部屋に来るのは初めてだというのに


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電子精霊・Xenos(ゼノス)
部屋を構成する物には彼女の至る果てが解る。
願わくば彼と同じ道を辿れる事を。

 

 

 


産まれた事に喜んで

死ねない事を悲しんで

受け継ぐ事を望まれて

私達は如何すれば幸せになれるのか

 

【幻想識零本/弐】

 

二番目の部屋を出る
何も無かった訳じゃない
確かに其処には何かがあった
そしてソレは確かにこう言った
『誰かを追う事は罪ではないが、旅立った者を引き止める事は君のエゴだ』
こちらに背を向けて言っていた
私はそれでも行かなければならない
最初に決めた事をやり遂げないのもまた罪だから


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教える者・二条テルヒサ
人に教えられて気付く事もある。
最初から分かっている事もある。
その全てから目を背けている人も居る。

 

 

 


産まれた事に喜んで

死ねない事を悲しんで

受け継ぐ事を望まれて

私達は如何すれば幸せになれるのか

 

【幻想識零本/弐】

 

三番目の部屋だ
ドアを開く。またドアがある
そのドアを開く。またまたドアがある
何回ドアを開いただろうか
ざっと十個目のドアを開いた時
隅に何かが転がっていた
拾うとそれは青い多面体の石
色んな角度に映された私が居る
どの視点の私も不安げな表情
やがて元あった場所に放るとまたドアを開く
何を不安に思うのか・・・
今まで不安でない時なんて無かったじゃないか


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輝く多面体・青生生魂(アポイタカラ)
元ネタは古代日本にあったとされる金属でヒヒイロカネともいう。
ただし此処では宝石の一種であり、その原石である。
後、作者が九龍妖魔學園紀が好きだからというのも一つの理由。

 

 

 


産まれた事に喜んで

死ねない事を悲しんで

受け継ぐ事を望まれて

私達は如何すれば幸せになれるのか

 

【幻想識零本/弐】

 

四番目の部屋
ここまでの道のりは長かった
他人からしてみれば短いと言うかもしれないが
私のこれまでの人生の中でもかなりの長さだった
そんな事を考えながらドアを開けた
ドアを開けた体勢のまま固まってしまった
何故ならば目の前には足があったから
それも怪獣の足が、である
上を見ればあちらもこちらを見ていた
そのまま数十秒視線を交差させてから
二人同時に悲鳴を上げた


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巨大怪獣・ドーザーム
デドデドンに引き続き登場した怪獣。
実はかなりの臆病者である。

 

 

 


産まれた事に喜んで

死ねない事を悲しんで

受け継ぐ事を望まれて

私達は如何すれば幸せになれるのか

 

【幻想識零本/弐】

 

五番目の部屋に入・・・
ガタガタガタッ
何故この引き戸には鍵が掛けてあるんだろうか
鍵を掛けられるなんて新しいな
そんな事を思っていると鍵が外れた
引き戸を開いた男性は眉を八の字にしながら一言
『すいません、お茶を点てていたもので・・・』
部屋を見回して納得した
お茶と和菓子が少々
ちゃっかり頂いてから部屋を後にした


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その道の人・政継
和菓子、あれはいい物だ。
正直抹茶とかは苦手だが和菓子は大好きだ。
あと身内ネタです。

 

 

 


産まれた事に喜んで

死ねない事を悲しんで

受け継ぐ事を望まれて

私達は如何すれば幸せになれるのか

 

【幻想識零本/弐】

 

六番目の部屋に着く
六という数字は悪魔の数字だと昔誰かが言っていた
それは確か五という数字が神聖な物だという事からきているらしい
そんな事は今は関係無く
私の目の前にはまさに天使と悪魔が居た
何の冗談か
『うっしゃ、俺の勝ちぃ!罰ゲームの内容覚えてるだろうなぁっ!?』
『う、お、覚えてるけどぉ~』
天使と悪魔の配役が逆な気がする様な・・・
まあ、いいか


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天使ゼファエルと悪魔アズニャエル
何時も仲良し天使と悪魔。
罰ゲームの内容は「スリングショットを着る」。

 

 

 


産まれた事に喜んで

死ねない事を悲しんで

受け継ぐ事を望まれて

私達は如何すれば幸せになれるのか

 

【幻想識零本/弐】

 

七番目の部屋
前回も前々回も同じ仮面の男が居た
どうせ今回もだろうと思いながらドアを開けた
しかしそこに居たのは私のよく知る顔だった
だが似てはいるが何処か雰囲気が違う
肌も浅黒く髪も白に近い
『こうすりゃ殴られないとは思ってたが、所詮足止め程度にしかならねえか』
とっくに分かってたよと付け足して道を開けてくれた
平静を取り戻した私の背中に仮面の男は最後に言った
『変わらないままでいるのは苦しいだろう』
そんなの当然に決まってる


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仮面の男・無名
仮面を脱いだ姿は片割れである彼にそっくりだ。
ただし悪心であるが故にその風貌は真逆である。

 

 

 


産まれた事に喜んで

死ねない事を悲しんで

受け継ぐ事を望まれて

私達は如何すれば幸せになれるのか

 

【幻想識零本/弐】

 

八番目の部屋
これは幻か何かなのだろうか
目の前に立つ人物は私に瓜二つだった
ただ感情の無い顔でこちらをジッと見ている
口を開いても出て来た言葉は何処か異質だった
『チカゲ、彼に会って如何する気だい?』
『我々は不変の存在なのに、人々に混じって生きていけると思っているのかい?』
『確かに彼も不変だが、そもそも概念が違う不変だ』
『逆に我々は何時か終わりを迎えるのに、それでも彼に会いたいのかい?』
『さあ、答えるんだ、ヤタを継いだ者よ。お前の望みは何だ?』
私の望みは、私の願いは
「そんなのお前に聞かれなくても十分に自覚してるさ」


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ドッペルゲンガー
投影されるのは自らの心の内。
彼女の望む事は最初から決まってる。
会ってから決めればいいのさ。

 

 

 


産まれた事に喜んで

死ねない事を悲しんで

受け継ぐ事を望まれて

私達は如何すれば幸せになれるのか

 

【幻想識零本/弐】

 

九番目の部屋
あと一部屋
あと一つ進めば最後の部屋に辿り着く
長かった様な短かった様な複雑な気分だ
だからこの部屋に居る者が誰なのか
私は既に知っていたのかもしれない
『これで八千と八百八十八回目の邂逅となりますね。余程八という数字と縁があるみたいですね』
それもここまでさ
最後の部屋に辿り着けば
きっと私はあの人に会える
何度記憶を忘却されようが
魂が覚えている限り私は思い出せる
そう、信じてる


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大天使・ニャミ
八千八百八十八回も律儀に会って話していた彼女に感服。
むしろ敬意を表したい。

 

 

 


産まれた事に喜んで

死ねない事を悲しんで

受け継ぐ事を望まれて

私達は如何すれば幸せになれるのか

 

【幻想識零本/弐】

 

部屋と部屋を繋ぐ部屋
この部屋を越える事が出来れば望みが叶う
私を置いていったあの人に会える
これは復讐なんかじゃない
憎しみなんて物は無い
ただ、もう一度会いたい。それだけなんだ
部屋の中央には胡坐をかいて宙に漂う青年が居た
『我は創世鬼刃オモガネ、部屋に君臨する者也。八咫千影よ、我が娘達を導いてくれた事感謝する』
娘?・・・ああ、あの二人の女性の事か
まさか娘だとは思わなかった
『礼として汝の望み、叶えよう。汝の歩む果てが幸福であらん事を』
感情の感じられない声音だ
だがその言葉は今は何よりも嬉しい
「心遣い痛み入ります」
そうして私はドアを開け光へと歩き出した


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創世鬼刃オモガネ
部屋に巣食う者、部屋を喰らう者。
その通り名は幾つもあるが共通しているのは部屋にとっての害悪だという事。

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