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白は甘えん坊で淋しがり屋

茶は明るくて友達が多い

黒は無口で意地っ張り

あの頃は凄く楽しかった

 

【第六話】

 

ある施設に三人の子供が居た。
一人目は元気がとりえの活発な少年。
二人目は物静かで、本を読むのが好きだった。
三人目は殻に篭って、誰とも口を聞かなかった。
それでも三人は仲良しだった。
元気な少年は、二人を引っ張って遊んだ。
物静かな少年は、外に出ない所為で肌がとても白かった。
それも日に焼けていい色になっていった。
無口な少年は、何時までも話さなかった。
でも二人は分かっていた。
その少年が本当は優しい心を持っているのだと。
ある日、リーダーだった少年が貰われていった。
二人はとても淋しくなった。
数日が経って、今度は物静かな少年が貰われていった。
無口な少年はとてもとても淋しくなった。
悲しかった、辛かった、でも心の底から喜んでいた。
―――家族が出来たんだ、って。
少年も待った。
何時か自分にも家族が出来る。
貰われた先で今よりもっと幸せな生活が送れるんだ、って。
でもその時は来なかった。
どれだけ待ったって。
どれ程望んだって。
・・・誰も自分を迎えに来ない。
如何して?
話さないから?
話しかけても目を見ないから?
それだけの事で僕から目をそらすの?
居ない事にするの?
誰か来てよ、誰か僕を助けて。
――――――ダ レ カ タ ス ケ テ。

 

第六話
「孤独を救うには?」

 

 

 


昔一匹の猫が居たそうだ

そいつは飼い主と共に幸せになった

自分はそいつとは似て非なるもの

姿形が同じでも同じ事には出会えない

 

【第七話】

 

大昔
まだ文明の進んでいない時代
人々は色々な事を信じていた
夕日が沈む時は魂が天に昇る時だと
月と太陽は同じ神なのだと
山と海は断ち切れぬものなのだと
黒き色は生を司る色だと
白き色は死を司る色だと
だが今は如何だ?
価値観は変わり
意義の証明は誤認され
変革の為に何かが失われ
欲望の為に何かが犠牲になり
黒は白に
白は黒に
神を信じなくなり
豊穣に感謝しなくなった
白き狼はこう言った

 

「お前の涙は全てを溶かすだろう」

 

どれだけ涙を流したか
それでも何も溶ける事は無かった
【僕】は解らなかった
その意味
それが何を意味するのかを

 

第七話
「涙の意味」

 

 

 


誰もが見るもの

ソレは幻であり

現では決してないけれど

何時か起こる物語

 

【第八話】

 

目が覚める
寝床は闇の中
長い長い夢を見ていた気がする
それは今にしては
とても懐かしくて
とても辛いそんな夢
【僕】はずっと独りだった
そんな【僕】を抱いてくれたのは
貴方が最初で最後だった
貴方が支えになってくれて
家族になってくれたから
孤独を手放せた
貴方は何時も言っていた
困っている人を助けるのが、自分の生き甲斐なのだと
貴方が居なくなってから
【僕】は外に出た
あんなに忌み嫌っていた外の世界
理不尽が束になって攻めて来る世界
貴方と過ごした世界
幸せだった
貴方と共に居た事は間違いなんかじゃなかった
でも、それでも何時かは別れがやってくる
貴方が【僕】と別れてから
【僕】も世界と別れた
事実上の死
ただ怖くなかった
だって貴方に会えるんだから

 

「そうか・・・死神になった理由があったんだっけ」

 

まだその夢は叶ってないけど
何時か必ず叶えてみせる


第八話
「貴方の名前は何だっただろうか?」

 

 

 


待っている

他の誰でもなく

他の何でもなく

貴方だけを待っている

 

【第九話】

 

【僕】は歩く
歩いて、歩いて
歩き続けても未だ辿り着けない
其処はそれ程遠くて
とても温かい所
当初の目的を全く忘れていない訳ではない
“海神斐綱を許さない”
それは【僕】が此処にこうして居る事
辿り着かなければならない原因
理由は唯一つ
姉さんを取られたから
なのに【僕】は心の何処かでソレを否定している
何故なのかは分からない
ソレは今知る事じゃない
多分・・・“彼”に会えば分かるんだと思う

 

第九話
「終了、そして・・・」

 

 

 


その少女、雨降る中嫁と為る

男は雨降りしきる中婿と為る

狐は二人を祝う

細波はただ幸せそうに笑っていた

 

【第十話】

 

海が見える
初めて見た訳じゃない
これで“二度目”
あの人と共に訪れた
潮の匂いがする
とても広くて
とても優しげで
何もかも包み込んでしまいそうな
そんな場所
ふと声を掛けられた
誰なのかは分からない
此処には【僕】の知る人は居ないからだ
其処に居たのは【僕】よりも低い少女

 

「―――君は誰?」

 

少女は少し笑って駆け出して行く
何だか気になった
そう、それは興味であり
初めて抱く好奇心だった
道は段々狭くなり
森へと入って行く
それでも獣道ではないという事は
人が出入りしているという証拠
視界が開けて目にした物は

 

「私達の街へようこそ♪」

 

緑豊かな小さな街と笑顔で迎える少女だった

 

第十話
「終への秒読み」

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