この物語はニコニコ動画で展開している動画の設定を基にしております。
ジャンル的には東方三次創作+クロスオーバー。
平行世界というものがある
決して交わる事の無い世界の事である
平行時空の中の平行宇宙の中の平行世界
神の力が届かぬ世界
かの世界に住む者はそんな事も知らずに日々を過ごしている
-神居市・守矢神社-
蒼麻「さぶっ。はぁ~・・・うわ凄え息白い」
霊夢「そりゃ冬だもん、息も白くなるって」
前を行く霊夢が蒼麻の言葉に振り返りながら答える
守矢神社は平地に構えているので、まだマシな部類の神社である
大多数の人々が行く様な神社はお山の上にあったり、行列でいつ参拝出来るか分からなかったりと、とにかく苦行の様なものでしかない
だからこそ守矢神社はオアシスだった
早苗「そのお陰で信者の方も増えましたけどね」
守矢早苗。守矢神社の一人娘で霊夢の親友である少女だ
今時の若者にしてはしっかりしており、家業の手伝いもよくする心優しい娘
と、近所のジジババがカタカタ入れ歯を揺らしながら毎日言っている
霊夢「早苗も気を付けてね。ちゃんと下にヒートテックとかカイロとか装備しないと風邪引くわよ?」
蒼麻「最近の巫女さんは所謂ハイブリッドだから心配すんな」
魔理沙「社務所の中にはストーブもあるでしょうしね」
サイフからお賽銭を取り出しながら言う
ちなみに霊夢も魔理沙も着物を着ている
着付けをしてくれる店が自宅から遠かったので、知り合いである大江勇儀に頼んでして貰ったものだ
蒼麻自ら着付けを行ってもよかったのだが、そこは年頃の女達
いかに相手が何十億年も生きている人外とはいえ、男性に裸体を晒すのは恥ずかしいのだろう
霊夢なんかはたまーに一緒に風呂に入ってたりするのだが、それは今は言わぬが花である
蒼麻「それにしても今年は去年に比べて盛況だな。ちらほら見知った顔とか見た事無い顔とか居るが」
霊夢「狼が居る様に見えるのは私の気の所為かな?」
魔理沙「ふふ、そんな馬鹿な事ある訳無いでしょう。あれはそう見えるだけの大型犬よ」
大型犬(?)はチラとこちらに一瞥くれると、興味を失った様に神社の裏手に去って行った
裏手というと住居の方なのだが恐らく大丈夫だろう
首輪はしていなかったが野生には見えなかったし気配も消えてしまった
諏訪子「あれ、蒼ちゃんだ。おひさー♪」
蒼麻「おお、おひさー。破魔矢の売れ行きも上々の様だな。行き交う人間みな持ってたぞ」
諏訪子「今年は色々あったからねー。みんな何かに縋りたいんだよ」
蒼麻「いや神にだろ」
諏訪子「分かってないねー、神様なんて毎日会えるものなんだから、居るのかどうかも怪しい何かに縋る方が夢があっていいでしょ」
蒼麻「普通は神様と毎日会うなんて無理なんだけどな」
蒼麻は誰にも聞こえない様な小声でボソッと言った
別の世界ではそれがおかしな事柄でも、幻想郷のコピーという役割を持ったこの世界では常識である
と、件の幻想郷から漂泊して来た八雲紫が言っていたのだから間違い無いだろう
諏訪子「それにしても・・・甘酒の消費が尋常じゃない様な?さっき中身を補充したのにもう底を尽く寸前って・・・」
神奈子「気の所為でもなんでもないぞ」
諏訪子「どしたのさ?そんなこの世の終わりの様な顔しちゃって」
神奈子「巷で噂されている例の奴がウチに来た様だ。見ろ」
諏訪子は言われた通りに甘酒を置いてあるテントをヒョイッと神奈子越しに見た
案の定そこには一人の影が居た
外見は諏訪子と似たり寄ったり。つまり少女とも幼女ともいえる微妙なライン
その少女はおもむろに甘酒の入った樽を"片手で"持ち上げると、豪快に口をつけて飲み始めた
諏訪子「え゛」
甘酒とは呼んで字の如く酒である
米麹と米、あるいは酒粕で作られるアルコール1%未満の未成年でも飲める酒
だが、いかにアルコールが1%未満であっても樽飲みは許容外だ
幼児が飲むと酔う場合もあるので注意が必要だ
それを少女は飲みきったのである。つまり一気飲みだ
急性アルコール中毒が甘酒で起きるのかどうかはともかく、樽一個の量を飲み干せばどうなるかなど誰の目にも分かる
・・・筈だった
少女「うん、今まで飲んできた物の中で一番甘いね」
ケロッとしてた
あまりにもおかしな光景に誰も彼もが言葉を忘れ、ただただ少女の行動を目で追うのみ
余程甘い事が嬉しかったのか少女は樽に何かを貼り付けると、足取り軽やかに鳥居をくぐって帰って行った
ハッと我に返った諏訪子が樽を見やると、
『五年後くらいにまた来ます。 此御標』
その場に居た全員が絶句した
終わり