昼休みが終わり退屈な授業を通過して放課後になった
何となく廊下に出ると最後の一人が窓の外をジッと見ていた
相原「四剣、何か見えるのか?」
四剣「何も・・・人の顔もちゃんと見える」
四剣(しつるぎ)という苗字の男子生徒は窓の外の景色から目を離さずに答える
その右眼には包帯がしてある
怪我をしているとか右眼が無いとか色々憶測が飛び交っているが、そのどれもが不正解だ
一度だけ話して貰った事がある
何時の頃からか右眼で見たものだけがモザイクで塗り潰された様になっていたと
風景だけでもそうなのだから、人の顔なんか認識出来ない
両眼を開けていると半分だけモザイクの不細工な景色が映し出されるのだと四剣は語った
相原「これから皆で一緒に帰るんだがお前も来るか?」
何時も見慣れていた景色が突然見たくも無い物に変わったら、正直気持ち悪いだけでは済ませられないだろう
四剣と同じ景色は見られないが、気持ちはそれとなく解る
右眼を潰さなかっただけまだマシなのだろう
見なければいいのだから・・・
四剣「ああ、おまえ達と一緒に居る方が心地が良い」
四剣は言って歩き出す
手ぶらだ。そうか、教科書とかは置いて帰る派か
そんな俺は鹿原さえ居れば大丈夫派だ
鹿原「うん?今聞き捨てならない言葉を聞いた様な気がするんだが?」
相原「如何した鹿原、遂に幻聴まで聴こえて来たのか?俺がベッドの中で看病してやろうか?」
鹿原「如何考えてもオマエの口から出た妄言だろうが!あとオレにそんな趣味はねえからな?!」
なんて事だ、やっぱり鹿原は女の子しか愛せない人だったのか
だがおかしい、ならば何故何時も更衣室から顔を赤くして出て来るのだろうか?
これは俺の生涯の問題にしよう
中々解き明かし甲斐のある難問じゃないか!
鹿原「なっ・・・そんなの誰だって赤面するわアホー!!(////」
鹿原のコークスクリューが俺の顔面に迫る
フッ、朝の俺のままだと思うなよ
華麗にかわす。まだまだですなぁ
そんなコントをしていたからか後ろで話している会話を聞き逃す
三条「先輩、まだ気付いていないみたいですね」
実綾「うむ、実は自分が月からやって来た改造人間だと言われたら何と言うだろうな?」
後藤「何でそうなるんですか・・・。鹿原が実は女装させられているという事ですよ」
後藤が隣りの一条に突っ込む
「やはり火星人の方が真実味があるだろうか?」と一条が言い直す
それに三条は困った様に苦笑
会長は顔は良いのだが天然ばりに頭がアレなのだ
しかも帯刀している訳だし、学園内では色々な意味で名物である
角煮「あ?如何したよ四剣?」
四剣「いや・・・何でも無い」
立ち止まって後ろの方を見ていたが、呼ばれた事でやめて再び歩き出した
誰にも悟られない様に小さく微笑む
届いたのか如何かは分からないが、確かに見えた
後ろで振り返る少女の顔だけはモザイクの無いハッキリとした顔だった
それは何時か出会うだろう二人の最初の顔合わせ
相原「よーし、今日はこれから月見屋行って月見アイス食うぞー!もちろん後藤の奢りで」
後藤「だから何で僕の奢りなんだ!?」
ひとまずはこの辺で終わりという事で
続きは別の機会に
完結