当時の文章があまりにも読み難かったので所々修正してあります。
というかこの頃の設定を現在色々忘れ過ぎである。
赤「おい、今甘酒の樽を取りに行ったんだが隣の封印の蔵の中混沌としてたぞ」
蒼麻「え、マジで?・・・そんな変なモン入れてないと思うんだけどな」
赤「いや、明らかにどす黒いオーラが滲み出してた。もうすぐ年越しだってのに、神社から穢れが湧き出してるじゃねえか」
あそこの管理はお前がやってるんだろ、と宮司が仰った
確かに普通の蔵とは別に曰くつきの物等を封印しておく蔵はある
そしてその蔵を置いたのも管理をしているのも蒼麻であった
中に何が入っているのかは覚えているが、基本的に無造作に置かれているので中の状況が全く分からない
下手をすれば何かしらの事態に陥る事だろう
だが神社を経済的に回している宮司に言われてしまったらやめるという事は出来ない
例えそれが弟であろうと
蒼麻「・・・という訳で来てはみたものの、何だこれ。大晦日だからか?瘴気の濃度が半端じゃねえな」
白帝「見るからに不穏な気配がしているのですが、師匠この中には何が?」
蒼麻「髪の伸びる人形とか、妙に開け難い細工箱とか、なんとか様って彫ってある石碑とか、後は・・・魔剣ぐらいかな」
白帝「細工箱って例のアレですか?女子供は触るなとか言われている」
蒼麻「ああ、実際に村一つ壊滅させたブツだとか何とか」
白帝「なんとか様っていうのは、もしかしなくても背丈が2m40cm程の帽子をかぶった女性じゃあ・・・」
蒼麻「おお、凄いなお前。そうそう、その石碑をこの蔵に入れてから変な女に付きまとわれてな。ぽぽっぽ、ぽぽっぽ、うるさかったから知り合いに頼んで殺して貰ったよ」
何だったんだろうなーアレ、と頭に疑問符を浮かべながら話す蒼麻
白帝「まあ、師匠が凄いのは今に始まった事ではありませんし。取り敢えず最後のが原因なのでは?」
蒼麻「となると魔剣か」
蒼麻は錠前を外すと蔵の中に入って行く
白帝は先程の話で心許無くなったのか、追い縋る様に蒼麻の後について蔵の中へ
入ってすぐのスイッチを押すと電気ではないが、それを凌ぐ程の照明が点いた
そうして蔵の扉は誰の介添えも無しに音を立てて勝手に閉まった
続く
白帝は閉まった扉を見てそういうものなんだと思った
蒼黒神社は常識の通じない所だと天神町の住民達の間でも言われている
だから、何の細工も無しに明らかに重い扉がひとりでに閉まったとしても何もおかしな事ではない
・・・と前提がそもそも間違っていた
であるからして、勿論その事は蒼麻には言わなかった
蒼麻「ここに封印してる魔剣は外神界で決められた序列に当てはまる物でな。生半可な封印じゃあ外界に影響が出るから俺が預かってるんだ」
白帝「神々の里の基準で決まっている物という事は、人界に対しての脅威になりうるモノでは?封印作用があるとはいえこの様な所では荷が重いと思うのですが・・・」
蒼麻「まあ力量とか最大容量的には天界神蔵とかに死蔵した方がいいんだけどな。ほら俺、刀剣コレクターだから」
白帝「はあ・・・」
そんな事は今初めて知ったという顔の白帝
そんな事はお構いなくに蒼麻は無造作に置かれた魔剣に手を触れた
白帝「大丈夫なんですか?封印作用が働いているとはいえ、序列をつけられている魔剣はその者の人生を大きく歪ませると言いますし」
蒼麻「問題無えよ、俺は昔神具の製造工程に立ち会ってるからな。そういう異常に対しての耐性は折り紙つきだ」
白帝「神具、ですか」
蒼麻「赤の謳牙とか秋の白夜、お前の白雨みたいなもんだよ」
白帝「ああ、成程。確かに神の名が付いていますね(一つだけ掠りもしてませんけど・・・)」
蒼麻「神具のオリジナルに始光剣というヤツが居るんだが、ソイツがトンでもない浄化作用を持っててな。触れるだけで対象に破滅作用耐性を付加させる事が出来るんだ」
まあ、本人は(外見が)聖母マリアみたいなヤツなんだけどな
そう言って作業に戻る
あまりにも自然に言ってのけたので白帝はスルーしてしまったが、始光剣が擬人化されていたのである
が、別に擬人化でも何でもない。つまる所は嘆きと同じで人の形態と剣の形態に変われるのだ
蒼麻「・・・・・・あ」
何かを見つけて固まってしまった蒼麻に、白帝は後ろから近寄ると何事かと手の中にある物を見る
ソレは黒と濃い紫の中間の様な色をした刀身を持った剣だった
そしてどう見てもどす黒いオーラを発していた
続く
蒼麻「あー・・・コレか。コレね、コレが原因ね。マジか、コレかー」
どす黒いオーラを放つソレを手に取って延々と呪詛を吐き続ける蒼麻
白帝「もう人を殺しそうな勢いのオーラですね。密かに瘴気も出てませんか?」
蒼麻「コレなー、アレなんだよ。さっきの細工箱みたいな物で、置いとくだけで周囲の人間を死に追いやるんだよ」
これがまた酷い
遥か昔に人の手に渡ったこの魔剣をそうとは知らずに奉っていた集落があった
しかし住んでいた者は全員苦しみのた打ち回った末に一人残らず死んだという
その様な逸話を持つが故に蒼麻が預かるに至った
この魔剣の異常な所は最初刀身は鏡の様に輝いている所だ
それが時間を経つにつれ黒みがかってゆき、最後は今の様な色に変わる
一説によれば人間の負の感情を吸い取った、または環境その物が合わなかったという物がある
真相は不明ではあるが、魔剣というカテゴリにおいてむしろその程度で済んでよかったと見る方が良い
中には担い手の魂すら喰らい、因果律への介入を行うモノすらあるというのだから、それに比べればその程度である
蒼麻「確かコイツは序列・八位だったっけな。銘は昏病(くらやみ)とか何とか」
白帝「それ、どうするんですか?」
蒼麻「叩き折る!・・・と言いたいんだが、親父が大神になった頃からあるみたいだから物凄い量の瘴気が収められてるんだよな。下手に壊すと世界が終わる。故に折れない」
白帝「他に方法とかは?」
蒼麻「うーん、これより上位の魔剣があれば鎮静作用が働くとは思うんだが・・・」
同じ魔剣っつーカテゴリだからか、それとも無機物同士でも魂は存在するのか年功序列めいた物があるらしい
けどまあ、そんなの持ってないし近くにある訳無いしな
蒼麻は言ってお手上げ状態になった
それを聞いていた白帝は瞬間脳裏に何か閃いた
白帝「そういえば、以前お世話になった刀鍛冶の人が魔剣がどうとか言っていた様な・・・」
蒼麻「つっても人間の刀鍛冶だろ?並みの人間じゃ魔剣にサクッと支配されちまってどっかの侍みたいになんぞ。こんな時砥ノ木でも居てくれりゃあなあ・・・」
白帝「ええと、確か、山羊浜という女性の方で・・・・・・」
蒼麻「ぶっ!や、山羊浜だあ!?お前その人と何処で知り合ったんだよ?!」
白帝「何処でと言われましても・・・。一時期私が刀を失っていた時にフラッと現れまして、その間手持ち無沙汰だろうと刀を拵えて下さいました」
蒼麻「マジか・・・お前多分知らないだろうけど、その人そうやって武器を作ってる人でな。知らないか、山羊シリーズ」
白帝「山羊シリーズってあの魔槍・朱山羊から続く、達人がノドから手が出る程欲しいと言われる、あの山羊シリーズですか!?」
現在その山羊浜が作った物は魔槍・朱山羊、魔剣・青山羊、魔弓・黒山羊とあるが、やる気が出ないと作らないのであまりシリーズ自体続いていない
しかも朱山羊に至っては担い手に寄生する事でしか真価を発揮出来ない上に現在行方不明である
だがしかし、それがあれば今のこの事態を打開出来るといえる
問題は山羊浜が今何処に居るのかという事
何処かに定住している訳ではなくフリーもフリー、着の身着のまま軽い気持ちで全国渡り歩いているものだからまた酷い
蒼麻「何てこったい・・・じゃあ結局解決策無えじゃねえか」
「いや、そうでもない」
いきなり掛けられた声にビクッとしながら横を見ると、何処から入って来たのか音も無く一人の女性が其処に居た
何を隠そう、彼女こそ山羊浜であった
続く
前髪を真っ直ぐに揃え、長い髪を後ろで結った女性がいつの間にか横に居た
突然の事に暫し呆然としていた蒼麻はハッとなって声を上げた
蒼麻「あ、あんた何も・・・んべっ!?」
頭頂部に重く圧し掛かる感覚
否、むしろ下顎から何かが生えて来た
山羊浜「ああ、済まない。クライアントにキミが不死者だと聞いたのでな、少し実験をさせて貰った。なに安心しろ、未だ開発途上なのでな。その内抜ける筈だ」
蒼麻「だってめっふざけんなっ!筈って何だ、筈って!!口上下するだけで痛えぞくそっ!!!」
山羊浜「未完成の代物は大抵想定通りに事が運ばない物さ。ああ、ところでキミ久し振りだな。その後刀の当ては見つかったかい?」
白帝「は、はい・・・師匠に神剣を譲って頂きまして・・・」
言って腰に佩いていた白鞘の刀を見せながらチラと蒼麻の方を見る
山羊浜もそれにつられて蒼麻の方を眺めると一言
山羊浜「ふむ・・・カレがキミの剣の師匠か」
蒼麻「何?怖い、何だか分かんないけど凄え怖い。頭が固定されてるからそっち見れないのが余計に怖さを引き立ててる!」
山羊浜「なに気にする事は無いさ。少しキミに突き立てた針の数が増すだけだ」
蒼麻「何で!?つかコレ針なの?!どう見積もっても杭ぐらいの直径なんですけど!!」
山羊浜「だから開発途上だと言っただろう、最終的には針ぐらいの大きさまで縮めるつもりなんだ。あと言い忘れたがな・・・それは不死殺しの楔といってな、キミらには打って付けの代物だ」
蒼麻はその言葉を聞いてサーッと血の気が引いた
いつか弟とした話を思い出した
自分達が不老不死で絶対に死ねない体だとしても、いつか必ず自分達を殺す存在が生まれる筈だ
それは人間なのか能力者なのか人外なのか、それは全く予想は出来ないが必ず生まれるだろうと
それに値する武器が生まれてしまった
未だ開発途上だと言ってはいるが人外の間でもかなり名の知れた武器作家だ
下手をすれば年内にでも完成しかねない
それは流石に止めなければ・・・と思いはするが口は動けど体は動かず
とても歯痒い
白帝「あの、それで・・・魔剣の話なのですが・・・」
山羊浜「ああ、そうだね。じゃあ、はい、コレ近付けて」
途端、右手を壁に突っ込むとニョキッとそこから剣が出て来た
よく見ると壁面に真っ黒な穴が開いていたが、白帝はおろか蒼麻も驚かなかった
そもそも蒼麻は何をしているのか見えていなかったので驚き様が無かった
一方の白帝は過去に蒼麻とか邪狼が似た様な事をしていたのでそれが普通だと思っていた
山羊浜「それが所謂世間でまことしやかに囁かれてる魔剣・青山羊ね」
蒼麻「いや全く囁かれてるってレベルじゃないし。つーか俺全然見えねえし。お願いだから俺にも見せて」
チロチロと舌を出して抗議
本当は手足をジタバタさせたかったが石化したかの様に動かなかった
無念であるが故の必死の抵抗であった
白帝「こんな感じですけど」
蒼麻「でかした白帝!持つべきものは弟子だな!!」
白帝「これまでで一番嬉しくない褒められ方です」
蒼麻「おお、刀身は普通だが鍔の部分に山羊の意匠があるのか。握りに巻いてあるのは・・・何だ?何かの革に見えるが・・・」
山羊浜「はい終了。正解としては握りは山羊の革で序列は三位、剣種は大剣。早くしないと瘴気漏れ出すわよ」
蒼麻「そんなご無体な!・・・・・・くっ、白帝頼むぞ」
白帝「はい、それでは!」
頭上まで掲げた切っ先を力強く振り下ろすとビタッと寸前で止める
瞬間、魔剣昏病の刀身からどす黒いオーラと色が失われた
白帝「これで」
蒼麻「どうにかなったか」
山羊浜「じゃワタシ帰るから。またどっかで会いましょ」
気付いたら居なかった
来た時と同じ様に音も無く蔵の中から消えてしまった
同時に蒼麻の頭と手足に刺さっていた杭が霧散した
蒼麻「首つった・・・」
白帝「大丈夫ですか?・・・あ、青山羊もいつの間にかありませんね」
蒼麻「用意周到なこって。いち人間が混沌倉庫使える時点で一般人じゃないとは思ってたが、能力者止まりって事でも無さそうだな」
白帝「クライアントというのも気になりますしね」
蒼麻「まあ、そっちは剣繋がりで凡その候補は絞れてるけどな」
親父とか師匠とか知り合いの研師とか
あれ意外と候補多いな
そんな事を思いつつ蔵を後にした
後日談としては、出たら年を越していた事だろうか
突然の夜景にポカンとする間も無く二人揃って赤に見つかり、説教を喰らった上にまさかの幼女神が再び降臨する事態になった
その日、蒼麻と白帝の悲鳴が夜空に木霊したのは言うまでもない
終わり